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森崎夢叶の18きっぷ  作者: おじぃ
設計

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社会人初日の舞

 22歳の4月、大学を卒業した私は日本総合鉄道に入社。都内のホテルで厳かな入社式が執り行われた後はそのまま貸切バスで駅に行き、専用の新幹線に乗り都心から2百キロ以上離れた緑豊かな地域の研修センターで新入社員研修を受ける。


 美奈ちゃんとは、新幹線で席が隣同士になり知り合った。私が通路側のD席。会話の内容は出身地や出身大学の話題。


 ほかに、鉄道は好きなの? ううん、あんまり詳しくなくて。そうなんだ、私は古い特急の爆音が好きで、それを走らせてる会社がここだったから入った。など。


 私は人見知りだし、周りは男子が多く、女子も学生時代にはいなかった、入社初日なのにバッグにぬいぐるみを装着しているような肝の据わった人がちらほらいて、これまでとは何もかも違うところに来てしまったと、じわりじわり後悔の念が押し寄せていた。


 研修センターでは礼儀作法や業務で使用する端末の操作方法等を一通り学んだり、現場見学やレクリエーションを行った後、ゴールデンウィークの繁忙期を避けて約1ヶ月半で現場配属となる。市街からは隔絶されるため、研修センターは一部社員の間で『刑務所』と呼ばれたりもする。


 刑務所といっても設備はしっかり整えられていて、宿泊室はテレビ、シャワールーム付きの個室。大浴場もある。山中にぽつりと建つビジネスホテルのような環境。


 夕方、研修センターの個室に入ったときは、少し力が抜けた。


 同業には個室すら用意されず、班に分かれて大部屋に詰め込まれる会社もあるという。数週間か数ヶ月間、ずっと大人数の中にいなければならない閉塞感は、私には耐えられない。


 ピリピリと緊張感が支配する研修の日々。覚えるのは社内規定や実務のみではなく、過去の事故や教訓も含まれている。特に多い脱線や火災は昔から現在に至るまで度々発生している。少し違うのは、昔の列車火災は鉄道事業者に起因するもので、現代は放火によるものが多いという点。


 異常時、私は適切な対応ができるだろうか。そんな一抹の不安を抱えながら日々を過ごしていた。


 命を預からずに済む他業種に就職するか、一か八か新卒ブランドを捨ててフリーランスのイラストレーターとして活動を始めれば良かったか、内心での葛藤が続く。

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