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生存者シリース Ⅰ Ⅳ

生存者Ⅰ 苦悩


ピンクの寝袋に包まれたエリスが起き上がろうともがいている。


その頭に銃口を突きつけ引き金を引こうとするのだが決断がつかない。


エリスが1歳のとき妻ジュディを交通事故で亡くし、今日まで2年間2人で暮らしてきた。


大事に大事に育てて来た、可愛い可愛い娘の頭に銃弾を撃ち込むなんて私にはできない。


ゾンビが徘徊する世界になったとき私達は地下室を拡張して造った、核シェルターに身を潜める。


大学を卒業したばかりの頃、日本の原子力発電所が地震の被害を受けて放射能漏れを起こしたニュースを見て、50キロ程離れた所に原子力発電所があるこの町で職を得ていた私は、ジュディと結婚してこの家を購入した時にジュディと相談して万が一の時の為に地下室を拡張して核シェルターを造った。


その核シェルターに親子3人が1〜2年程立て籠もる事ができるだけの食料、水、燃料、生活必需品を備蓄しておいたのだ。


核シェルターに身を潜めて半年、軍の無線通信やラジオ局の情報でゾンビの群れが餌となる人間が立て籠る西部や南部の州を目指して移動している事を知る。


また、この町から300キロ程離れた所にある空軍基地が孤立しながらも健在で、逃げ込んでくる人たちを保護している事も知った。


その空軍基地に逃げ込む事を決断して地下室の出入り口がある車庫のRV車に残っていた物資を詰め込む作業を行っていた時に、目を離したエリスが1人で庭に出てしまったのだ。


家の1階にある出入り口や窓は核シェルターに身を潜める前にバリケードで補強して塞いであったが、キッチンの勝手口にあるゾンビが徘徊する数日前にいなくなったエリスが可愛がっていた猫の為の出入り口だけは、戻ってくる可能性があるため塞がなかった。


エリスはそこから庭に出てしまったらしい。


エリスの助けを求める泣き声と悲鳴でキッチンに駆け付けた時、エリスは猫の出入り口から上半身を家の中に入れてもがいていた。


エリスを抱き上げ猫の出入り口に頭を突っ込んで来たゾンビの頭に銃弾を撃ち込み、冷蔵庫を横倒しにして猫の出入り口を封鎖する。


手当てしようとしたときにはエリスは、エリスはゾンビになっていた。


私に噛みつこうとするエリスを、エリスのお気に入りだったピンクの寝袋で包む。


キッチンの椅子に座り、寝袋の中のエリスが頭を上げる度に銃口を向けるのだが撃てない。


エリスを寝袋に入れたとき明るかった空は暗くなっている。


苦悩する私の肩に手が添えられジュディが私に囁く、「エリスを楽にさせてあげて、エリスが可愛いと思うなら早く永遠の眠りに就かせてあげて」と。


その声に励まされて銃口を向けるのだが、どうしても引き金を引く事ができない。


「誰か ! 誰か! 私の代わりにエリスを永遠の眠りに就かせてあげてくれー」







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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公、愛する娘に引き金をひけないでしょう。 こうなったら娘にかまれて自分もゾンビになり、これからも二人一緒に暮らすのが良いと思いました。
[一言] 拝読させていただきました。 これは……哀しいお話です。
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