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愛情に才能は関係ない  作者: 合間 隙之助
ここから読めるよ
6/11

起承転結は簡潔に

この小説にはフィクションならではの誇張表現や過激な描写が含まれます。現実の価値観とは異なる考え方や関係性が描かれます。すべてを現実と混同せず、ひとつの物語としてお楽しみください。

血気盛んな高校生達が恐れるもの。


_親?

『筵』の人間に家族はいない。

_教師?

恐ろしかったら『専制第一』はもっと平和だろう。


それは、【退屈】である。

次点で教師達が悪ガキ達への嫌がらせで作る習った覚えのない問題ばかり出るテストか。補習ほど退屈なものは無い、とはこの間公然猥褻で清掃部に片付けられかけたスピーカーの言葉である。インターネット関連で彼にかなう者は人工知能くらいだろうが、生憎と彼は化学と物理に関してはからっきしなのでよく補習室のお世話になっているけれど。


-----


スピーカー(二つ名『怪電波』):

「ひまー、暇すぎ、暇だぞシェルフー」


シェルフ(二つ名『【博士|ドクトル】』):

「そうは言っても…」


「マグカップは派閥長会議で不在」

「メートルは貴方の後始末で忙殺され」

「レノールはお姉さんとのお茶会」


「あの三馬鹿が居ないと、やるゲームすら決まらないでしょう?それとも私とチェスをしますか?」


スピーカー:

「えー、確かに勝ちようがないくらいフルボッコにされるのは俺の中のマゾが悦んじゃうけどさぁ、それもう中等部ン時やりすぎて飽きてきたよねー」


シェルフ:

「私で抜かないで欲しいんですけど」


スピーカー:

「シェルフもさー、もっと性に貪欲になろうぜ?その方が人生何倍も面白いって」


シェルフ:

「別に、無い訳では無いですよ。そも私に性別が無いこと、そして性行為より新たな発見に欲求が満たされること、その二点で完結しているだけで」


スピーカー:

「つまり化学中は自慰と一緒ってこと?」


シェルフ:

「その発言、死ぬほど嫌なんですが、そうですよ」


スピーカー:

「マジかよ!あんな真面目腐った顔してる時も興奮してるってこと!?やば!それはそれでエッチじゃん!」


シェルフ:

「凄いですよ、私生まれてこの方後悔なんてあまりしたことがないんですけど、貴方と話していると前言撤回したくなってきて最悪な気分になります」


スピーカー:

「罵倒しないでゾクゾクするから」


シェルフ:

「はは、本当に気持ちが悪い」


* * *


メリーグラーノ(二つ名『管理人』):

「あら、屋上から爆発音。レノが居ないのに今日は随分と騒がしいのですね。マグカップかしら」


レノール(二つ名『狂犬』):

「メリー、あんなクソ女のことなんて気にするな。それより今日の紅茶はどうだった?砂糖もいい所のを取り寄せた」


メリーグラーノ:

「レノも正直じゃないのですね、本当はマグカップのことを嫌いになりきれないくせに…。ふふ、年頃の子は難しくて、それでいて愛おしいです。少し羨ましい」


レノール:

「…本当にそんなんじゃねぇよ」


メリーグラーノ:

「そんなに気を損ねないで、私の可愛い弟。私は、私の珍しい同性の友達と弟が仲良くしてくれると嬉しいんです」


レノール:

「…」


メリーグラーノ:

「可愛い子、貴方の淹れてくれた紅茶を飲みながら、この場所に入れることが幸せなんですよ」


-----


「でぇ?下着泥棒?」


「そーじゃ、全くけしからん奴じゃの!」


教壇に立つパルチザンが、やれやれと言わんばかりに首を振る。一通りの予算報告が終わったからだろう、自分の仕事は終わったと言わんばかりの有為は「大変そうですね」なんて他人事な感想を言うだけ言って端末を弄っている。


「風紀委員は忙しいんだね、可哀想に」


全く思ってないだろうマグカップの同情を聞き流したパルチザンは言葉を続ける。


「おう、忙しいんじゃ。

 この犯人、殺しでもやってくれりゃあ儂らとて動きやすいと言うのに、こそこそみみっちい犯罪ばかりで優先順位が低いんじゃよ。その癖クレームは治安維持じゃからとウチ!」


「うふふ、ざまあみろ、ってやつです」


いつも『専制第一』に対するクレームを一重に担っている生徒会の会長有為がにこにこと笑った。そんなことに全く関わりがないマグカップは、先程の有為の真似か「大変そう」と半笑いでヘラヘラしている。それが気に入らなかったらしいパルチザンが、ばん!と教卓を叩く。日頃悪ガキに頭を悩ませる教師達からの八つ当たりを食らう教卓は、両手の形に凹んでいた。


「じゃから!儂パス!」


「は?」


「面白い話になってきましたね」


楽しそうなのは有為だけ。

嫌な予感を本能で感じ取ったらしいマグカップは、面倒くさそうに顔を顰めて話を待つ。


パルチザンは、同性の同世代よりも小さく華奢な体を全身使ってマグカップに何かを投げつけた。


くしゃくしゃにまるまった、その紙には『依頼書』と無駄に達筆な字で書かれている。内容は適当に、要約すれば『下着泥棒を捕まえろ』とのことで。それを確認したマグカップは嫌そうに顔を歪めて大きくため息をついた。


「『無派』よ!

 無派長マグカップ!『荒御魂』よ!

 後は頼んだぞ!」


『専制第一』が誇る、三派閥の一柱、そのトップ。傲岸不遜、自由気ままな燃え盛る焔。


_二つ名を『荒御魂』。


「はー…、マジかよ」


統治の『学派』、守護の『部派』を支える縁の下の力持ち。体のいい話が【御用聞き】の『無派』のトップこそ、他でもないマグカップの肩書きだった。





一口メモ

シェルフ:2年化学研究部部長。生まれながらに性器を持たない真性性分化疾患の生徒。趣味は研究。

メリーグラーノ:2年レクリエーション部部員。専制第一では珍しい女子生徒。趣味はお茶会。



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