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イセカン ~~オレの建設スキルが異世界を蹂躙するまで?!~~  作者: としょいいん


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第06話 はじめてのクラスチェンジ

 オレは今魔王城の地下迷宮最深部だと思しきエリアを、たった一人で彷徨い歩いている。


 そう、ぼっちだ。


 幸いな事に建設工事に関するスキルの中には【騒音・振動感知】という便利そうなものがあったので、この能力のおかげで竜族や悪魔族など、今のオレでは倒せない敵をやり過ごしつつ、少しずつではあるが迷宮探索を進めていた。


 これまで勇者パーティと一緒に旅を続けて彼らにコキ使われたお陰で、土工事のスキルで地形を変えて身を隠したり、また探索の途中で通常の方法では決して渡る事が出来ないような断崖に出くわしても、その場で即座に橋を架けて通る事が出来た。


 この一見簡単そうに見える架橋作業だが、あの小生意気で性格の悪い大学生賢者も挑んでみたが、短い距離ならともかく、長い距離になると土を固めただけの物質を連続で錬成しても、ある一定の距離から先が崩壊してしまうのだ。


 これはその物質が持つ二次断面係数など強度特性の不足による自己崩壊現象で、同じ断面の物体をそのまま延伸させても、いずれ自重に耐えられなくなり自壊してしまう物理現象が起こる。


 その対策として元の現代世界にあった構造物では硬いコンクリートの中にある程度の柔らかさ、言い替えれば靭やかさを持つ鉄筋材を、その断面積に応じた比率で必要な数量を適切に配置して自重と荷重に対して必要な強度を確保するのだが、いくら優秀な大学に在籍していたとしても、これら専門的な技術に関する知識や公式を知らなければ、高度な技術を必要とする構造物を造り出すのは難しいと言える。


 色々と工夫して地下迷宮を進んで来たが、これまで身体がデカくて青白い悪魔みたいなヤツ(グレーターデーモンと名付けた)とか、デカくて気持ち悪い肌の色をした巨人族(ポイズンジャイアントと名付けた)等の大型モンスターに対して、落とし穴や岩石落としの他に建材で作った罠を仕掛けてみたのだが、サイズがデカいと言うだけで非常に厄介だった。


 いくら重量があっても普通に固いだけの岩塊を頭上から落下させたり、せいぜい10メートル程度の落とし穴では大したダメージを負わせる事が出来なかった。


 勿論だが穴底にはデゴイチ(D51)と呼ばれる極太鉄筋の先端を、耐震アンカーで使用するように鋭くカットしたものを突き立てておいたにも関わらず、それだけでは致命傷を与える事は出来なかった。


 やっぱ相手の身体が大きいと腕や足のサイズも大きくなるから、直径が高々約51ミリしかない普通の鉄筋では相対的に傷が小さく見えてしまうからな。


 それに鉄筋だとSD490が最強で、これ以上の強度を持つものがJIS規格には存在しない。


 そもそも論だが、鉄筋は引張強度には優れているが圧縮と曲げの強度は重要視されていないから、分厚い皮膚を持つ大型魔物に対する刺突用としては用途が間違っているのだろう。


 なので今度同じ事をやる時は、アセチレンと酸素ボンベも取り寄せて最初に1本だけ焼入れ処理を行ってから、それを【再施工】スキルで複数再現してやれば更に強力な罠を作れると思う。




 そんな試行錯誤をしながら周囲の警戒をしていると、こんな場所に居るはずのないハムスター(?)みたいなネズミの魔物を見つけた。


 最初は繁殖力に優れた他の魔物の餌として、この迷宮最下層で逃げる事に特化した魔物だと思っていたのだが、ある時その牙で空気を切り裂いて、ほんの一撃で熊みたいな魔物の首を刎ね飛ばしたのを見た時は正直ビビった……。


(超怖ぇーー!! あんなに強かったのか?! あのハム公!!)


 確かにネズミの動きは早かった。それも目で追えないくらい。


 『シュタッ!!』と小さく地面を蹴る音がした瞬間、既に相手の身体の何処かが切断されているのは見事としか言いようがない。

 あのふにょっとした体型からは想像がつかないくらい強力な推進力を持つ後ろ足を、敵から逃げるのではなく相手を狩る方向に進化させた魔物だったのだ。


 だが、そんな敏捷性と一撃必殺の技に特化したネズミ(これからはスラッシュスターと名付けよう)が居てくれたのは、オレにとっては幸運だったと言える。


 何故なら、あのふにょっとした身体故に、速度と技の熟練度においては地下迷宮でも随一と言える魔物だが、小さい身体故に防御力と生命力はもっと浅い階層に居る魔物と大した違いが無いと思ったからだ。


(たぶん敵の攻撃に当たらなければ、どうという事は無いのだろう)


 なので一瞬のスキさえ見つければ、今のオレでも倒せる獲物を見つけたのは本当にラッキーだった。


 あのスラッシュスターの意識を一瞬だけでも逸らせる事が出来れば、【ホイスト】で吊り下げた重さ約2トンもの岩塊や、コンクリート擁壁の下敷きにしてペチャンコにしてやれば、それだけで倒せる。


(ちなみに落とし穴は、跳び越えられて一回も成功しなかった)


 それでも、この方法では素早いスラッシュスターを仕留められる確率は良くて二割と言った程度だったが、レベル一桁台のオレが、この世界で最も強い敵が出てくる魔王城地下の迷宮最深部で魔物を狩って、その経験値をオレが一人占めしたらどうなるだろうか?


 最初の1匹を倒せるようになるまではかなりの試行錯誤を必要としたが、ある時スラッシュスターが光るモノに対して異常な興味を持つ事が判ったので、今度はLEDライトをチカチカと点滅させて誘き寄せて近寄って来た瞬間に岩石落としを行ったのだが、この方法が偶々上手くいった。


 それでも、あの動きが早いスラッシュスターを一撃で轢死させるタイミングを合わせるのはかなり難しく、普通におびき寄せただけでは簡単に逃げられてしまう。


 それでスラッシュスターの逃走防止対策として、地面に樹脂系の接着剤を塗りまくってネズミホイホイを設置してみたり、機械用グリスで足を滑らせてやったり色々と涙ぐましいトライ&エラーを繰り返していたのだが、フルハーネス型安全帯の隠された能力によって事態が一変する。


 あの時もスラッシュスターに逃げられそうになり、思わず捕まえようとして脳で考えるより先に脊髄反射で右手を伸ばした時だった。


 当然だが、オレの数十倍の俊敏性を持つスラッシュスターをそんな簡単に捕まえられるはずなど無いのだが、気がつけば2本の安全帯フックが飛び出してスラッシュスターの手足を挟み込んでいたのだ。


 当然だが一度捕まえてしまえば、筋力で勝るオレから非力なネズミ風情が逃れる術など無く、ガチャガチャと安全フックを振りほどこうとしてるスラッシュスター目掛けて、手に持ったステンレスバールを力いっぱい振り落とせば一撃でカタがついた。


 こんな感じで、あれから何度もスラッシュスターを仕留める作業をルーチンワークのように、ただひたすら周回していると経験値と魔物素材で決済ポイントを荒稼ぎするのに夢中になり、自分でも知らないうちにレベルがカンストして【技能士】から次のクラスへ昇格する案内メッセージがファンファーレと共に送られてきた。


──パパパパンパンパンパーン!!


──────────────────────────────

【技能士】のレベルが999に到達しました!


次のクラスへの転職が可能です。

1)職匠士

2)管理技士

──────────────────────────────


 1)の【職匠士】とは読んで字の如く、今の【技能士】より上位の『匠』と呼ばれる職人になれそうなクラスだな。

 【技能士】から【職匠士】へクラスアップすれば、現在のスキルがより上位のものへと進化し、更に使い勝手の良いスキルへ進化すると思われる。


 今の【技能士】でもレベルが上がっていくうちに【ツールボックス】がバージョン3.0まで進化して、より複雑な構造を持つ強力な魔動工具が扱えるようになったし、それから更にレベルが上がって【ホイスト】スキルの吊り上げ重量が2.9tから5tにまでアップして、前後左右へ吊ったまま運べる【クレーン】スキルへと進化していた。ちなみに旋回半径は約20mくらいだった。


 そしてその後も着実にレベルアップを重ねる事で【アイテムボックス】が新たに【マテリアルボックス】へと進化して、より大きなサイズの建設資材なども格納できるようになった。


 これらの収納スキルは異世界のお話では定番モノの優れたスキルで、これさえあれば物理法則を無視して大量の物品を収納したり運搬ができるので、ラノベとか漫画だと、代表的なチートスキルとして描かれている事が多い。


 もしかすると【職匠士】になれば、作業するのにもっと別な能力を手に入れられたかも知れないが、【管理技士】になれば、こちらの異世界でどんな便利スキルが手に入るのだろうか?

 オレが元居た世界での常識に当てはめて考えるなら、【技能士】と【管理技士】の違いについてココでちゃんと整理しておく必要がある。


 一般的に【技能士】とは、自分の身体能力(技能)を使って直接作業を行う者を指すが、施工管理技士の事で、施工ノウハウを元に管理を主体とした業務を行う者の事を言う。

 ちなみに今回の【管理技士】を現代世界の職種に当てはめて考えるなら、『施工管理技士』の略称で間違い無いと思う。


 例えばコンクリートを打設する作業であればポンプ車やバックホウ等の重機を扱ったり、配管で圧送して敷き均しながらバイブレーターを使って振動を与えたり、仕上げにコテで押さえるなど様々な職種があるが、これらの作業に直接携わる作業員たちを【技能士】と呼ぶ。

 公的には日本の国土交通省が定めた試験で認められた者だけが【技能士】と名乗る事を許されるのだが、ここでは割愛させて頂く。


 そして【施工管理技士】とは施工管理を行う専門的な技術を有する者で、毎年行われる国家試験に合格した者だけが、それを名乗り工事契約の監理技術者(又は主任技術者)となる事が可能となる。


 一般的には【建築士】と【施工管理技士】の資格が有名だが、これらの資格の他にも【技術士】と呼ばれる資格も元の世界には存在していたので、これらの管理系資格をまとめた職種として、こちらの異世界で【管理技士】クラスが新設されたのではないかと考えた。


 あと元の世界での『施工管理技士』は、『建築』、『土木』、『電気』、『管』などの分野に分かれているが、異世界にはまだこれらの分別が無いので【管理技士】と一纏めにされているのだろう。たぶん。


 それに、ここは異世界なので元居た世界での常識がそのまま当てはまる訳ではないし、建築技術が中世以前のソレなのに魔法と言う便利な謎システムがあるおかげで、この異世界に住む誰もが物理法則を元とした技術開発には重きを置かなかったのだろう。


 だが、そんな世の中にも関わらず、それなりに立派な建物や道路が存在しているせいで、系統毎の専門的な技術ノウハウを有している者は極端に少ないのかも知れない。


 オレはこのまま【技能士】の正当進化と考えられる【職匠士】には興味が尽きなかったが、それでもオレの本職である【管理技士】を選ぶ事に対して特に迷いは無なかった。


──────────────────────────────

【管理技士】へのクラスチェンジが選択されました。

スキル【ツールボックス】がバージョン4.0に進化しました。これにより単相式100Vヴォルテージまでの魔動工具が使用出来ます。


【マテリアルボックス】が【コンテナボックス】へと進化しました。これにより一度に格納可能な容量が9立方メートルから99立方メートルへと増加しました。ちなみに格納された際に重さと時間の概念は無視されます。


新スキル【コンテナハウス】を取得しました。これにより小型現場用コンテナハウスの他にも【トイレボックス】と【シャワーボックス】が使用可能になります。ボックス内で使用された照明などの魔力と水道料金はその都度決済ポイントが消費されますので、ポイントの残高にはご注意下さい。


新スキル【ダストボックス】を取得しました。このスキルは一定時間だけアイテムを保持しますが、その後は異次元へとパージし失われてしまうのでご注意ください。また、保持する時間は任意に設定が可能となります。


新スキル【ランチボックス】を取得しました。これにより1日1回、現地時間の12時に仕出し弁当を受け取る事が可能です。


新スキル【ガラケー】を取得しました。これにより同じスキルを持つ者同士の通話が可能となります。


新スキル【測量】を取得しました。これにより一定範囲の【地形情報】を入手可能です。

──────────────────────────────


 【ツールボックス】が進化した事によって魔動工具が使えると聞いたが動力源はどうするのだろうか? 試しに魔動チッパーやドリルを取り出して動かしてみたが電源ケーブルの類は見当たらない。それでもちゃんと可動するみたいだから大丈夫だと思うけど、魔力によるバッテリー駆動方式だと思えばそれほど変ではないか。


 次に【コンテナハウス】は現場事務所以外に、宿泊施設として使用できるみたいだから、これで迷宮生活のレベルが底上げされるはず。

 問題は【スグクル】に寝具などのカテゴリが無かったことだが、建材を発注して自分で組み立てれば問題ない。

 それにトイレとシャワーが普通に使えるようになったのはデカい。


 あと【マテリアルボックス】が進化した事によって収納容量が増えたのはとてもありがたい。

 直ぐに確認して判ったのだが、一度に収納可能な大きさが99m3の大きさとなり、この【コンテナボックス】は決済ポイントを消費して追加できるみたいなので、これからはカテゴリ別に保管する事ができる上に、これで今まで倒したスラッシュスターの素材を全て回収する事が可能となり、そのうえ時間経過と重量がゼロになると言うナゾ仕様だったのは、正にチートの名に相応しい。


 また【ダストボックス】についてだが、これはパソコンのデスクトップにあるゴミ箱と同じく、処分するまでの一時保管と消却処分するまでの時間を予め決めておく事が可能みたいだ。


 最初は廃棄物を入れるボックスなんて異世界で何の役に立つのか考えていたオレだが、この【ダストボックス】を【トイレボックス】の汚水処理用として接続可能だと気づいた時、その有用性を嫌と言うほど思い知る事になる。


 後から冷静に考えて見れば、この【ダストボックス】の為だけに【管理技士】クラスを選択しても良いと考えられるくらい、異世界でのトイレ生活には必須のスキルだったりする。


 そして【ランチボックス】と言うのは工事現場へ配達される、仕出し弁当がスキルとして実装されたもののようで、メニューから好きなものを選ぶ事も可能だが何も選択しなければ日替わり弁当が出てくるシステムだった。


 だがこのスキルを手に入れた事によって、地下迷宮最深部で餓死する可能性は無くなったので素直に感謝しておこう。ちなみにカップ味噌汁と500ミリリットル入りペットボトルの緑茶がセットで付いてくるのも嬉しいサービスだ。


 ただ【ガラケー】は今のところ通話相手が居ないから、ガッカリしてる残念スキルだった。だってそうだろう? こんな片田舎の異世界で、オレ以外の一体誰が【ガラケー】なんぞを所持してると言うのだろうか?


 せめてスマホであれば通話以外でも便利なアプリが使えるから、別の使い途があったものを……と、この残念な気持ちが異世界の神様に通じたのか、このスキルは工事用タブレット端末と融合してSIM的な役割を果たしてくれるようになるが、相変わらず通話出来る相手が居ない今の状況では微妙だと言わざるを得ない。


 だがタブレット端末を【ツールボックス】に入れたままでも、液晶表示のみを空中に投影表示させる機能が実装されており、いつでもAR(拡張現実)として呼び出せる便利スキルへと進化していた。


 そしてAR表示されたウィンドウからでも、この地下迷宮で狩った魔物の素材でポイントのチャージが可能となっており、これまで貯まっていた魔物の素材というか……魔物の死体を丸ごと買取りに出し、手元のポイントを増やしておいた。


 また【測量】スキルは現場監督なら誰もが多少の知識を持っており、別にスキルが無くてもそれなりに代用が可能な技術だ……なんて思っていた時期がオレにもあったが、わざわざ異世界召喚されて貰った【測量】スキルが普通な訳は無く、このスキルによって敵までの距離が正確に判るようになり、これまで適当に使っていた【騒音・振動感知】スキルに距離と方角の概念がプラスされると、まるでレーダーみたいな使い方が可能となった。


 それに一度でも通った場所は全てオートマッピングされてタブレットのメモリーに自動で記録されるので、初めて来た地下迷宮から脱出をしなくてはならない今の状況では、オレの命運を握る必須のスキルだと言える。


 このスキルの面白いところは、任意の二点を目視出来れば、現在地からの角度と距離を元に三角測量が可能なので、余弦定理を用いれば遠方にある物体の大きさも判別できる。


 あと【スグクル】もオレが知らないうちにレベルアップしていたようで、簡単に言えば取り扱う商品の種類が増えていた。


 これまでは工具などの工事用品と文房具や一部の生活用品のみだけだったのだが、今度は普通のネット通販と同じ様なサービスになったので、これを知った時は飛び上がって喜んだものだ。


 このスキルがレベルアップした事で、これまでお昼に届けられる【ランチボックス】以外にも手に入れられる食料品が増えたと言うことで、これまでは一部のインスタント食品とお茶や菓子類だけだったのに、今回のスキルアップで元の世界の通販で手に入れられる、ほぼ全ての品物が買えるようになったので、これから地下迷宮での生活に不安が無くなった。


 まぁ最初こそ、その物珍しさから色々な品物を購入するんだけど、結局は気に入ってリピート購入する品物の種類は自然に絞られていくようになる。


 この地下迷宮で生き延びて行くには、これからも大量の決済ポイントが必要になると思うから、これからも頑張って稼がなくてはいけないな。


 ご利用は計画的に……。

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