4話 竜の国 デ・シャール
デ・シャールの城は竜が住んでいるからどんな野蛮な場所かと思えば案外普通だったが長くからそこにあるのか煉瓦にヒビが入っていたりした。
王座にはヴァーミリオンとは違う長い黒髪の男性が王座に腰掛け口を開いた。
「君がルリか。
私はヌーマイト。
デ・シャールの王子だ。
来てくれてありがとう」
声や存在が儚げなその人は鋭い光が宿った眼差しを持っていて、それは隣にいるヴァーミリオンに似ている気がした。
(綺麗)
まるで宝石の中にたくさんの針が入って光る目の輝きを見て私はは宝石辞典でいつか見た金色の石の中がルチルクォーツみたいと思った。
人間離れしたいでたちに美しさを覚える。
「ヴァーもおかえり」
「おう」
王子とヴァーミリオンの距離は近い。
「幼なじみだ」
とヌーマイト王子は言う。
「あの、私手当だけに来ただけなんですけど」
期待されても困るので率直に言うと
「そうか」と肩を王子は落とす。
(残念そうにされても困るわよ)
「君は竜の子を庇ってくれた。
感謝する。
ヴァーが話したと思うがこの国には聖女がいない。
軽い怪我ならまだしも回復に時間が必要な者もいる。
どうか君の力で彼らを助けて欲しい」
「・・・分かりました。手当だけなら」
(この人も竜なのよね)
勝手ながら竜は粗野な人だらけで国の王子ともなればどんな暴君かと心配したが彼みたいな落ち着いて冷静に話ができる人もいるらしい。
「私で本当にいいのかしら?」
通路を歩き呟く。
「お前の攻撃は最低限のものだった。
地名的なケガを負った奴は少ない。
頼む!ルリ
この通りだ!」
ヴァーミリオンに跪かれ下を向かれる。
「ちょっと顔を上げてよ。ハイハイ分かりました。手当するだけだからね?」
「おう!」
彼は分かりやすく明るくなった。
(だから気が早いのよ)
私は手当をするだけなのだ。
「城の外に行こう。
街を見せたい」
そう浮き足立てる彼に着いていく。
「王子と仲がいいのね」
「年が近いからな。
ガキの頃はよくイジられたよ」
「意外だわ」
王子は意外と意地が悪い人なのかしらと思ったけどヴァーミリオンはケロッとしている。
本当に仲良い者同士なのだろう。
(王族と騎士。
王子は国を守る為、教育を。
ヴァーミリオンは戦術を学んでいたはずよね)
時が経って役目が違っても2人はやはり母国を愛してるはずだ。
そうして街を案内していると見慣れない竜と乙女の像があった。
「これは?」
「ああ、聖女と竜王の像だ」
「聖女がこの国にもいたの?」
「一応昔はな。
昔はここも平和だったんだ。
でも竜だけだって事だけで迫害される事が多々あるだろう?
そんな時に大きな力を持った聖女がこの国に現れ俺たち竜の女神になるんだ。
竜と聖女、互いの力を合わせれば勝てない者はないらしい。
この像は王子の亡くなったひい爺さんだ」
「へえ」
(大きな力・・・)
昔もこの国にもかつてエライザ様みたいな人がいたのねと感心した。
ジッと像を見ているとさっきからチラチラ子供達に見られている事に気づいた。
「ヴァーお兄ちゃん」
10歳くらいの男の子がヴァーミリオンに声を掛ける。
「この人は?」
男の子はよそ者の自分が珍しいらしい。
「この人はルリだ。
聖なる力を持っている」
「本当?」
男の子はすげーッと興奮し奥で庭仕事をしている男の子に声を掛ける。
「テュー!お前の母ちゃん治してもらえよ」
テューと呼ばれた小さな男の子が反応した。
「このお姉ちゃん、聖なる力があるんだって」
テューはその言葉を聞くなり口からブワッと小さな炎を私に向けて吐いた。
「熱っ!」
「ルリッ!」
心配したヴァーミリオンに大丈夫となだめ、水魔法と治癒魔法を自分に掛け軽い火傷を治す。
「ルリ大丈夫か!?」
「ええ」
「こらっ、テュー!」
ヴァーミリオンは怒る。
「なんでソイツを庇うんだよ!
お母さんはお前達にやられたんだ!」
(え?)
テューはそう言って私達から離れて家の中に駆けて帰った。
子供達の声色は不安そうに
「お姉ちゃん、パルデール国の人なの?」
そんな目を向けられたら何も答えられないが時は既に遅かった。
「嫌っ!」
と子供達は私を突き放した。
「違う!このお姉さんはお前達の味方だ」
「じゃあ、なんでテューのお母さんをいじめの!?」
「あれはお姉さんじゃない。
もう1人の聖女が攻撃しただろ!」
「ヴァーミリオン、もういいわ!」
「もうって」
「戻りましょう」
無言で2人で城に帰り、用意された自室に入ってベッドにうずくまる。
(テューがあの時の子どもの竜だったなんて)
彼らが怒るのは当たり前だ。
寝巻きに着替えてベッドで考えているとヴァーミリオンが部屋のドアをノックした。
「入って大丈夫か」
「うん」
ドアを開け
うわっと彼は赤面する。
「着替えたならそう言えよ!」
ヴァーミリオンは意識してるのか何故か顔が赤い。
「メイドさんが用意してくれた寝巻きに着替えただけよ」
「そうかよ」
彼はまだブツブツだからってなんでそんな服なんだよと文句を垂らしている。
確かに白のワンピースでレースがあしらわれていて可愛いネグリジェと思っていたけど
(裸足でいるのがいけなかったのかしら?)
彼は思った以上にウブらしい。
「すまない。俺が守るって言ったのに」
彼は少し落ち込んでいたように見えた。
「いいのよ。私だって同じ状況だったらテューみたいな事しちゃうと思うから。
私、もっとみんなに信用されなきゃなのよ」
「ルリ」
ヴァーミリオンは私の言葉に驚いた。
「だからあなたにお願いがあるの。
デ・シャールについて教えて」
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