幕間:猫島創の関心
「おーい猫島あ!」
三十路会の翌日、ラチエン通りに構える同級生が営む精肉店に揚げ物を買いに行ったとき。ショーケースに陳列されているメンチやコロッケ、ハムカツなどを見ながら品定めをして、ショーケース越しの正面に立つ同級生の男子、通称カメに注文をしようとしたとき、背後から首に腕を掛けられた。背中に伝わる感触がやわらかく、女性だとわかった。女性で僕にこんなことをするのはまみ子しかいない。いつものことだ。
「よお猫島! きょうも会ったな!」
「こんにちは」
会計をして店の脇にある空きスペースの粘土上に立ち、まみ子といっしょにメンチを頬張っていると店からカメが出てきて、三人で談笑が始まった。それが1時間続き、元々散歩する予定だった海岸のボードウォークを歩いていると、雛壇デッキに座ってたそがれる森崎さんの姿を認めた。
自称見た目だけ高校生という森崎さん。確かに童顔で若くは見えるけれど、よく見るとその眼や口、表情や醸し出すオーラは多くの苦を知った色を帯びている。精神年齢高校生だと思って子ども扱いするような相手ではない。彼女はそこらの30代より、物事をずっと深く、多角的に見ている、人の痛みを察知して寄り添える女性だと、僕は視ている。それは彼女が紡ぐ小説からも見て取れる。
そんな森崎夢叶の世界を、僕はもっと覗いてみたい。