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異世界希望者イセカイヘ  作者: 花伝
17/21

第17話 【牢獄の主】


 【鬼荒らし:最下層】

 俺とミセリアは一旦休憩を挟んで最下層である五層へと下り、最奥部を目指して探索を進めていた。


 「ふぅ、これで倒したゴブリンの合計は61体、ゴブリンナイトは17体か、全て換金すると······金貨5枚と小金貨8枚くらいにはなるだろう、これだけあれば装備を新調していいかもしれないな」


 円換算にすると、58万円か。

 一気に強い装備に変えることはできないが、ワンランク上の装備なら二人同時に揃えられるだろう。


 普通の服ならばもっといい物が買えるが、冒険者の着る装備には補助魔法が掛かっており、装備の素材もそうだが、装備に付いている補助魔法によっても値段が上がり下がりする。

 例えば、物理攻撃値+5の鉄の短剣を買うのなら、金貨5枚以上は最低でも必要だろうな。

 俺達が今揃えられる装備は、何らかの補正+1〜2が乗った装備ぐらいか。


 「そんなに!? 冒険者って稼げるのね······酒場で働いてた時なんて、一日頑張っても小金貨1枚にもならなかったのに······」


 ミセリアは目を皿のようにしてそう口にする。


 「いつ死ぬかもわからない仕事だからな、必然的に他の仕事よりも稼げるだろう。だが、流石にFランクでここまで稼げるような仕事ではないはずなのだがな······」


 そう、この数の魔物をFランク冒険者二人が一日で倒せるはずかない。

 全ては俺とミセリアの称号、《王の再来》と《勤勉の魔女》からなる恩恵のお陰である。

 この称号がなんなのかは分からないが、明らかに異質な称号であることは確定している。


 「そしてここが、このダンジョン【鬼荒らし】の最奥部、【牢獄の主】のいる部屋か」


 【牢獄の主】

 ダンジョンの最奥部に存在する魔物、ゲームなどでお馴染みのボスである。一度入ると出られないことから、牢獄に閉じ込められた主、略して【牢獄の主】と呼ばれている。


 ダンジョンの怖い所は、この【牢獄の主】のいる部屋であり、主を倒さなれば出られないらしく、強制的に戦いを強いられるそうだ。


 「大きい扉ね、この中に【牢獄の主】がいるんでしょ?」


 「ああ、今の俺達では到底太刀打ちのできない魔物がいる、が、扉を開けて中に入らなければ、【牢獄の主】を見ることならできるぞ」


 俺はそう言って、眼前にそびえ立つ巨大な扉を開く。


 「えぇ······本当に大丈夫なの? それ」


 「心配ない、中にさえ入らなければ襲われることはない」


 俺とミセリアは恐る恐る部屋の中を観察する。


 「ぁあああぁぁ!!! やべぇぞどうすんだよ!!!」

 「ころ、殺される!!! ガストォ!!!」


 ガストの取り巻き二人がガストに助けを求める。


 「おおお、俺にどうしろって言うんだよぉ!!!」


 「ガスト!?」

 

 俺達が部屋の中を除くと、【牢獄の主】であるオーガに殺される寸前のガスト率いる三人組がそこにはいた。


 「どうしてお前達が【鬼荒らし】にいるんだ!?」


 どこからか情報を入手して来たのか、イェクルと俺達の会話を聞いていたのか。

 理由は分からないが、ガスト達に相手できるダンジョンではないことは確かだ。


 「て、てめぇ最下位職業のゴミクズ······」


 俺を見るや否や、私怨の入った眼差しを向けるガスト。


 「扉が開いた! おいガスト! 早く出るぞ!」


 杖を持った男がガストを必死に引っ張り出す。


 「た、助かったぁ」


 斧を持った男はやっと部屋から出られ、安堵している様子。


 ちなみにミセリアは俺の背中に隠れて、終始ガスト達を睨みつけている。

 気にしていないように見えたが、ギルドでのガスト達の会話を聞いて多少は苛立っていたようだ。


 「それで、どうしてお前達がここにいるんだ?」


 「はっ、最下位職業のカスなんかに言う訳ねぇだろ」


 ガストは俺に負けたことをまだ根に持っている様子。


 この手の輩は決闘程度では負けを認めてくれないから厄介だな。

 まあ、それはいいとして。

 ここからこの三人を連れてどう抜け出すか······。


 「まあいい、とりあえずこのダンジョンから抜け出そう」


 俺は嘆息混じりにそう口にした後、扉からオーガが近づいて来ていることに気づく。


 「ガスト! そこから離れろ!」


 俺がそう叫んだ瞬間、オーガが右手に持っていた棍棒をガスト達に振り下ろす。


 「〔ウィンドインパクト〕!」


 俺は〔ウィンドインパクト〕を放ってオーガの棍棒の軌道をずらし、間一髪でオーガの一撃を防いだ。


 なんとかギリギリで間に合ったが。

 これはまずいことになったぞ······。


 【牢獄の主】は一度敵と認識してしまうと、その敵が死ぬまで追いかけ続けるとイェクルに聞いた。

 と、言うことは······。

 このオーガを倒さない限り、ガスト達も含めて全員が全滅してしまうだろう。


 「マジかよ······。は、早く逃げるぞお前ら!」


 ガストは杖の男と斧の男を起こす。


 「待てガスト! 今逃げるのは得策ではない!」


 「うるせぇ! 逃げねぇーならてめぇはそのオーガと一緒に戯れてろ!」


 ガストはそう言うと、俺とミセリアを蹴飛ばして走り去る。


 「なっ!」


 ガストの奴、俺とミセリアを囮に······。

 しかもここは、入ってしまった······。

 【牢獄の主】の部屋の中に。


 【牢獄の主】は部屋にいる敵を真っ先に攻撃する習性を持つ。

 これが何を意味するのか。

 そう、攻撃する優先順位が変わってしまったのだ。

 ガスト達から俺とミセリアに······。


 「いたっ!」


 ミセリアは尻もちをつく。

 オーガはミセリアへと向けて棍棒を振り掛かる。


 この距離では軌道をずらしても無意味だ。

 〔挑発〕も瀕死かピンチ時の場合には効かない!


 「ミセリア! 〔ウィンドウォール〕!」


 ミセリアとオーガの間に風の壁が展開される。

 展開した風の壁はオーガの一撃に耐えきれずに破られ、オーガの一撃がミセリアへと迫る。


 「〔ファイアシールド〕!」


 ミセリアは咄嗟の判断で〔ファイアシールド〕を展開する。


 いい判断だ!

 が、〔ファイアシールド〕であの一撃を防げるか······。


 強烈なオーガの一撃は〔ファイアシールド〕を破ってミセリアへと襲いかかる。

 が、咄嗟に放った〔ウィンドウォール〕と〔ファイアシールド〕によって威力が弱まり、ミセリアの魔女帽子を(かす)る程度で防ぐことに成功した。


 「無事か!?」


 俺はすぐさまミセリアに駆け寄る。


 「な、なんとかね」


 あの窮地を脱するとは。


 「流石だミセリア」


 「と、どうってことないわよ! それよりも、どうやってあの怪物から逃げるの? 走る?」


 ミセリアは立ち上がりながら、そう口にする。


 「いや、入る」


 俺はミセリアを抱え、素早くオーガの横を通って部屋の中へと入る。


 「え!? ちょっとちょっと! 扉閉まっちゃうわよ!? 死んじゃうわよ!?」


 ミセリアは俺の意味不明な行動に混乱している様子。

 広い部屋の中央まで移動する。


 「今から奴と戦うぞ、ミセリア」


 俺はミセリアを下ろしてそう口にする。


 「で、でも到底太刀打ちできないって言ってたのに、どうして!?」


 「確かにそうは言ったが、勝つ算段が無いとは言っていないぞ?」


 俺は短剣と小盾を構える。

 オーガがゆっくりとこちらに近づく。

 逃げられない獲物に対して油断している様子。


 「はぁ······それならまあいいわ、早く説明しないと来ちゃうわよ?」


 ミセリアは大きく溜め息をついて、そう口にする。


 「すまない、戦うしか生き残れる方法がなくてな」


 走って逃げた場合、前から現れたゴブリンに足止めされて追いつかれる。

 あの道で戦うにしても、5m程度の幅ではいずれ追い込まれるだろう。

 現状、最善はこの部屋の中で戦うことなのだ。


 俺はミセリアへとオーガを倒す算段を説明する。


 「ふーん、私はあんまりすることないのね」 


 「いや、ミセリアがいるからこそ、この作戦が生きるのだ」


 オーガ······推定E級の魔物。

 とてもF級冒険者の勝てる魔物ではない。

 が、俺とミセリアならば勝てるという確信がある。


 「どうせならここで経験値大量ゲットと行こうか」




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