㉔ポテンシャル
墓場界へ堕ちた祝律音。
案内は墓場界
エンペラークラスの陸弦。
僕は不思議と、この今、自分が置かれている状況を不思議だとは思わなかった。すんなりと受け入れている自分がいる。元々、こういった類い、オカルト事が好きなのだ。タロットカード占いをするくらいだから、そうなのだが、心霊スポットや、UFO、UMA、超常現象、都市伝説等々。UFOも3回見たことがある。という事実も、今起きているパラレルワールドにいるという事の方が、今までを圧倒的に上回ってしまった。だから、恐怖もあるが、興味が勝つといった具合だ。陸弦さんは僕を鬼ネコ??って言っていた。全身は白く、エンジニアブーツだけ履いていて、まるで映画の、時計仕掛けのオレンジのような猫。ちょっと気に入ってきたが、この鬼ネコになった自分や、陸弦さんの襲われた時とは、打って変わって、愛嬌のあるおばあさんだけど、どこか圧倒的強者の風格も。……。それに、この電車?汽車?この汽車はまっすぐレールを走っている感じでは全く無い。銀河鉄道のような動きをしている。よくよく見ると、窓枠は髑髏だし、そこから声のような、念仏のようなものも聞こえてくる。シャアアア、*#&@#**#@&… 訳の分からない言葉が聞こえてくる。
人の気配は感じなかったが、僕より2つ先くらい
3人掛けの椅子に、ゾンビのカップルみたいな、2人組みがいて、ヒソヒソと話している。
『おい!!』陸弦さんが呼んでいた。
『はい!』僕はすぐさま、返事をした。
『ボケっとしてんじゃないよ!もうそろそろ駅に着くよ』
『駅…?降りるんですか??』
『あたりまえだろ!着く駅でアンタの生命のモード、使う力、学ぶ力が、決まるんだ。覚悟しとけよ。クックックックッ。』
『使う力か…何があるんでしたっけ?』
ゴツっっ!!ゲンコツで陸弦は僕の頭を叩いた。
『黙ってな!嫌でも着けばわかるさ』
ギィィギィィギィィ、ガタアアアアン
ゴトォォォォン、ガタアアアアン、
ギギギギギギ!
車輪が軋む、酷い匂いが、飛び込んできた。
腐った食べ物と、ゴムが焼け付く、有毒物質が焦げた匂い。鼻をつまもうとしたが、鼻がない。内蔵されてるんだろうか?とにかく揺れと
匂いと、ネズミの大群が、駆け抜けてきて、吐きそうだ!ネズミの大群は、汽車全体に上下左右関係なく走っていく。汽車の髑髏が、警報みたいな音を出し始めた。ピイィィィィ!ピイィィィィィィィィッ!
『墓場警報だよ。もうすぐ着くさ』
陸弦は海賊の船長のように、頼もしくあった。
服が、磁場の風みたいなものが吹いていて
バサバサと陸弦の服が靡く。
波に立ち向かう船長のようだった。
『どこかに掴まってな』
ギギギギギギギ。ネズミは車両の先頭の方に、
大量に帯重なり、布団を積み上げたみたいに
なっていた。
僕は手すりに掴まり、恐々としている外の、
磁場のうねりをやり過ごした。
汽車は停まった。
陸弦は汽車の扉をゆっくりと開けた。
『ほほう、なるほどな。そういうことさな。』
意味深に言うと、陸弦は、汽車の扉から
飛び降りた。
崖にでもなっているのだろうか?
僕は、扉に近づき、外を覗いて見た。
3階建ての上から見てるような高さ、
周りは、1面、赤黒い色で満ちていて、僕が想像していた、地獄というものに、かなり近くて驚いた。都会のような建物の並び、町がちゃんとあって、しっかりと建物みんな、廃墟である。色んなビルや家屋から、煙が出ていて、燃えている家屋や、墓地も広がっている。卒塔婆や、墓石、霊園、ゾンビたちの徘徊、ガイコツが普通に歩いている。ゾクゾクすると共に、僕のオカルト魂は、最高潮に達していた。こんな世界が、現実の世界の7分後に、存在しているなんて!
『何をやっている!早く降りてこい!怖いか!アンタは、もう鬼ネコなんだ。自分の頭の中の、ネコを想像して、飛び降りてみな』
『えっ?あっ!はいっ!』僕は、地獄景色に
見とれていただけとは言えずに、躊躇わず、ネコを想像して飛び降りてみた。
ニャンということでしょう。クルリンパ、クルリンパ、ニャニャニャにゃんと下まで、簡単に降りれてしまった。
『クックックックッほらな!さあ来な。』
僕は、自分の体をマジマジと見つめた。あまりに身軽さと今までの、自分ではない感覚。研ぎ澄まされた、ポテンシャルを感じた。何でも出来る気がした。降りた目の前には、
大きな四角いビルがそびえ立つ、不気味なお化け屋敷みたいだが、駅っぽい。駅ビルか…;。伸びたツルが、ビル全体を覆い、赤黒い錆が、こびり付いている。
陸弦が、『これが、駅の看板だ』と言って持ってきた。
『触』という能力だろう。 人差し指を使い
200kgくらいありそうな駅を支えている柱の1本を浮かしている。柱に貼ってある錆びた、
駅看板には駅名が書いてあった。
『骨暮里』
『なんて読むんですか?この駅』僕は聞いた。
陸弦は『こっぽり』だよ
『アタシは『ほねぽり』って呼ぶがね
クックックックッ。』
『こっぽり…かぁ…
フランシス・フォード・こっぽり …
クックックックッ(陸弦のマネ)』
ゴツッ!ゲンコツで陸弦は僕を叩いた。
『アタシのマネなんて1億年早いんだよ!』
陸弦と祝律音は
汽車髑髏で到着した
『骨暮里』(ホネポリ)という駅。
そこには…




