③超刀神情熱剣
高さ3mはあろうかという山の上に、ご機嫌に登っていったアオキは
息切れしていた。
辺りを冷静に見渡してみると、景色全体は淡く、そして赤い。山のような、薮の森のようなものが一体を覆っている。廃虚も建ち並ぶ。学校、病院、市役所であろうものたち。
薄汚れ、ヒビ割れ、赤く、燃えているビルもある。煙は方々から立ち上っていて、匂いは
やけこげたタイヤの独特の嫌な匂いに 、電車が急ブレーキをかけた際に生じる、磁石が擦り切れ、摩擦で焦げた鼻の先に、つんざく匂いだ。いくつもの墓石、燈籠、卒塔婆、十字架、等が並列していないまま、その辺に投げ出されているといったような状態だ。
墓場界…アオキはそう言っていた。混沌とした世界。そう思い、見上げるとアオキは上の方で、息切れしていた。息切れ??というか大きく呼吸をしていた。はああああ、ふうううう、はあああ、ふうううう。気付けば僕のところまで、呼吸音が聞こえてきた。アオキの全体がうねりをあげていて、白く水蒸気のように身体の周りを覆っていく。僕はその様子を近くで見るべく急いだ足でアオキのもとへ向う。何だ、何が起きてるんだ。アオキ!僕は呼んだ。アオキは白いオーラを纏い、呼吸を整えてこう言った。『燃』。片手を高くあげ、その右手は燃えているようなオーラ。右手を振り下ろし、辺り半径3mを燃やした!ブオッと一瞬、目の前に熱気が高まった!僕は左肘あたりで顔を隠した。おおお。3m範囲の鉄クズや、墓石、卒塔婆などは、その一瞬で灰と化していた。アオキが言う。これは『燃』。お前が降りたこの骨郷ってぇ駅は、炎のモード。お前は炎の生命エネルギーを取得しなくちゃならない。そうしないとここでは生きていけないのさ。そしてこの燃は、10本の黄金の卒塔婆を探し当てる力。まあ正確にいうと
4本は、この世界の絶対的存在の墓場くんが持っているだけどね。
この炎のモードの
生命エネルギーは燃という力を使って
黄金の卒塔婆を探すんだ。
炎のモードが
探さなくてはならないと課せられた
黄金の卒塔婆は、
6本中の1本その名も『超刀神情熱剣』。
(ちょうとうしんじょうねつけん)
そいつを炎のモードで
修行してとにかく
墓場力をあげるんだ。そして燃の力を得て
超刀神情熱剣を探してくれ。
それがここでのルール…。生きて行く道なのか…。そう僕が言うと
アオキが僕の全身を
燃を使った残りのオーラで包むと、僕の心臓辺りに、ミドリ色の、ゾンビ色の手を当てた。オーラの力を強めてこう言う。お前に
ここでの名前をやろう
少し難しい顔して
思い出したかのように
告げていく
『堕…』『…亞』『黒』
『堕亞黒』だ。
堕亞黒、炎の戦士だ
よし行くか、オーラを、燃を収めて、言った。一体どこへ行くんだよ?!
炎のモードの修行場にだよ。アオキは楽しそうに声をあげて短く笑った。