最終話 それぞれの愛し方
最終話に漕ぎ着けました。
そんなある日の昼下がり、久しぶりにカサンドラのティールームに4人が集まった。
皆、結婚して子供もいるのに集まれば学園の時のような華やかで賑やかなティータイムに笑顔が溢れている。
「お久しぶりです。カーラ様、お加減はいかがですか?」
シェラが声を掛けると、ふっくらしたお腹に触れながら微笑んだ。
「悪阻も落ち着いて、最近はお腹を蹴っているの」
赤い瞳には、既に母親としての愛情が溢れている。
「……ロード様の溺愛がすごいとクルト様が仰ってました」
「確かに。懐妊が分かってから、一切公務に出させない様にしていらっしゃいますもの」
シェラとマミの会話にアリーは困った顔でカーラを見た。
「すみません。旦那様が子供がまだ小さいから侍女の仕事に就かないようにと……」
「レニならそう言うと思ってたわ」
「旦那様の愛が深い、と言うことでしょうか?」
アリーが照れたように、カーラに笑いかけながら首を傾げる。
「一歩間違えば、ヤンデレですけどね」
マミの言葉に皆、コロコロと笑う。
愛を伴わない独占欲は恐怖だが、愛する人の独占欲は心地良い。
「だってさ」
「1番ヤンデレに近かったくせに」
アリア達の様子を見ていた自分を抱きしめ、キスの雨を降らすユリシリアにユキは呆れた様な目を向けた。
ハナであり、アリアである魂を愛し過ぎて暴走しかけたくせして、あっさり自分に鞍替えしたユリシリアの頭の中が見てみたい。
「今はユキのことしか詰まってないよ」
心を読んだような口振りに、ユキが目を見張ると、雲のような地面に押し倒してきた。
「だって、アリアは欲しい、と思ってたけど、ユキは守りたいって思ったんだ。これって愛だよね」
言い返す事も馬鹿馬鹿しく感じる。
「お子ちゃまだったユリシリアがちょっと成長した、と思っておきます」
「ちょっと成長ね。なら、大人になった私をもっと知ってもらわなければ、ね」
激る様な欲望にギラつくユリシリアの目をまともに見たユキは
「ユリシリアは十分大人。もう、お爺ちゃんなんだから、無理は……」
と、叫んだが、火に油を注いでどおする、と第三者が居たら呆れたに違いない。
「お爺ちゃんねぇ……。まだまだ若い事を証明しないとね」
「ひゃー、ごめんってば。ユリシリアは際限ないから……」
「神の愛には限界なんて無いよ」
ユリシリアは焦るユキに楽しげに笑いかけ、優しいキスをした。
「私の渇いていた心を満たしてくれたユキを、誰よりも愛している」
「私も、心の穴を埋めてくれたユリシリアを愛しているわ」
キスが深くなり、ユキはそっとユリシリアを抱き締めた。
「私はハピエン至上主義です」
と、言ったあの子が望んだ通り、あの子が大切に思う者達は皆、幸せそうに笑っている。
fin
長い話にお付き合い、ありがとうございました。
ヤンデレメリバの話を、と思ってたけどやはり向かない事が分かりました。
次は元気な悪役令嬢が出る
『悪役令嬢になりました。冤罪からの断罪、喜んで』と言う物を書いています。
ある程度書き溜まったらアップしますので、お付き合いいただけたら幸いです。




