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悲劇、再び

ユキ姉さん、ごめん。

「きゃああ、もうやめて、やめてよ」


ユキが悲鳴を上げ、手で顔を隠した。


ついさっき、ユリシリアから呼び出され、最後のイベントを見るつもりだったユキは、ハナであったアリアがセレナに首を絞められ、屋上から落とされそうになるシーンを見て悲鳴を上げ画面を叩いた。


画像がブレ、音も聞き取れないが、屋上から落ちる2人の姿に耐えきれなくて叫んでいた。


「どうして、どうしてハナが死ぬところをまた見なきゃいけないの。私はハナを守る為に生まれたのに……」


泣き叫びうずくまるユキを、ユリシリアがしっかりと抱き締めた。


「いらない。ハナを守れない私なんて、いらない」


嗚咽混じりの声が痛々しい。


「ユキ」

「私なんていらない……」

「いらないなら、私が貰う」


突然の言葉にユキが顔を上げ、ユリシリアを見詰めた。


「同じ痛みを知る、ユキなら私に寄り添ってくれるだろ」


ぎゅっと抱き締める手が熱い。


そう。ユリシリアも愛し子であるハナの死を見た。

守れなかった悔しさ、辛さは一緒だ。


「私が貰う。ユキの痛みも悲しみも全部。いいな」


強い、力の篭る声にユキが弱々しく頷くと、ユリシリアがユキの唇を塞いだ。

貪る様な口付けに意識が白濁していくが、ユキは抵抗しないで溺れる様にユリシリアにしがみ付いた。


全部忘れてしまいたかった。


雲の様な地面に押し倒され、口付けが更に濃厚さを増しても、ユキはユリシリアを拒絶しなかった。


この白い世界で感じられるのは、ユリシリアの肌の感触と燃える様な熱が与える快感だけ。


全部、悲しみも苦しみも全部、この快感で塗り潰して欲しかった。

神様は力が有っても何も出来ないから、余計しんどい。

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