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9話 作戦決行


そしてその作戦は数日後に決行された。


「どう?おかしいところはないかしら?」

私は今から「ルノワから旅行に来た町娘」だ。


街が盛んでるルノワの国の娘達はカラフルなドレスにさりげないアクセサリーを付けている子が多い。


私もそれに習い鮮やかなブルーの長袖のワンピースを着て、耳に小さな耳飾りを付けてみた。


手にはトランク、肩にはヴァーミリオン達が入る斜め掛けの籠バッグをからい皆の反応を伺う。


「なかなか様になってるぞ」

「本当?」

ヴァーミリオンにお墨付きをもらうと自信がついた。


「あなたにそう言われたら安心ね」

彼の言葉はなんだか心強い。


「お前、誰でもそんな事言うのかよ」

ふと、ヴァーミリオンがそんな事を聞いたので


「言わないわよ」


「そうか」


「何よ」


意味が分からない。


「先、行ってる」

またそれだけ言うと彼は先に行ってしまった。


「本当に何よ」

何か気に障った事言ったかしらと考えたが分からない。


「ちょっと、バッグに入ってよ」

そう言いながら私は彼を追いかけた。




♦︎




怪しまれない為に私達はわざわざルノワから馬車を借り、パルデールの国境の前で入国調査を終えて久しぶりにまたこの国に足を踏み入れた。


(意外とバレないものね)

ひとまず安心してバッグの中には竜の姿になり小さく変形したヴァーミリオンに

(今のところは大丈夫ね)

とアイコンタクトをする。



(さて、作戦はこれからよ!)

金山がデ・シャールのものだってパルデールの人達に知ってもらわなきゃだ。



停戦中だから街は少し、道のタイルや店の屋根が傷んでいるがデ・シャールほどではない。


客を装い金山がデ・シャールのものという噂をする為に、私はまず街の小さな雑貨屋に入った。


確かここは小さいながらも中年のおしゃべりなおじ様店主がいる店だ。


「いらっしゃい!」


ドアチャイムの音と共に店主の大きな挨拶が響いた。


「こんにちは」

反射的に挨拶をすると店主は

「お嬢さん、見ない顔だね」

と気さくに話しかけてくる。


「ルノワから観光で来たの。

ちょっと飲み物が欲しくなっちゃって何かあるかしら?」

と私も自然な会話を装い店主に話しかける。


「だったらこのフルーツジュースはどうだい?」

と店主が勧めてきたが断る。

「うーん。ジュースはすぐに喉乾いちゃいそうだしお茶かお水はあるかしら?」


そう言うと店主は

「だったらこれ、パルデールの滝のミネラルウォーターはどうだ?」

と商品を出してくれたからそれを買う事にする。


店主がレジを打っている最中


「前に戦争してるって聞いてたけど今は停戦中なんでしょう?意外とのどかな国なんですね」


「ああ。

とはいってもまたしばらくしたら一悶着あるんだろうな」

俺たちも大変だよと店主は苦笑いする。


「へえ、でもそもそもなんで戦争をしてたんでしたっけ?」


「お嬢さん知らないのかい?」


「私ルノワから来たから理由は分からなくて」


「金山だよ。

うちの国の金を竜が占領したんだ

ほらこことデ・シャールは隣同士だろ。


国境に金山があるからそこを採掘すると竜が戦争を仕掛けにくるんだ。


元はうちの国の物なのによ」


「へえ、そうなの?

金山ならうちの地図ではデ・シャールだった気がするけど」


それとなく主張してみる。

がー


「バカ言うなよ」

と店主はまさかと笑っただけで全く信じないようすだった。



店主と別れ店を出る。


「まあ、こんなものよね。

最初の一件だけだからこんなものよ」


ポーチの中のヴァーミリオンに小声で話しかける。

「だといいんだけどな」


いつもの自信はどこえやら。

彼は今日は弱気だ。



だけどー。


「そんな訳ないわよ」

「まさか」

と他の店でも同じような会話をしてみたが効果はない。


「なんでえ?」

夕方、路地裏で休憩しているとヴァーミリオンは

「まあ、一日で自体は急に変えられない。

デ・シャールに戻ろう」



結局、パルデールにはとどまる事なくデ・シャールに戻ってきた。


(やっぱりすぐに民衆の考えを変えるのは無謀だったかしら?)


ヴァーミリオンにもすぐには上手くいかないと言われていたけどもどかしい。



「あんまり根を詰めるな」

見かねた彼が慰めの声を掛ける。



「私は何もなしてないわ」


下を向いていると

「ルリ、手を握ってくれないか?」

と彼は言ってきた。


「何、急に?」

言われた通り、両手を出すと彼は私の手を握り

「飛ぶぞ!」

と言うと本当に竜の姿になって私は彼と一緒に空に上がった。


「わあ!」

高山とは違う緑豊かな丘が見えてきて、鮮やかな花畑の姿に感動した。


「すごい!

デ・シャールの国にもこんな景色があるのね」


今は秋なのに花が残ってる。

コスモス畑だ。



パルデールにも春はバラ園があった気がしたけどあまり庭の散策をしなかったから新鮮だ。



「ここの丘はあまり戦の影響が少ない。


元気出たか?」


人型に戻った彼に聞かれる。

どうやら相当に思い詰めた顔をしていたらしい。



「もしかしてここ人気な場所だったりする?」


「一応な。

もう少し明るい時間ならカップルや家族で賑わうからな」


「デ・シャールにとって特別な場所なのね」

湖もあり、春や夏は特に賑わいそうだ。


「冬は湖は凍っちゃうのかしら?」


「ここはそこまで雪は降らないよ。


まあ、金山はもう少ししたら冬は雪の影響で入れなくなるからこのまま停戦に持ち込めればいいが。


いや、今この話はなしだな」


ヴァーミリオンもなんだかさっきの私みたいな顔になった。



「ルリ、明日は時間はあるか?」

「ええ、シスター長に断れば大丈夫よ」


「ルリの行きたい場所に出掛けないか?

ここに、デ・シャールに来てくれた礼だ」

「いいの?」


さっきまで悩んでいた彼が急に提案を持ち出したからいいのかと思ったが、魅力的な誘いに私はすぐに返事をした。


「私、ルノワの街に行きたい」

「了解」


彼の二つ返事に私は今から楽しみになってしまった。



*・゜゜・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゜・**・゜゜・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*


ここまで読んで下さりありがとうございます!

気に入って頂けたらいいねやブクマ、感想よろしくお願いします!


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