㉗骨おじさん
悪鬼とハガ。
紫空メトロポリスで
墓場くんの波動砲が発射される。
波動砲から建物ごと守る『骨おじさん』とは…
あれが…骨おじさん…
骨・大都会の中は、入り口から
20m先くらいにステージがあり
腰上ほどの高さがある。墓場のライブハウスといった感じで、柱は骸骨が埋め込まれ、照明は、赤黒く、炎や煙が上がっていて、とてもサイケデリックな催しだ。音が鳴る度に、反応する長く伸びたツルから、ドライアイスのような、白い蒸気が、吹き出る。一反木綿のようなヘビ顔で、宙を舞うものや、学校の、ガイコツの標本のような5~6体グループがワイワイと、どんなお酒が入っているかは、わからないが、飲み交わして騒いでいる。ハガのようなゾンビたちもいて、ハガは、目配せしているようだった。僕は、鬼ネコだが、似たような鬼鹿や鬼犬なんかもいて、バンドに合わせ、2足歩行どころか、踊り狂っている。甲冑を纏う、鬼カエルたち。戦争帰りなのか、これからの戦闘なのかは、わからない。まるでスターウォーズに出てくる酒場の雰囲気そのものだ。このライブハウスのキャパは、300人規模のもので、内容はカオスだが、殺伐とはしていない。いい盛り上がりをみせていて、みんな、それぞれに楽しんでいるようだった。それはきっと、このバンドのおかげであろう。ボーカルの骨おじさんは、叫んでいた『ロックンロールに定年なしさぁ~』『夢ってのは、終わらせなきゃ永遠さぁ~』観客席は盛り上がり、色んな物が飛び交う。5人編成のバンドで、ギターは女のゾンビで、メドゥーサのような、意志を持っているように、黒髪の三つ編みが何本も蠢いている。百足のように。手は4本ほどあるように見える。ギターは、エクスプローラーのような形をしているが、本物のタランチュラか、ステッカーかわからないが、蠢いている。ギターの4隅にタランチュラが施されている。4本の手は、素早く動いて、有り得ないギターソロを奏でている。ベースは、異様に太った黒人で、グラサンに、赤いバンダナを頭に巻いている。皮ジャンを着て、腕は2本だが、指が8本指くらいある。重低音を響かせていた。ベースはものすごくデカイ、通常の3倍はあろうかという大きさで、スティングレイのような形をしていて、骸骨のステッカーが、これ見よがしに貼ってある。ドラムは、骸骨のバスドラから、キックするたびに黒煙があがる。骸骨のフロアタム、骸骨のスネアには、どす黒い血が撒かれていて、叩くたび、血が跳ね上がる。骸骨のタムタムは7~8個並んでいて、クラッシュシンバルも左右に2つずつ、迫力のあるドラムセットだ。ドラマーは、ガスマスクをしていて、迷彩の上下に、黒いエンジニアブーツ。手は2本だが、バスドラの、激しいツーバスを聞くと、足は4本くらいありそうだ。キーボードは、黒いスーツに銀色の長髪。長髪から覗く、顔は、1つ目だった。大きい目が1つ。ウットリして演奏している。手は2本、足も2本。普通の人間に見えるが、4段もあるキーボードとコンピューターを、鬼のように弾きこなしていた。その様は、人間離れをしている。顔は、ウットリとしていた。
そして骨おじさん。ボーカルで、アコースティックギターをかき鳴らし、シャウトしている。皮ジャンに、グラサンをかけて、熱唱している。現世にも、こういう熱いおじさんっていたなぁ。上手いとか、かっこいいとかを
通り越して、ただ熱くて、胸を打たれるギターを持ったおじさん。正に現実、墓場界で、やりぬいているんだ。骨おじさんは。僕は、胸を鷲掴みにされた想いで、このバンドを見ていた。
ふと、足はリズムをとり、体は揺れ、手拍子をして、両の手を、拳にして、振り上げていた。
墓場ライブハウスに
釘付けの悪鬼。
骨おじさんには、並々ならぬ
感情でライブを観る。




