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夏の魔法 ~俺と彼女と、すれ違った世界~(改訂版)  作者: 於田縫紀
第6章 敵の襲撃

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第34話 状況終了

 そう思ったところで、また放送が入った。

「魔人の反応が消失しました。転移等の痕跡もありません。魔獣反応も全て消失を確認しました。状況終了です。班長の報告終了次第、解散とします。各員は寮事務室で装備として貸与された杖等を返却後、寮の自室へ移動して下さい。寮の自室の被害確認をお願いします。寮の自室に窓ガラス損壊等の被害がありましたら、校内ネットワーク、使用不能な場合は寮内インターホンで報告をお願いします。また戦闘時に使用して窓ガラス等の破片が混入した虞のある制服・作業服については前回と同様、別の袋で明日の洗濯に出して下さい。この連絡と同じ内容を校内ネット上にも掲示しています。繰り返します。状況終了です。各班長の報告終了後、解散とします」

「これで本当に終わりか」

「結構校舎、やられたね。授業再開までにまた何日かかかるかな」

「いっそ夏休みになったりしてな」

 一気に雰囲気が弛緩する。

「それじゃこの氷、溶かしますか」

「私がやるよ。熱系は得意だから」

 柏先輩が魔法を起動する。言うだけあってかなり上手い。水を垂らすことなく、氷からそのままきれいに蒸発していく。熱で他の部分を損傷させる事も無い。

「ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ」

「それにしてもいいよな塩津さんは。頼りになる彼氏がいてさ」

 平塚先輩がとんでもない事を言う。おいおい待ってくれ。

「違いますよ。そんな事を言うと、遙香ちゃんに怒られちゃいますから」

 塩津さんがそう言ってくれて、ちょっと安心。しかしだ。

「そうか。その割にはいい雰囲気だったと思うけれどな。上で大型魔獣から直撃された時なんか特にさ」

 平塚先輩、ひるまない。

「川崎君には遙香ちゃんもいるし、茜先輩もいますから」

「茜って二宮のことか。確かにあれ、外見はいいけれどさ。危険人物だろ」

 平塚先輩、どういう事だ?

「茜先輩、クラスでも何かやらかしているんですか?」

「通称『歩く治外法権』だからな。古文の大川の授業で、唯一居眠りを公認された女だ」

 その話ははじめて聞いた。

「何ですかそれ」

「あまりに堂々と寝ているものだから、授業中大川が質問したんだよ。そうしたら本人の代わりに使い魔が代わりに立って、『本日予想される質問事項です。ラ行変格活用、ありおりはべりいまそかり、またはいますがり。変格活用は四種類で他はカ行、サ行、ナ行。カ行はこ、き、く、くる、くれ、こよ。サ行はすとおはすで、せ、し、す、する、すれ、せよ。ナ行は死ぬ、いぬでな、に、ぬ、ぬる、ぬれ、ね。他の質問であった場合は起こして下さい』と返答したんだ。まさに大川が質問したのがその場所でさ。以降二宮は、古文の時間に関しては寝ていても文句を言われないようになった。あとは地理でも似たような事をやったな」

 うーむ。

「確かにやりそうですね。茜先輩なら」

「だろ。何せ授業開始時の出席すら、使い魔に返事させて本人は寝ているんだぞ」

「でも普通の使い魔は、そんな事出来ませんよね」

「命令した動作しかしない筈だし、そもそも使い魔を条件付きで自動起動させるのなんて普通出来ないわな。そう言えば魔法実技の時もやっていた。うっかり教官が『最高の攻撃魔法を使って見せて下さい』なんて言うものだからさ。使い魔を三体召喚して、組み体操みたいな姿勢をとらせた上で、大爆発起こして地形を変えたんだ。何でも創作魔法『アテナ・エクスクラメーション』だと」

 何だ、その何処かの金色で聖なる闘士みたいなふざけた技は。そう思った時だ。

「それでは報告が終わりましたので解散します。お疲れ様でした」

 川和先輩が宣言する。

「お疲れ様でした」

 そう唱和して解散。

 まあ解散と言っても、帰る方向は同じだ。だから雑談は続く。

「でも茜先輩、今回は一組の戦闘部隊で出ているんですよね。ちょい心配です」

「二宮自身が魔人みたいなものだろ。心配するだけ無駄だと思うぞ。自衛隊なしで魔人とタイマンやっても余裕な場面しか想像出来ない」

 酷い言われようだ。わからないでもないけれど。

「その『アテナ・エクスクラメーション』ってどんな魔法なんでしょうか。六年の教室でも教官からそんな話を聞きましたけれど」

 川和先輩まで話に加わった。

「使い魔三体が、それぞれ別の魔法を使うタイプの複合魔法だ。こっちもヤバくて解析あまり出来なかったけれどさ。基本的には氷魔法で作った弾を連射した後、風魔法で加速させ対象にめり込ませ、更に風魔法で圧力をかけた状態で熱魔法で一気に氷を気化させて膨張させ爆発させる技に見えた。更に言えば氷弾がドリルのように回転していたり、氷弾の温度そのものが絶対温度ヒトケタ台だったり、細かい処で色々ヤバい事やっていたけれど。あと本人曰く、『この魔法は使い魔を金色にするところがポイント』だそうだ」

 なんだかなあ。

「茜先輩らしいですよね」

 塩津さんも俺と同じ感想のようだ。向こうというか魔法世界の茜先輩、かなりとんでもない人の模様。

 スマホが振動した。何だろうと思いつつ取り出してみる。

『お兄大丈夫だった?』

 遙香からだ。遙香は怪我もなく無事だったらしい。

 良かった。そう思いつつ返事を打つ。

「おっと、二宮からか?」

「遙香ちゃんだと思います」

 塩津さん、その通りだ。

 でも茜先輩にも、ついでに連絡しておこう。大丈夫ですか、地形を変えていませんかと。

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