呼び方を変えましょう。
仲間らしくなってきました。
「これで3つ潰せました」
ナビ子爵令嬢が興奮しながら、アリアと同じメモ帳を握り締めながら執務室の住人達を見る。
入学して既に2ヶ月が経ち、学院内はそろそろ夏のバカンスの話で盛り上がっている。
ただ、デニスロードの執務室では別の事で非常に盛り上がっていた。
「冬の休みまでに後5つ以上潰せば、コール男爵令嬢の野望は潰えたも同然ですわね」
カサンドラが和かに頷けば、デニスロードも頷く。
「ナビ子爵令嬢……」
レオアニスがナビ子爵令嬢に声をかけようとした時、アリアがうーん、と唸った。
自然と皆の目がアリアに向けられ、話を聞く体勢になると
「やはり、硬いです」
アリアの発言に皆、首を傾げた。
「呼び方が硬くて、これだけ一緒に行動しているのに、仲間という感じでは無いです」
「ですが……」
レオアニスの言いたい事も分かる。
レオアニスは騎士爵を持っているが、この中では唯一の平民出。
おいそれと貴族の令嬢や令息の名を呼ぶ事が出来ない。
「公の場では家名を呼び、私たちだけの時は名を呼べば良い」
デニスロードの言葉にアリアやナビ子爵令嬢の顔も綻んだ。
「そうね。敬称を付けていれば、他の者達も咎めたりしない筈よ」
デニスロード達の次に爵位の高いカサンドラが頷けば、私的の集まりでは許される事だ。
「そうなると、私は婚約者のカサンドラを愛称で呼んだ方が更に良いようだな」
デニスロードも機嫌良く頷き、カサンドラの愛称を考え始めた。
仲良しさん達が、もっと仲良くなります。




