第16話 ゴブリンナイト
俺は即座に〈魔法袋〉から〈鑑定紙〉を取り出す。
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個体名ゴブリンナイト︰Lv3
HP︰32/32 MP︰5/5
‹能力値›
物理攻撃値……24
物理防御値……28
魔法攻撃値……5
魔法防御値……21
移動速度値……16
‹スキル›
〔連携〕
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ふむ、見た目はゴブリンが鎧を纏っただけのように見えるな。
能力値はアルグマラージより少し劣っているようだが。
俺達の前にいるゴブリンナイトの数は六体。
それに加え、ゴブリンは八体。
とりあえずはゴブリンを処理しておきたい。
「ミセリア、先にゴブリンを片付けるぞ!」
「了解したわ!」
二人同時に魔法を構築する。
よし、構築完了、ミセリアは······大丈夫そうだ。
「行くぞミセリア! 〔毒煙〕!」
〔毒煙〕がゴブリン達へと勢いよく迫ってゆく、次第にゴブリン達は苦しみ初め、体をガタガタと震えさせながらその場に倒れる。
「やるわよー! 〔ファイアストーム〕!」
ミセリアの放った火の竜巻がゴブリン達に襲いかかる。
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「ふぅー、もうMPカラッカラ······。ゴブリンナイトって言っても、普通のゴブリンと全然変わらなかったわね」
ミセリアは強張っていた肩の力を抜く。
俺は〈魔法袋〉から〈MP回復薬6/1〉を取り出してミセリアに投げる。
「ミセリア、今すぐにこれを飲め、まだ終わっていないぞ」
ミセリアは、投げた〈MP回復薬〉を取る。
「え? で、でもゴブリンもゴブリンナイトも倒れてるわよ?」
ミセリアがそう口にした後、ゴブリンナイト達が次々に立ち上がる。
「どうして!? 魔法で倒れてたはずなのに!?」
ミセリアは目を見開らいて驚く。
ゴブリン同様、ゴブリンナイトも倒れていたことで、安心していたようだ。
「ある程度、魔法防御値のある魔物には効き目が薄いんだ、ゴブリンナイトはゴブリンのHP、物理防御値、魔法防御値が大幅に強化された魔物、他にもシーフ、アーチャー、ウィザードなどもいるが、その中でも一番、俺達と相性の悪い相手だ······」
「一番って······何か作戦はあるの?」
ミセリアはそう問いかける。
「ある、今回はお前に少し頑張ってもらうことになるだろうが、いいか? 嫌ならば今すぐ引き返すが」
「わ、私が頑張れば勝てるのよね?」
「ああ」
「わかったわ、私に任せてちょうだい!」
ミセリアは拳を握り、ガッツポーズを取ってそう口にした。
「よし、じゃあ簡単に説明するぞ、まず奴らの持っているスキル〔連携〕、あれは知能の低い魔物でも無意識にある程度の連携が取れてしまうスキルだ、それを崩さなければならないのだが、俺一人で六体を捌き切ることは難しい、そこでミセリアには〔ファイアシールド〕で、最低でも二体は引き付けておいてもらいたいのだが······」
〔ファイアシールド:5〕
球状でできた火のバリアを展開する魔法。
展開し続けるにはMPを消費しなければならない。
この作戦は俺の技量で勝負が決まると言っても過言ではない。
何故なら、戦闘が長引けばMP切れでミセリアが殺されてしまうし、調整をミスってミセリアの方に三体行ってしまうと、〔ファイアシールド〕が一瞬で割られて殺されてしまうだろう。
故に、少しでも手元が狂えば全滅もありえる。
もっと確実で安全な方法もあったのだが、ミセリアのMPに余裕がない今、その方法を実行するには時間が掛かりすぎる······。
「ねぇ、引き付けるのはいいんだけど、どうやって私に引き寄せるのよ?」
「そこは俺に任せてくれ、ミセリアは奴らが自分に迫ってきたら〔ファイアシールド〕で身を守っていてくれ」
全てのゴブリンナイト達が立ち上がり、〔連携〕を発動して襲いかかりに来る。
二体づつの三組に別れたか、好都合だ。
「来るぞ!」
列になって迫るゴブリンナイト。
一組目のゴブリンナイト達が、持っている剣で同時に刺突を繰り出す。
俺は軽く後方に飛び、事前に仕掛けておいた〔ウィンドカッター〕を解き放つ。
放った〔ウィンドカッター〕によって、一組目のゴブリンナイトの両足を切断することに成功した。
「よし! まずは一組目!」
罠が上手く決まり、軽くガッツポーズをしていると、左右から二組目のゴブリンナイト達が剣を振り下ろしに掛かっていた。
流石に二、三組は〔ウィンドカッター〕を回避していたようだ。
左右から迫るゴブリンナイト達を無視し、一気に前へと駆ける。
「〔ウィンドウォール〕!」
すかさず俺と二組目との間に〔ウィンドウォール〕を発動させる。
これによって、二組目はミセリアの方へ行くしかなくなった。
「頼んだぞミセリア!」
「早く終わらせなさいよ! 〔ファイアシールド〕!」
球状の火のバリアがミセリアを包み込む。
〔ファイアシールド〕を発動したミセリアへ向って、ゴブリンナイト達が襲い掛かる。
MPを回復したミセリアだとしても、〔ファイアシールド〕で防げる時間はざっと30秒程度······。
速攻で仕留める!
三組目のゴブリンナイト達が、俺へと斬り掛かる。
こんな場面だが、使ってみるか。
「〔投擲〕!」
〔投擲:1〕
狙った対象に向って物を投げるスキル。
投げた物は任意で手元に引き寄せられる。
俺は大きく後ろに下り、短剣と小盾をわざと当たらないよう、ゴブリンナイト達の後方へ〔投擲〕した。
投げた短剣と小盾を、ゴブリンナイト達の後頭部に向けて引き寄せる。
重心が前へと傾いていた結果、後頭部に攻撃を受け、大きくよろけるゴブリンナイト。
そのまま引き寄せた短剣で、三組目と足を切断した一組に突き刺す。
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経験値【42】を獲得しました。
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よし、20秒くらいで倒せたな。
ミセリアはどうなっている?
ミセリアを襲っているゴブリンナイト達は、熱い火のバリアをガンガンと叩いていた。
早く行かないと割れてしまうな。
発動し続けていた〔ウィンドウォール〕を解いて近づく。
「来い! ゴブリンナイト!」
俺はそう言って〔挑発〕を発動しながら、小盾を短剣の柄頭で叩き、カンッ! カンッ! と音を鳴らす。
〔挑発:MP2〕
対象を挑発して自分へと引き寄せるスキル。
明らかに弱っている味方がいる場合は効果が薄くなる。
〔挑発〕によって、俺に標的を変えるゴブリンナイト達。
俺は大きく前に詰め寄って構える。
ゴブリンナイト達は同時に俺へと斬り掛かる。
若干だが、左の方の振り下ろしが早いことに気づく。
俺は左のゴブリンナイトへ寄って、小盾で剣を弾き、ミセリアのいる方向へ向う。
これでミセリアにゴブリンナイトが襲い掛かる可能性が、限りなく低くなった。
「よく耐えてくれたな」
「こ、このくらいどうってこと······ないわよ」
ミセリアは息が切れている様子。
MPが切れかけているようだ。
「ミセリア、大丈夫なのならば、何か魔法は放てるか?」
「〔ファイアアロー〕なら撃てるわよ」
「よし、なら隙ができたらどちらか片方に撃ってくれ」
カンッ! カンッ! と短剣の柄頭で小盾を叩き、〔挑発〕を発動する。
迫り来るゴブリンナイト。
それを往なし続ける。
次第にゴブリンナイト達が苛つき出し、連携にムラが出てくる。
右のゴブリンナイトが痺れを切らし、俺に向って突進を繰り出す。
「今だ!」
「〔ファイアアロー〕!」
片方のゴブリンナイトが痺れを切らして突進した結果、もう片方のゴブリンナイトと位置が被り、二体ともミセリアの〔ファイアアロー〕で頭を撃ち抜かれた。
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経験値【19】を獲得しました。
経験値【23】を獲得しました。
個体名ライカの現在のレベルの更新を始めます。
個体名ライカのレベルをLv6からLv7に更新。
個体名ライカの現在のステータスの更新を始めます。
以上 個体名ライカのステータス更新を終了します。
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丁度、【Lv7】に上がったようだ。
五層まであるというのにMPの消耗が激しいな······。
どこかで休憩できる場所を探さなければ。
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