第2話 初金持ち
中世。学生時代、授業で習った中世のイメージ図と何ら変わりない風景だ。
まあ、そんなことはいいとして、とりあえず現在進行形で無一文な状況をどうにかしなければ。
ほぼ予備知識無しの状態で金銭もない、大まかな説明だけ聞いて即決断して来てしまったからな。
ともかく何をするにも金銭が必要不可欠だ。
······仕方がない、服を売るか。
どこかに服屋がないか辺りを見渡しながら歩く。
数分後。。。
おっ! あったぞ服屋、売って早々に情報収集を始めなければ何も始まらないからな。
早めに見つけられて良かった。
店の扉を開け、店内を見渡す。
一着一着が均等に並べられた立派な服からして、高級店だったようだ。
こんな立派なお店で、適当に買った安物の服なんかが売れるのか心配になってきた。
いや、ここよりも発展した技術で作られた服だ、高値とまでは言わないが安価ではないだろう、多分!
「いらっしゃいませ。ようこそ羊の服屋へ」
店内を見渡していると、店主らしき白髪のいかにも仕事ができそうな爺さんが、姿勢正しくお辞儀をしていた。
「爺さん。服を売りたいのだが、俺の今着ている服を買い取ってもらえないか」
「かしこまりました。それにしても変わった服を着ているのですね、どれ、一度脱いで見定めてみても構わないですか?」
「ああ、俺の見立てでは安価ではないと思うのだが、どうだろうか?」
爺さんは数分間、食い入るように俺の服を凝視し続けている。
普通そんなに掛かるものなのか?
服に時間を掛けるくらいなら、バイトをもう一つ掛け持ちするくらいには、ファッションに無頓着だった俺には分からないな。
そんなことを考えていると、見定めが終わったらしい。
すると目を見開きながらこちらへ迫ってきた。
「こッこの服はどこで手に入れたのですか!」
「す、すまない。もう二度と手に入らないだろう、で、どうだ? 値段の方は」
「あッ申し訳ありません。本当にすごい、この独特な感触に見たことのない素材、ここまで心躍る服は初めてです! いつまでも見ていられる。是非、買わせてください! 値段は、白金貨2枚と小金貨16枚でいかがしょうか!」
まさかここまで驚くとはな。
爺さんの是が非でも買いたいという硬い意志が見て取れる。
それにしても白金貨? この世界の貨幣が分からないな、爺さんに聞いてみるか。
「白金貨? すまない。色々事情があってここら辺の貨幣の知識を知らなくてな、教えて貰えると助かるのだが大丈夫だろうか?」
「他国の方でしたか。分かりました、このお金は世界で最も使われているお金です。なのでほとんどの国で使えると思いますよ。簡単に例を使って説明させてもらいますと、銅貨、銀貨、小金貨、金貨、白金貨の五種類があり、銅貨1枚でパンが一個買えます。銀貨は銅貨10枚分なので、パンが十個買えます。小金貨は銀貨10枚分、金貨は小金貨10枚分、そして白金貨は金貨10枚分です。基本的に高くても小金貨で払うことが多いのですが、流石に小金貨を200枚持つのは大変でしょう、ですので白金貨2枚にしておきましたので小金貨を使い切ったらまたお越しください、何時でも交換しにいらっして構いませんよ」
そう言いながら、爺さんは小袋に入れた金銭を渡す。
ふむ、基本的に日本と感覚は変わらなそうだな。
銅貨が百円、銀貨が千円、小金貨が1万円、金貨が10万円、白金貨が100万円か。
「ん?」
100万円? 白金貨が2枚······200万円?!
あまりにも高すぎじゃないか?!
「本当にそんな高値で売ってもらっていいのか?! 小金貨2枚の間違いじゃないか?」
俺は前の世界では考えられないほどの大金に驚愕する。
「何をおっしゃいますか! こんなにも素晴らしい買い物はありません! 当店の家宝として、でかでかと飾らさせていただきます!」
大げさなほど、安物の服を褒める爺さん。
「そ、そうか、まあ高値で買ってくれるのなら願ったり叶ったりだ」
ま、まさか2千円で買った服が200万円になるとは。
もっと着込んでいればよかった······。
まあ、過ぎたことは仕方がない。
気を取り直してこれから着る服を買わないといけないな。
ずっとパンツと下着だけでは、不審者と思われてしまう。
「それと動きやすい服を何着か買いたいのだが、この店には高い服しかなさそうだな、どこかオススメの服屋はないか?」
「一応、一般の方にも買ってもらうために、飾ってはないのですが何着かありますよ」
「それは助かる。とりあえず五日分の服をお願いする 小金貨二枚で足りるか?」
大体の値段を予想し、袋から取り出す。
「お金は結構です。こんな素晴らしい買い物をさせてもらったのですから、十日分の服、全て無料で差し上げます」
「十日分も貰っていいのか?」
「勿論です! 逆にもっと差し上げたいくらいですよ! それとオマケとして麻袋もお付けいたします」
「そうか。そういう事ならありがたい、遠慮なく貰っておこう」
貰った服の一着を身に着け、残りの九着と、持っているだけで顔が強張ってしまうほどの大金を腰に巻き付け、店から出る。
「次にまた珍しい服を手に入れましたら、羊の服屋へご来店お待ちしております」
「ああ、その時はよろしく頼む」
そっと扉を閉める。
完全にあの爺さんに目を付けれてしまったな。
まあ、世情にも詳しそうだったし、次に機会があったら色々聞いてみるのもいいだろう。
さてと、服もお金も手に入れた、あとは宿とどこか働ける所を見つけなければな。
【懇願】
下にあるポイント評価から、一人10ptまで応援することができます!
下の『☆☆☆☆☆』より評価ポイントを入れていただければ幸いです!