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よく晴れた朝、稲荷神社に文音の姿があった。
それ自体は珍しくはない。
ただ今日は平日。
学校の授業は既に始まっている時間、そんな日にそんな時間に制服を着た少女はベンチに座り木漏れ日の中にいた。
「今日は何を読んでいるのですか?」
「また小難しい本を読んでるのか?」
「御狐様おはようございます。今は『魔性の子』を読んでます。小狐様もおはようございます」
「はい、おはようございます」
「ん、おはよ」
ベンチの真ん中に座っていた文音は右端へと移り、真ん中に小狐様、左端に御狐様が座った。
「今日は小狐様にお渡ししたい物があります」
文音は学校指定の鞄に『魔性の子』をしまい、近くに置いていた紙袋を膝に乗せた。
その紙袋から出てきたのは数冊の本。
「げっ」
それを見た小狐様は顔を顰めた。
「大丈夫ですよ、小狐様。これは小難しくありません。私が幼い頃に読んでいたものです」