所謂、傀儡ですね。
魅了魔法の設定をちょっと嫌な感じにしてみました。
数日後、カーラ達がソワソワしながら待っていると執務室の扉が開き、ロードとクルトが入ってきた。
「ナリス先生、思っていたとおりでした。あの女の力は弱い。薄い紙みたいな物でした」
ロードの言葉にカーラ達はホッとしたが、ナリス先生は首を振る。
「では、両手を使えなくされ、濡れた紙を何枚も被せられたらどうなりますか?」
ナリス先生の言葉にカーラ達は首を傾げたが、アリーとロード達は嫌そうに眉を顰める。
「息が詰まり、死にますね」
クルトの目が嫌悪感で鈍く光った。
「そうです。その人が持つ本来の意志や行動価値観が死に、相手の都合の良い人格を植え付けられます。それが魅了魔法です」
所謂、傀儡になるのだ。
「だから性格も好みも違うキャラが……。そんなの恋でもなんでもないじゃないですか」
マミが泣きそうになりながらクルトを見た。
「だから、そのゲームとやらに出ていない私が殿下の側にいる」
クルトの強い意志を感じ、カーラは頷いた。
「わたくしもゲームとやらに出ているようですが、そんなものに惑わされるつもりはないわ」
アリーが居てくれたから、歪まないでいられた。
両親の愛を信じられ、友人達の優しさも理解できる。
権力の恐ろしさも危うさも。
だからアリーが笑っていられる世界を守りたい、と思う。
「アリーを守る為なら、いくらでも暗躍してみせますわ」
「……複雑だな。そこは、私をと言って欲しいものだが」
ロードの茶々に、カーラが艶然と微笑む。
「同じ思考のデニー様に言われたくありませんわ」
「確かに」
「ひとまず、あの女の、レニへの接触を妨害します」
「アリーへの接触も妨害しないと。あの女、絶対自分の邪魔になるアリーに嫌がらせする筈ですから」
此方は乙女ゲームをネタにした小説が判断の母体になっているが、あながち間違いでは無い。
むしろあの女なら此方を心配した方がいい。
自分だけが幸せになる事しか考えていない、典型的なヒドインなんだから。
話の中心人物のアリーは、読み終わっていない魔術大全集に顔を突っ伏して、何も聞かなかったアピールをしていた。
魅了魔法は、TL読んでて好きじゃなかったんでね。




