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屋上イベント②

ヒドインの人間性が崩壊しました。

「言っている意味が分かりません。貴女、人間の言葉、話してますか?」


アリアが呆れた様な目で、セレナを見下す様にツィっと顎を上げる。


本来のアリアなら、これ程他人を侮蔑する様な事は口にしないが、やっていい事と悪い事が解らない愚か者に対して、優しい感情など欠片も無い。


「ご自分が、さも優れた存在の様な口振りですが、本当に優れた方は自分が特別だ、などと言いません」


デニスロード達の様に優秀な存在を間近で見ているから、アリアの言葉には力がある。


トラウマを克服し、国や民の為に誠実に生きようとしている彼らをアクセサリーのように扱う、愚か者に対してアリアは怒りを覚えている。


「うるせぇんだよ。アタシは特別で、可愛いからデニス達が取り合いすんの。それが決まりなの」


もはや人の言葉を話しているとは思えない。


「馬鹿なんですね。だからデニスロード様達に疎ましがられるんですよ」


アリアの言葉にも容赦が無くなった。


「そんな訳ない。アンタがアタシの邪魔しなきゃ……。そっか、アンタがバグね。だから……」


セレナの血走った目がギラギラ異様に光り、何かを握り潰そうとしている様な手に魔力を集め始めた。

距離を取ろうとジリジリと手摺りの所まで下がるアリアを更に追い詰め、詰め寄った。


「死ね。アンタが死ねば、ゲームのバグも解消されて、正しい世界になんだから」


鈍い光を放つ魔法球をアリアに向け、投げつけた。


セレナの頭の中では、自分の魔法球の爆発でアリアが吹き飛ぶ様子がありありと見えていた。


だが、ポン、と言う軽い音がして、セレナが投げつけた球が、アリアにぶつかる事なく弾けて消えた。


「な、な、なんでよ。なんで消えんの」

「お粗末な力ですね。魔法攻撃用の防御壁が無くても私に触れないなんて」


一応、アリアは防御壁を作ろう、と思ったが、予想以上に威力の無い魔法球しか出せないセレナへの対応は、軽い盾を使うだけで済んだ。


「馬鹿にすんな。アンタを殺すのに魔法なんかいらねーんだよ」


般若の様な顔でアリアに襲い掛かり、彼女の細い首を絞めた。


「死ね、死ねよ」


渾身の力で首を絞めようとしたせいか、アリアにのし掛かる体勢で、つま先立ちになっていた。


「いい加減にしなさい」


アリアの叱責に驚く暇もなく、足を蹴り上げられ、気が付けば2人とも手摺を超えていた。


「ぎゃああー」


セレナは淑女とは思えない悲鳴を上げ、アリアを突き飛ばし、空中で足掻きながら落ちた。


梃子の原理ですね。

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