誰だ創作魂を燃やすには運動が必須だとか言ったのは
雲雀沢さんとの顔合わせ及び取材が終わり、駅まで送って帰宅したわたしは、疲れてベッドに横たわった。
誰だ創作魂を燃やすには運動が必須だとか言ったのは。もう動けないじゃないか。何も考えられん。
でも確かに、事務仕事をしているときはただ疲れるだけだけど、車両を整備して動き回っているときのほうが色んなアイデアが浮かぶ。
仕事中に他のこと考えるな、職務に専念しろって? もちろん車両の仕事中は仕事に専念している。手抜きは命や財産を脅かすから。そして、綺麗に仕上がると気持ちいい。解体して、綺麗に洗浄して、ネジ類や部品を新品に取り替え組み立てて、綺麗に塗装して営業運転に供する。その‘当たり前’が出来ていないと、故障や事故が発生する。整備不良の原因は病的なまでのコストダウンや、急ぎ作業、せっかちな人からの煽り、過労等。健康体かつ余裕のあるスケジュールで作業をしていてミスをする人は少ない。
車両は綺麗に整備できる三十路女、森崎夢叶。
物語という無形物の組み立ては難航している。
翌、日曜日。お昼過ぎに起きたいところだけど8時半前には起きて女児アイドルアニメを見る。ああ、私にもファンサして! 本作新キャラクターの声優さんは元鉄道職員らしい。
鉄道業界には俳優やお笑い芸人など、エンタメ方面へ旅立ち活躍している人がちらほらいる。個性に圧力をかけられる分、飛び出したときのハジケぶりが凄まじいのだろうか。鉄道好きな有名イラストレーターに匹敵するレベルで車両や美少女を精巧に描き上げる人も実はいる。
娯楽を禁止された子どもが独立するとハードなオタクになるように。
朝アニメを見終えて二度寝し、再び起きると14時。会社に加えて雲雀沢さんとのコミュニケーションで気疲れして、普段より2時間遅く起きた。『遅く起きた朝は』なんて番組が昔あったけれど、甘い。昼過ぎ起床がデフォである。
〆切効果というのがあるらしいが、その日わたしは殆ど執筆できず、日付けを跨いでようやくに眠れた。昼はポチを撫でたり9チャンネルで放送している『水曜どうでしょう』の再放送を見ながらポテチを頬張ったり16時半からは6チャンネルのアニメを1時間見るなどして過ごした。