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第0話
「ねぇねぇあなたも中村なの?」
高校の入学式の日、彼女から初めてかけられた声はそれだった。
「あ、うん。中村、中村夕美」
「私は中村希!よろしくね」
「よろしく」
「ゆうみかぁ……じゃあゆるみって呼んでいい?」
「ゆるみ……なんでゆるみ?」
「んー、インスピレーション!ってやつ」
笑顔で無邪気に言う彼女にふふっと思わず笑う。
「インスピレーションか。いいよ、好きに呼んで」
「やった。あっ、じゃあゆるみもわたしにあだ名つけてよ」
「私が?いいけど……」
何がいいかと考えこむ私を、彼女はわくわくという擬音が聞こえてきそうな表情で見てくる。
「……のんこ」
「のんこ?」
「そう、のんこ。どうかな?」
「のんこ……いい、なんかかわいい!」
そう喜ぶのんこが、なんだかはしゃぐ子犬みたいに思えた。
(しっぽが見えそう……なんてね)
こうして出会った私ことゆるみと、友達ののんこ。
これはそんな私たちの日々のお話。