2話 懺悔室と来訪者
(黒歴史を作ってしまったわ)
ここはパルデールの隣国ルノワの教会。
ここまで来ると人手が足りていないここではシスター達が暖かく私を出迎えてくれた。
「ねえ、聖女の力があるって本当?」
と好奇心の目に晒される事はあったけどこの地では竜との戦いもなく平和で結構な発展を感じる街もある栄えた国だ。
そればかりか私が元聖女が珍しいのかミサに来る事が他のシスター曰く増えたそうだ。
「ねえ、シスター今日のおやつはなあに?」
「今日はカップケーキよ」
「やったあ♪シスターの作るお菓子楽しみなの」
白と黒の生地で作ったパンダを模したお菓子にミサに来る子供達は満足していてパルデールとは違う充実感がある。
ときにはメロンパンなるものを作ったら子供から大人まで大絶賛された。
「ルリってばどこであんなお菓子を知ったの?」
「やっぱりパルデール国で知ったの?」
同僚や先輩はやたらとパルデールにいた頃の話を聞きたがるが
「ええ、まあ」と誤魔化す。
ここに来て2ヶ月は過ぎた。
(今もパルデールは竜と戦っているのかしら)
心配はするが考え出すと浮かぶのは冷たい目を向けるアレク王子とエライザ様派達や城の人から向けられた態度だ。
確かに自分の判断ミスだ。
小さい竜だって、竜は竜なのだ。
親があんな目に遭って次は自分が撃たれるなら全力で力を使って攻撃しないはずがない。
(あんなところ2度と御免だ)
ミサに来たみんなに手を振り別れ教会には牧師と話す者達がほとんどだ。
あとは
「ルリ、懺悔室に人が足りてないみたい。入って」
シスター長に言われ懺悔室に入る。
(世の中には懺悔したい人がいっぱいなのね)
元聖女でシスターだけど神様なんて程々にしか信じていない。
(とにかく、何を懺悔されてもシスターらしく寄り添って祈りを唱えれば彼らは勝手に許されたと思う
・・・はず!)
だって懺悔室なんて牧師が普通入るとこだから1、2回しか入った事ないのだ。
(なるべく答えやすい人が入って来てくれますように)
そう思い部屋に入り、懺悔を希望する人を待つ。
すると外は何やらざわついた。
ざわつくというより女性のキャア!と言う黄色い声に察しがつく。
(イケメンか権利者が来たのね)
そしてそういった人は牧師に用事があるから私には関係ないと思っていると何やら懺悔室周り、というか私のいるブースの前が騒がしい。
(え!?まさか)
1人だけここに来る権力がある美男子に心当たりを覚える。
(まさか!この国の王子かアレク王子が来たの?)
いや、そんな訳ない。
(私は追放されたんだから今更用なんてないわよ)
そうして構えていると中に騒ぎの原因の男性が入って来て驚いた。
「失礼」
そう言いながら
美しい紅い長い髪をの男の人がそこにいたー気がした。
気がしたというのは懺悔室の窓が格子状で顔までハッキリ見えない為だ。
(アレク王子じゃない)
ほっとして早速
「今日はどうされましたか?」
と彼が話しやすいように声を掛ける。
「実は、私はこれから嘘をつこうと考えているんだ。
神はそれを許してくれるか、それが聞きたくてここに来た」
嘘は罪に当たる。
聖書にはそう書いてある。
しかし、否定から入るのは懺悔しにくい。
とにかく話を聞かねば。
「誰に、どんな理由があってあなた様は嘘をつくなければいけないのでしょう?」
「そうだな・・・、どこから話そうか」
彼はうーんと悩みため息をつく。
「場所を変えたい。シスター、すまないがいいか?」
「え?」
「どうもこの小さい場所では息が詰まる」
分からなくもない。
でも懺悔室はそういうものだ。
(話し方からして位の高そうな人だもの。狭い場所に慣れないのかしら?)
そう思い、懺悔室を出てシスター長に了解を取ると彼は教会の外で話がしたいと言ってきた。
顔を見ると彼は実に綺麗な顔をしていて驚いた。
紅い長い髪を1つに結び、黒ずくめの格好に同じ色のマントに金の紋章に剣を腰に付けている立派な騎士団長といったところか。
パルデールにいた頃は先輩であり同僚として彼らを率いていたけど今は私はこのルノワの教会のシスターだ。
「すまない、シスター連れ出して」
「いえ、それで嘘とはどうしてつかなきゃいけないんです?」
「ある女性を手に入れたくて仕方なくつかなきゃいけない」
「まあ!」
騎士団長の恋バナなんて飯うまだわ!と思うけど口には出さない。
(相手はお姫様とか?身分違いの恋だから自分の能力を盛って話す為に嘘を言うとか!?)
騎士様は何も言わないのに私の妄想はどんどん進む。
「騎士様にはそのお方が必要なんですね。
その為にはご自分を偽らなきゃいけない・・・」
「そう!そうなんだよ!」
急に少年らしくなった彼に驚くが彼はすぐに冷静になり元の話し方に戻る。
「私はある女性を探していた。
そして見つけたんだ。
早くしないと他の奴らに取られるかもしれないと思い悩んだんだ。
シスター、名前は?」
「?ルリと申します」
「シスター・ルリ、あなたはこれを罪とは思うか?」
「いえ!騎士様、気になる方に良いと思われたいのは普通の事ですわ」
「そうか!?」
「はい!」
「よかった・・・。ありがとう」
そう言いながら騎士様は私の手をしっかり両手で握って感謝される。
(!結構力強い・・・。流石騎士様)
「あ、すまない。痛かったよな」
「いえ」
騎士様は力を弱める。
「じゃあ、一緒に祈りましょう」
これで彼の懺悔は終わり、私は教会へ戻れる。
そう思い私は彼も祈りの為、手を組むのかと待っていたが彼は私から両手を離さない。
「騎士様?」
「ヴァーミリオンだよ。ルリ」
「?」
聞き覚えがあったような名前を低い声で言われたかと思い私は彼の顔を見ようとした、が。
ブワッ!!!っと視界が煙いっぱいになったかと思うと私は何かの足先に捕まってる事が分かった。
上を見上げるとデッカい紅い竜が私を連れ去ったのだと理解した。
「は、離してーーー!!!」
教会や町はどんどん小さくなっていく。
(これから一体私はどうなるのよ!!)
そう久しぶりに命の危険とこれからの不安に私は空の上で困惑した。
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