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異世界希望者イセカイヘ  作者: 花伝
13/21

第13話 デバフスキルの実力


 「三層から上がってきたのか!?」


 俺は袋から〈鑑定紙〉を取り出す。


 ――――――――――――――――――――

 個体名アルグマラージ︰Lv1

 HP︰32/32 MP︰2/2


 ‹能力値›

 物理攻撃値……40

 物理防御値……26

 魔法攻撃値……8

 魔法防御値……10

 移動速度値……15


 ‹スキル›

 〔予測〕〔加速〕

 ――――――――――――――――――――


 さっきまでの魔物と比べるとかなり強いな。

 が、やはり特異個体は尋常ではないと再確認させられる。

 新人育成で戦った特異個体アルグマラージは、コイツの倍は能力値が高かった。

 物理攻撃値に至っては100を超えていた。

 それに加えて高い知能と〔地形操作〕もあり、本当に運良く勝てた戦いだった。


 「荷物もあるし、戦うしかないわね······」


 ミセリアは素材の入れた麻袋を端に置き、そう口にした。


 アルグマラージには〔加速〕のスキルがあり、それで低い移動速度値を補っている。

 できれば戦いたくないが、仕方がない。


 「ミセリアは攻撃しなくて大丈夫だ。試したいことがある」


 俺は袋から〈MP回復薬6/1〉を取り出して飲む。


 〈MP回復薬〉

 魔素を含んだ液体、飲めばMPを回復できるが、回復した割合によって目眩や吐き気を引き起こす。


 少し目眩はするが、これでMPは全回復。

 どうせなら現在できる最大で試しておきたい。


 アルグマラージが体を丸めて〔加速〕を使い高速で転がる。

 俺は両手をアルグマラージへ向ける。


 「【魔法防御減少魔法:消費MP20】」



 個体名アルグマラージ︰Lv1

 ‹能力値›

 魔法防御値……0



 これで奴の魔法防御値は0になった。

 魔物にはダメージの入り難い部位と入り易い部位が多々ある。

 アルグマラージの場合、腹部以外にある硬い甲羅が入り難い部位である。

 それのお陰で低い魔法防御値でも耐えられる。

 が、0ならばどうだろうか。


 俺は右手をアルグマラージへ向ける。


 「〔ウィンドカッター〕」


 放たれた魔法は、〔加速〕で勢いの増したアルグマラージを一刀両断した。


 ふむ、防御値が0になると生身の状態で受けることになるのか。

 これはいい実験になった。

 物理か魔法防御値のどちらかが低い魔物に使えば、絶大的に効果を発揮するだろう。


 ――――――――――――――――――――

 経験値【70】を獲得しました。


 個体名ライカの現在のレベルの更新を始めます。


 個体名ライカのレベルをLv4からLv5に更新。


 個体名ライカの現在のステータスの更新を始めます。


 個体名ライカの現在のスキルの更新を始めます。


 獲得スキル︰『移動速度減少魔法』


 以上 個体名ライカのステータス更新を終了します。

 ――――――――――――――――――――


 お、レベルが上がったな、それに新スキルも増えた。

 ステータスやらなんやらの細かい確認は後にして、先に素材を剥ぎ取るか。


 「えええぇぇ!!! なにそれ!? え!? スパッ、て切れたわよ! いま!」


 ミセリアが驚愕しながら、綺麗に真っ二つになったアルグマラージを指差す。


 驚くのも無理はない、アルグマラージはFランクモンスターの中でも、防御値の高い魔物としてよく知られているからな。

 ちなみに冒険者同様、魔物にもランクがあり、基準はFランクの魔物はFランク冒険者四人のパーティーで、余裕を持って倒せるくらいで区別されている。


 「デバッファーの職業スキル【魔法防御減少魔法】でアルグマラージの魔法防御値を0にしたんだ」


 「だ、だからあんなにスパッ、って切れたのね、なら次からそれで戦えば楽勝じゃない!」


 ミセリアはきらきらとした目で俺を見る。


 「いや、そうもいかなくてな、能力値を1減らすだけでMPを2も消費するのでな、燃費が悪くてそうポンポンと使えないのだ。それならばMP消費の同じ〔ウィンドインパクト〕を使ったほうが、圧倒的に戦いを有利にできるだろう」


 「ふーん、でも凄い魔法ね!」


 ミセリアは笑顔でそう口にした。


 「ああ、強い魔法なことには変わりない。よしっと、そろそろ戻るか」



  ↓↓↓



 ターヤルに戻り、冒険者ギルドに入る。

 ダンジョンの帰りでは、魔物に遭遇せず無事帰還できた。

 受付へ向う。




 うーん、視線が気になる······。

 理由は明白、ミセリアと二人でいるからだろう。

 どうしてかミセリアは【イミテーション】を使っていない。


 男三人組のパーティーの会話が聞こえる。


 「おい見ろよあれ、娼婦でもあんなデケェ女いねぇぞ」


 背中に二本の剣を携えた男がそう口にする。


 「キヒッ、あの腰もたまんねぇ、どこのお偉いさんだぁ?」


 もう一人は杖を持った男。

 舌舐めずりをしながらミセリアを見ている。


 「よく見ろよガスト、女の横にいる男、盗賊んとこで毎回受付してる阿呆じゃないか?」


 最後は斧を持った男が俺を指差す。

 双剣の男はガストという名らしい。

 おそらくガストがリーダーなのだろう。


 「は? んでそんな阿呆があんなデケェ女連れてんだぁ?」


 ガストがキレ気味でそう口にする。


 「落ち着けって、大方高い奴隷商にでも行って大金はたいて買ったんだろぉよ」


 杖の男がガストを抑えてそう口にした。


 「はっ! ちげぇねぇ! 弱そうなガキだしなぁ、脅しゃあ貸してくれんじゃなぇか?」


 ミセリアは気にも留めずに、男三人組の下品な揶揄(やゆ)を聞き流している。


 ミセリアの言っていた"絡まれる"とはこのことか······。

 確かに面倒だ。


 「魔法はいいのか? ミセリア」


 「もう冒険者なんだしこのくらい大丈夫よ!」


 ミセリアは強気にそう口にした。

 受付に向う。


 「ダンジョンに行ってきた、換金を頼む」


 「お、ライカか。おは、よく来たな」


 体を伸ばしながらそう言うインベル。


 まさか寝てたのか?

 ま、まあいいか。


 「色々あってパーティーを作ったのだ」


 「ほー、早いじゃねえか、てことはそっちの嬢ちゃんがそうか?」


 インベルはミセリアを見てそう口にする。


 「こんにちは」


 素っ気ない······。

 初対面には全員これなのかミセリア。


 「あいよ、こんにちは」


 やはり接客の仕事をしている人間は慣れているな。


 「まあ、パーティーはいいとして、これが素材だ」


 俺は素材いっぱいの袋を机の上に乗せる。

 周りの冒険者達がちらちらと視線を向け始める。


 「こ、これをG級冒険者二人で狩ったのか······?」


 インベルが唖然と口を開けそう口にした。


 「そうだが、どうした?」


 「どうしたもこうしたもねえよ。文句なしにFランクに昇格できるじゃねえか、証見せろ、今すぐ手続きしてやっから」


 インベルが嘆息混じりにそう口にする。

 そのインベルの言葉に反応したのか、先程の男達がこちらへ向かって来る。


 「こんなヒョロヒョロがF級? ざけんな、んな奴がそんなに狩れるわけねぇだろ、どーせ闇市にでも行って買ったんだろ? なぁ、そうだろ?」


 ガストはそう言って俺を睨む。


 困ったな······。

 面倒事にはしたくないのだが。


 「これは全て私達で倒した魔物よ、その証拠に魔石も······ほら」


 ミセリアは袋から魔石を手に取って見せる。

 魔石を見てガストは「うぐっ」と声を出す。

 まさかミセリアが行くとは思わなかった、先程の会話に少しは気が立っていたようだ。


 素材もそうだが、魔石にも鮮度がある。

 特に魔石の鮮度は見分けが簡単で、淡く輝いていればいるほど鮮度が高く、それがどんどん濁っていけば鮮度が低いと言われている。

 なので高難易度の魔石から取れた魔石は、オークションなどで早めに出されて保管されるそうだ。


 「もうわかったでしょ、邪魔だから早く行ってちょうだい」


 ミセリアは前に出てそう言った、その瞬間。


 「うるせぇ!!!」


 (しゃく)に障ったのか、ガストは手の甲でミセリアを叩こうとする。

 それを俺はガストの腕を掴んで止める。


 「危ないぞミセリア」


 「え、ええ、ありがと」


 顔を赤面させるミセリア。


 「あ? 離せガキ」


 相当イラついているのか、額に血管が浮き出ている。


 「あまり面倒なことはしたくないのだが、どうすればお前は納得できるのだ?」


 できるだけ温厚に対応しておこう、もしかしたらこのまま帰ってくれるかもしれないな。


 「お、それなら決闘がいいんじゃねえか?」


 インベルは閃いたような表情をした後、そう口にした。


 イ、インベル······。

 この手の輩は決闘なんて言われたら······。


 「はっ、いいぜやってやるよ、本物のF級冒険者の実力ってやつを分からせてやるぜ!」


 案の定、インベルの提案に乗ってきてしまった。


 決闘なんて一番注目されるじゃないか······。

 まあ、くよくよしていてもってやつだな、仕方ない。


 「それで納得してくれるのなら俺も構わない」


 「よっしゃ決まりだ! 面白くなってきたなってきた」


 インベルが嬉しそうにそう言って立ち上がる。


 「んじゃ、ギルド所有の訓練所でいいよな?」


 ん? もしかして仕事放棄しようとしてないか?


 「いいぜ」


 ガストが了承する。


 急に始まってしまったが大丈夫だろうか?




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