ふぁいぶらいぶす!
「でも、つい見ちゃうよね、SNS」
「うん、時間が溶けてメランコリックになって新しい情報を求めて画面更新して時間が溶けて」
「結局、繰り返しちゃうね」
「まるたんやんま様はその辺り、どうされているのでしょうかっ」
「わたしは夕方にお散歩したり、港北ニュータウンの観覧車に一人で乗ったり」
「黄昏飛翔かよ、まるたんやんまだけに」
舞ちゃんのハンドルネーム、まるたんやんまの基になっているマルタンヤンマは朝や夕方の薄暗い時間に活動する『黄昏飛翔種』と呼ばれるトンボの一種。
「ああ、黄昏れたい。何もかも投げ出して、アヘ顔でキュイイインって草原を駆け回りたい……」
「舞ちゃん!?」
瞳のハイライトが消え、無の境地へ魂を引き抜かれそう。闇堕ちだ。舞ちゃんも大変なんだ。神絵師だもんね、それだけ業を背負っているんだね。
「一徹二徹、明けかと思えばトラブルで残業、そろそろ終わる、そんな想いで最終行路で人身当該……。あ、ごめんね、お刺身食べながら言うことじゃなかった」
「大丈夫、大丈夫だよ、わたしももう慣れてるよ。ううう、大変だね、舞ちゃんも大変なんだね」
ヨシヨシヨシ。わたしは前のめりになって舞ちゃんの頭を後ろへ撫でた。
「でもね、そんなとき、夢叶ちゃんの小説を読むとホッとするの」
「へ? わたしの小説で?」
舞ちゃん、読んでくれてるんだ。うれしいよおおお!!
「うん。『Five Lives!』ってさ、アイドルを頑張るお話ではあるんだけど、頑張り過ぎない、ちょっとゆるっとした作風がいいなあって、読んでいて癒されるの。特に精神的に追い込まれてるときにね」
この英字タイトル、商業化にあたってひらがな表記にする案が出ている。
「ああ、ほら、あれだよ。いまの世の中は追い詰められている人が多いから、スポ根みたいに頑張りまくるよりは、ゆるっとしたほうがいいかなって。何かを成し遂げるには頑張らなきゃいけないけど、頑張り過ぎなくてもいいんだよって。もちろんあの野球選手みたいにストイックになってもいいんだろうけど、そうじゃなくてもいい。そういうメッセージを作品全体に散りばめてるんだ」
とはいえ実際は努力しないと成果は出にくい。現実からかけ離れ過ぎず、でも成果は出せるバランスを考えながら物語を組み立てている。




