表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の魔法 ~俺と彼女と、すれ違った世界~(改訂版)  作者: 於田縫紀
第7章 予想外の行事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/47

第38話 合宿のお知らせ

「今日集まって貰ったのは、連絡の通り合宿のお知らせです」

 会長を務める六年生の柳川先輩が、前の教壇に立って説明しはじめた。

 室内を見ると茜先輩はいるし、須崎さんも塩津さんもいる。研究会の全員が来ているようだ。勿論顧問の清水谷先生も来ている。

「授業は修理のため、来週までお休みとなっています。なおかつ今は試験が終わって、比較的何もない時期です。そこで急な話ですが、この期間を使って当研究会の合宿を行いたいという提案が出されました。提案内容は今朝、皆様に学内SNSでお送りした通りです。つい先程詳細資料を送りましたので、参考にしていただければと思います」

 本当に急な話だなと俺は思う。よくここまでまとめたなと感心するくらいだ。どうせ須崎さんや茜先輩、清水谷教官が暗躍したのだろうけれど。

「資料にある通り、場所は新潟県の海水浴場近くです。なお宿泊先はお寺です。普段は居住者のいないお寺で、管理している住職さんと檀家総代の方に連絡してお借りする事が出来ました。本堂の他に檀家さんが集会所として使う、ふすまで仕切られた六畳間四部屋、キッチン、風呂等があり、主にそちらを使って下さいとの事です。

 場所は海水浴場まで歩いて五分程度で、広い庭もあるそうです。ただし食事は自炊となりますので、食材は購入して持っていく予定となっています。また帰る前に掃除をお願いしますとの事です。その食費を含め、また学校からの補助を引いて、費用はおおよそ五千円と計算しています。なお行き帰りはマイクロバスとなります。詳しくはつい先程SNSで送りました、詳細資料にあるとおりです」

 うーむ、お寺か。どういう伝手で借りる事ができたのだろう。誰か知り合いがいたのだろうか。

 あと魔法使いの集団が、お寺に泊まっていいのだろうか。仏教的にはどうなのだろうか。

 なかなか微妙な気もするけれど、面白そうではある。

「それでは清水谷教官から、今回の合宿についての話があります」

 出たな、清水谷教官! というのは冗談だけれど、元来この人は教師というより研究者畑の人。一応、物理の中学校・高校教員免許は持っているそうだけれども。

 ただそのせいか俺達にとっては、他の教官よりとっつきやすい人だ。割と本音で話してくれるし。

 さて今回のこの急な合宿について、教官はどう説明するのだろうか。

「さて、合宿については、会長の柳川が言った通りだ。教頭に出す書類には合宿の目的として『会員である生徒相互の親睦を深めるとともに、魔法について相互に教えあい各自の能力を高める』と書いておいた。でもまあぶっちゃけこの辺はお約束の台詞。要は暇だしいつも山の中だし、たまには海にでも行って皆で遊ぼう。それだけの話だ」

 非常にストレートで、わかりやすくていい。

「なお今回は急な予定だったから、安い宿の手配が出来なかった。代わりに私の伝手で、寺の建物を借りた。だから住職による寺の紹介と座禅体験の時間が、二日目の夕方に一時間ほど取られている。掃除もやらなければならん。あと食事は交代で自炊する事になる。その代わり宿代は無料だ。

 結果、往復のバス代と食事代実費だけ、なおかつ学校からの補助金ありで、二泊三日五千円程度という値段になった訳だ。宿を探すのに電話しまくり、更に学校へ提出する書類作成を、魔人襲来後のゴタついていた日にやった苦労を察してくれれば幸いだ。以上」

 ここで拍手が巻き起こる。勿論最初の数人は仕込みだろう。

 でもこの辺の呼吸については、会員のほとんどが良く理解している。清水谷教官はとりあえず、こうやって持ち上げておけば問題ないし、親切でまめな人なのだ。研究に関する事以外については。

「まずは参加者を確認したいと思います。これから学内SNSのアンケート形式で、参加希望を取ります。参加したい、参加しない、それぞれ回答して下さい。なお費用五千円については、来月の奨学金から引き落とし予定です」

 今現金がなくても問題無いという事だ。月末だから、考慮して貰えてありがたい。そう思いながら俺はタブレットを見る。

 ピンポンと小さな音をさせて、アンケートの到着を告げた。早速開いて読んでみる。

「お兄、参加だよね」

 横から遙香がそんな事を言う。

「ああ、遙香は?」

「勿論参加だよ」

 なら仕方ない。俺は参加にチェックを入れ、確認ボタンと返送ボタンを押す。

 回りも俺達と同様、相談しながら回答しているようだ。

 そう思ったら俺のスマホがブルブルと振動した。SNSではなくショートメール着信、須崎さんからだ。

『川崎は参加するよね』

 はいはい。向こう側に座っている本人を見たら、こっちに小さく手を振ってきた。

『遙香が行くというから参加する』

 そう返答しておく。

「さて、回答は残り八名です。現在のところ参加が十七名、不参加なしとなります」

 皆さん参加するようだ。まあ暇だし他に用事もないだろうから、そうなるだろう。参加費も普段の食費プラスアルファで済むし、来月払いだし。

「はい、これで二十五名全員の回答が集まりました。全員参加希望という事です」

「それじゃ私は教頭への報告、向こうの寺やバス会社への連絡をしてくる。後はそっちで決めろ。任せた」

 清水谷教官が立ち上がり、部屋を出て行った。

「それではこれから食事当番の割り振りと部屋決め、向こうでの予定の決定を行います。まずは食事当番のについてです。今回調理するのはは一日目夕食、二日目朝昼夕食、三日目朝食の合計五回になります。ですのでそれぞれ五名ずつで班を作って、一回ずつ担当して貰う予定です。なお時間と注文の都合で、食事メニューは既に決まっています。資料をSNSで送信しますので確認して下さい」

 SNSメッセージが着信する。合宿のメニュー表と、あとアンケート様式がついてきているようだ。

 まずはメニュー表を見てみる。

  一日目夕食がカレーライスとサラダ。

  二日目朝食がご飯、味噌汁、焼鮭、卵焼き、納豆。

  昼食がサンドイッチと牛乳。

  夕食が立食パーティ形式で、おにぎり、鶏唐揚げ、フライドポテト、サラダ。

  三日目朝食がサンドイッチと牛乳だ。

 それぞれに材料も、一人あたりの量も書いてある。

 更に別添で調理方法まで簡単ではあるが記載されていた。

 これは誰が作ったのだろう。清水谷教官は料理が出来ないと公言しているから違うだろう。茜先輩か須崎さんか。塩津さんあたりかもしれない。

「このメニューで作る予定です。調理当番については、料理の得意不得意があると思います。ですから自己申告を元に、こちらで機械的に組み合わせる予定です。ですのでメニューと作り方を読んだ上で、アンケートに回答願います」

 アンケート様式を見てみる。

 メニューそれぞれに、

  ① ほぼ作れる自信がある

  ② 多分作れるとは思う

  ③ 自信が無い

と三段階評価がついていて、そこにチェックを入れる方式だ。

 俺自身は両親が働いていたから、ある程度何でも作れる自信はある。この中のメニューも一通り作ったし、作り方もわかる。

 それに作り方を見ると、生徒が作る事を考慮してか、簡単にできるようにしてあるようだ。

 しかし女性陣が多い手前、ちょっと遠慮をして、全部②にチェック。

「お兄は全部①でしょ、本当は」

 遥香からの指摘は無視だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ