⑭白い妖気
クッキーを追う罪門も
墓場界へと堕ちていく。
クッキーぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!断末魔が汽車髑髏の中で響いた。聞いたことのある声!あの声は…
!まさか!ここはもう汽車髑髏の中だぞ!よし君??
なんでこんな所へ!!
クッキーは、よし君が
尾行してきたことに
気がついた!!なんてことだ?!
よし君は、空気渦の中に!グルグルとパラレルワールドの入り口に、入り込んでしまっている。というより半身は、現世。もう半身はこちら側に来て
しまっている。このままでは、よし君は真っ二つになってしまう。すでにもう、右手がない。マズイ!…きっとあの空気渦の狭間に、落ちて居るのが、そうだ。あのよし君の右手だ。僕のことを再三抱っこしてくれる右手だ。失う訳にはいかない!この瞬時にクッキーは悟った。このまま現世に帰したら、よし君は死んでしまう。とりあえずは、ここの、墓場界の住人にさせるしか、生きててもらう術がない。悩んでる暇はなかった。
時空の扉である、空気渦が、小さくなろうとしている。クッキーは、大きく息を吸い、そして大きくゆっくりと吐いた。白いオーラの様な、妖気を纏い、クリクリの可愛らしい、焦茶色の毛は、逆立ち、全身を闘気に満ちた針で、覆われている。クッキーの前足は
もはや、人の手のように、何かを捏ねくりまわしている動作をして、丸い妖気を作り出した。クッキーは言う
『溶』。土の生命エネルギーの力。それを、その丸い妖気を放ち、空気渦に投げ入れると、たちまち渦は、ピしゃゃゃゃ!!と音をたて、汽車のドアが1枚入りそうな、透明な空間が出来て、空気渦は消えてなくなった。そのドアは、磁場の流れと電流が流れているような、ブブブウィィぶブブウィィと音がしている。回転していたよし君の身体は、投げ出された。ドサっっ!!クッキーは、よし君の右手を拾い、身体にくっつけては、白いオーラを強める。よし君…これで大丈夫!
クッキーは人が、1人、入りそうな大きな妖気の白い蚕を
作り出し、よし君をその中へ休ませる。
死なないで。よし君。
僕のせいで、ごめんね。クッキーは苛立った。よし君まで巻き込んでしまった自分に。
クッキーの額には
大きな紋章のような
引っ掻き傷のような
痕が蒼く光っている。
その傷の上には
ユニコーンのような
1本の角。目は黒い眼球のところが、蒼く光っている。身体の傷は
百戦錬磨を物語っている。反り立つ全身のオーラは墓場界で連戦連勝の出で立ち。
現世の愛苦しくい、可愛いらしさとは、まるで今のクッキーは結びつかない。
そのクッキーの本当の姿は、喰ッ鬼威。
そう呼ばれている。
墓場界では名の通る鬼犬なのであった。
喰ッ鬼威は
墓場界の土の生命エネルギー『溶』の使い手。1000deathを超えるクエストクラスのランクであった。墓場界と現世を溶かせる数少ない使い手。
今日は、最近、頻繁に起きている
汽車髑髏乗っ取り被害の調査で、ここに来ていた。この汽車髑髏4四4号だ。
喰ッ鬼威は、溶を全身から、溢れさせ、汽車の隅々まで、白く、妖しい妖気をはびこらせた。乗っ取ろうとしてるやつらを、探す為の溶。あらゆる、この汽車髑髏に乗っている、ゾンビや鬼ネズミ、ガイコツらが震えた。喰ッ鬼威が怒っているのが、白い妖気から、理解出来た。そこにひとつ、ふたつ、みっつと
不可思議な体温を見つけた。喰ッ鬼威は見つけたぞ!!輩。3匹!!!と叫んだ。
その3匹の輩は、自衛隊の迷彩服を着た、ヤン チャゾンビと言われる輩だ。構成はデブ、ヤセ、普通の自衛隊の服を着たオタクの集まりのようだ。ヤンチャゾンビは、それぞれに武器を装備していた。デブは細くて丸いメガネに、栗のような頭、自衛隊の、小銃を右肩にかけている。89式5.56mm小銃、64式7.62mm小銃の後継として開発された国産のアサルトライフル。NATO標準の5.56mm弾が採用されている。射撃モードも単発・3点射撃・連射の選択が可能な銃だ。ヤセは、ほほがコケすぎていて、背は230センチほどある。目は虚ろで鼻はとんがっていて高い、ヤセも右肩に、銃を下げている。64式7.62mm小銃。M1ガーランドの後継として1964年に正式採用された戦後初の国産小銃であり、陸上自衛隊以外にも航空・海上自衛隊、海上保安庁にも配され89式5.56mm小銃に更新が進められている。かなりの利便性向上の銃だ。普通は、髪型が7:3分け、ごく普通である。目はクリッとしていて、鼻筋も通っている。口は大きくも小さくもない。ごく普通だ。彼の銃は、5.56mm機関銃 MINIMI62式7.62mm機関銃の後継として導入したベルギー製の機関銃で、89式5.56mm小銃と同じ弾薬が使用できる。給弾は状況に応じて弾倉・リンクベルトを使い分けられる優れ物だ。ヤンチャゾンビ3人は喰ッ鬼威に臆することなく、見つかったとわかったら、攻撃に転じてきた。フォーメーションZ!!!そうヤセが言うと、変わるがわる3人で、円を描きながら、ヒットアンドアウェイで、喰ッ鬼威に、3人が、手に持っているお得意の小銃らを乱射してくる。ダタダダ、ダダダ、ダダダ、ダダダ。喰ッ鬼威はたまらず、伸ばしていた溶を、手元に集めだした。そして全身をバリアの様に覆い、銃弾を防いだ。
フォーメーションK!!! またもヤセの号令に、すると3人は、小銃やマシンガンをサバイバルナイフを持ち替え、前、右、左、と3方向から、次々にジャンプして、喰ッ鬼威の頭上へ攻撃してくる。頭部は、バリアでカバーしたが、着地と同時に、逆手持ちに切り替え、パンチを繰り出してくる。なんとか、百戦錬磨の勘で防いではいる。むう…。連携がとれていて、反撃の隙がない。
喰ッ鬼威は防戦一方になっていた。
クッキーは墓場界の住人で
喰ッ鬼威というクエストクラスの
使い手だった。追ってきた罪門を
墓場界に引き込まなくては
ならなくなった。




