第21話 双剣使いの男『ガスト視点』
【鬼荒らし:一層】
ある男三人組がダンジョンから出ようと走っていた。
職業、双剣使いのガストに杖使いと斧使いの男。
ライカとミセリアを囮にして、オーガから逃げたパーティーである。
「はぁ、はぁ、も、もうここまで来れば、追いついてこれねぇだろ」
ガストは一層まで戻って来れたことで、一安心している様子。
「お、おい、ガスト! 本当にアイツら囮にして大丈夫だったのか? アイツらがここから出てきちまったらどうすんだよ!?」
杖使いの男は不安げにそう口にした。
「た、確かに、もし何か喋られたら、ターヤルに居られなくなるかもしれないぞ、それどころか冒険者の資格剥奪だって有り得る······」
斧使いの男も釣られて顔を青くする。
「何いってんだお前ら、あんな奴らがオーガに勝てるわけねぇだろぉが、死んじまってもダンジョンならそんなこと当たり前だからなぁ、俺達に何かあるなんてことはねぇよ、心配し過ぎだバカ、さっさと帰るぞ」
「そ、それもそうだな······」
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ガスト達は馬車でターヤルに帰り、酒場で他の冒険者達にオーガの話を語っていた。
「ははは! そこで俺が剣でこう! ってやってオーガの野郎を怯ませんだよ!」
ガストは空のジョッキを振り回し、楽しそうに酒を呷る。
「そうそう! そしてガストが怯ませたオーガを俺達二人でドガンッ! と一発決めると!」
杖使いの男も、酔って話を盛りに盛っていた。
そんな話をしていると、近くで聞いていた冒険者が、「でも、結局倒せなかったんだろ?」と口にした。
「いいや、本当だったら殺れてたのによぉ、急に邪魔が入って来てなぁ! もう死ぬ寸前だったんだぜぇ? なのに俺らの獲物を横取りされてよぉ! でもな、俺は器がひれぇからそのオーガを譲ってやったってわけよ、な? 優しいだろぉ?」
ガストはその意地の悪さと酔いによって、ありもしない嘘を連発する。
その後もガストの武勇伝は続き、ガスト達はふらふらと酔っ払いながら宿のベットに入った。
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「あー、頭痛ぇ」
ガストは昨日飲み過ぎたようで、二日酔いになっていた。
「俺もだ、気持ちわりぃし、今日は依頼しなくていいか?」
杖使いの男は頭を抑えてそう口にした。
「そうだな、とりあえず依頼書だけは見に行ってみるか······」
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ガスト達は冒険者ギルドの中へと入る。
「ちっ、騒がしいな、まだ朝だぞ、常識ってのを覚えろよ雑魚共」
ガストは冒険者ギルドが何かで騒がしいことに、苛立ちながらそう呟く。
そんな中、その騒ぎが更に大きくなった。
どうやら騒ぎの中心にいる人物が、何かしたようであった。
「ああっ! うるせぇ! どこの誰だ! んな騒ぐようなことでもしてんのかよ、こんなちっちぇ街で」
ガストはターヤルを小馬鹿にした後、騒ぎの中心へ足を運ぶ。
「大量のゴブリンとゴブリンナイトでも凄えってのに、それに加えてエクサオーガ!? 個体進化したのかよ······F級冒険者のしていいレベルを超えてねえか? お前ら二人共、ギリギリD級に昇格するための功績は揃ってるぜ、今がF級だから······1つ飛ばしで一気にD級冒険者の仲間入りってやつだ、騒ぎにしたくねえんだろ? こんな異例はそうねえが、俺が上に頼んどくから心配すんなよ」
受付のインベルが驚愕しながら、ライカとミセリアの証を昇格させる。
「すまないな、インベル。今後ともこのレベルの魔物を持ってくるつもりだ、一般人ならまだいいが、ギルド長や街の長に目をつけられたら、堪ったもんじゃないのでな」
ライカは頭を掻いて、申し訳なさそうに口にした。
「D級!?」
ガストはライカ達の昇格に目を剥いて驚く。
本来、冒険者の昇格は厳しい基準の元、その昇格をギルドで取り締まっている。
G級からF級までならば、ある程度の魔物を倒せるという証拠さえあれば昇格できるため、F級に上がるのはそう難しくない。
が、F級からE級、D級、C級、B級、A級、そしてS級にまで昇格するには、それ相応の魔物を倒さなければならない。
しかし、ライカ達はF級からの1つ飛ばしでD級にまで昇格した。
ガストはそれに驚いていた。
「んな訳あるかぁ! そんな奴がD級になれるはずかねぇ! また闇市なんだろ? 魔石も、そのエクサオーガも! 俺にも倒せなかったのに······そもそも! てめぇらどうして俺らが囮にして逃げて来たのにここにいやがる! あっ」
ガストは怒りのあまり、ライカ達を囮にしたことをつい口に出してしまった。
杖使いと斧使いの男達も、やってしまったと顔を青くして、額に手を当てて俯く。
その場には酒場で武勇伝を聞いていた冒険者達も数人混じっていた。
ガストはギルド内の全員から白い目で見られる。
「厳しい戦いではあったが、幸い酷い怪我などもなく無事に帰れたから、その話を喋るつもりはなかったのだが、まさか自分で墓穴を掘るとは······」
ライカは苦笑い気味にそう口にする。
「だ、黙れ黙れ黙れ!!! もう一回だ、もう一回決闘しろ! 本気さえ出せば俺がオーガに勝てるってことを証明してやるよ! 次は何か賭けてやろうぜ、そうだな······てめぇはその胸のでけぇ女賭けろ、俺はこの二人を賭けっからよ!」
ガストはなにをとち狂ったのか、ミセリアと自分のパーティーメンバーを賭け事に使おうと言い始めた。
「なあ、揉めてるとこ悪いんだけどよ、ライカ。換金終わったぞ、ゴブリン61体、ゴブリンナイト17体、そしてエクサオーガ1体、合計で白金貨2枚と金貨6枚に小金貨3枚な」
インベルが換金を終えてライカに大金を渡す。
「ああ、すまない。ガスト、お前の勝手な賭け事に俺の大事な仲間を巻き込まないでくれ、決闘はしない、そろそろ行くか、ミセリア」
ライカはそう言って足を動かし始める。
「そうね、ふふ、大事な仲間だものね!」
ミセリアは妙に嬉しげな様子。
「お、おい! 待てよ! ざけんなぁ! クソがぁぁあああ!!!」
ガストは叫びながら、ライカを殴ろうと拳を振るう。
それをインベルがガストの服を掴んで止める。
「クソはお前じゃねえのか? 意図的な魔物の擦り付けは冒険者ギルド規定に反するぜ? ちょっと奥で話そうか」
インベルはガストを引っ張ってギルドの奥に連れて行く。
「えっ、や、やめろ! 離せって、おい! クソっ! んでこんなに力強いんだよ! いやだ、嫌だぁぁあああああ!!!」
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