11話 治癒魔法ともう1つの和解
ヴァーミリオンが教会の中まで送ってくれるとそこにはシスター長と知った顔の子どもがいた。
「ヴァー兄ちゃん!」
「テュー、どうしたんだ?」
テューが私がヴァーミリオンの側に私がいるのを見て無言になった。
どうやら私と話すのが気まずいらしい。
シスターがテューの代わりに事情を話す。
「ルリに用があるって待ってのよ」
そう言うとテューは恥ずかしかったのか
「シスター!」
と彼女に怒った。
「待たせてごめんね」
謝ると彼は気を少し許したのか
「来て」
と一言だけ私達に着いてくるように言った。
案内されたのは、彼の自宅だった。
玄関のドアを開けると
「お兄ちゃん?」
と家事の手を止めた彼の妹と思われる小さな女の子が私達を出迎えてくれた。
「母さん、ヴァー兄ちゃんとこの人連れてきた」
通された部屋のベッドで寝ている母親にテューは声を掛けると彼女はテューに身体を支えてもらいながら起き上がろうとする。
「そのままで大丈夫ですよ」
と声を掛けるが彼女はベッドから身体を起こすとお辞儀をし
「この子を庇ってくれて助かりました」
と私に礼を言った。
「いえ、私は何もできませんでした」
もっと強くエライザ様に対抗できたら彼女は怪我なく過ごせたのだ。
頭を深く下げる。
「聖女様」
彼女は私の様子に驚いたようだった。
「頭を上げて下さい」
「でも!」
「大丈夫ですよ。
聖女様はもう1人の聖女に私を見逃してくれるように頼んでるのを見てましたから。
それにテューが無事で本当によかった。
ありがとうございました」
私には彼女になんて言葉を掛けたらいいか分からない。
すると隣にいたテューが私のスカートの裾を握り
「お母さん治る?」
と聞いた。
「治すわ!」
彼に返事をすると私は彼女の服の上から患部に手を当てて呪文を詠唱する。
「すごい!
傷がない!身体も楽だわ!」
彼女は今までと打って変わって顔がぱあっと明るくなった。
「お母さん!」
妹と一緒にテューが彼女に抱きつく姿を見て今までの支えが取れた気がした。
(よかった)
これで街の人達を皆、完治させたのだ。
「お疲れ様」
ヴァーミリオンに労われほっとしていると
「ありがとう」
お姉ちゃんと小さくテューが言うと私は横にいたヴァーミリオンと一緒に笑う。
「なに、笑ってんだよ」
テューのからかわれたと思って発した一言にその場にいた一同がドッと笑った。
「私デ・シャールに残る」
教会までの帰り道、静かにヴァーミリオンに伝える。
がーー、
「何を言ってるんだ」
と彼ははぐらかす。
「私は本気よ。
だから戦いを終わらせる為に出来る事考えましょう!」
彼を真剣に見つめて伝える。
「お前ーー」
彼はしばらく驚いた表情いたが何かを決めた顔をすると私に口を開いた。
「治癒だけがお前の仕事だって言っても聞かないんだよな?」
「ええ」
(よく分かってるじゃない)
頷くと彼は私の前に跪いて、手の甲にそっと口付けをされる。
「!!
急にどうしたの?」
「忠誠の違いだ。
ルリ、リングを貸しただろう」
「ええ」
「それは今からお前の物だ」
「!!」
「もう一度言う。
お願いだ。
ルリ、デ・シャールの聖女になってくれ」
最初に連れ去られて来た時みたいな真っ直ぐな瞳で彼に言われる。
「ええ!」
(絶対にあなたとデ・シャールを護ってみせる!)
「じゃあ手始めに結界強化ね」
そういう訳で私は新たに強力な結界を金山に貼ったのだった。
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