プロローグ
「ルリ、君には失望したよ」
アレク王子は竜との戦いの際に倒れた聖女エライザ嬢を抱き上げ、私に見限ったように言った。
「・・・っ」
(違う!そんなつもりじゃなかった)
でも私のせいでエライザ嬢に怪我をさせてしまったのは事実だ。
竜の国とはしばらく停戦の後に下された私の今後は
聖女剥奪ー。
そしてこのパルデール国からの追放だった。
(仕方ないわよ・・・。元々聖女の力なんてエライザ嬢よりもわずかな物だったんだもの)
今後は隣国のシスター見習いとして慎まやかに、たまに聖なる力を使って人々を癒すー
(最初からそれくらいで私の異世界転生ライフはちょうどいいのよ)
竜と戦う聖女なんてよくやってこれたわと思った矢先に「元敵の彼」は突如やってきたのだ。
そしてその彼は麗しい長い紅髪を鋼鉄の紅竜の姿に変え私を連れて文字通り教会から「飛び出した」のだ!
私にさっきまで憂いの眼差しで見ていた美しい騎士様は、私の手を握ったかと思ったらいきなり目の前には雲が見えて、肌は突風を感じてやっと目を開けたら下には元敵の紅竜と小さく見える教会や街並。
私は元敵の竜に拉致されたのだ!!
「おっ、降ろしてーーー!!!」
「落ちたら死ぬぞ」
なんて下ろす気はないくせに彼は文句を言う。
せっかく黒歴史払拭して聖女らしくシスターライフを送ろうとしてたのに、だ。
(これから一体私はどうなるのよ!!)
私、ルリは飛ぶ事をやめない敵の紅竜の背中で心の声が叫んだ。