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異世界希望者イセカイヘ  作者: 花伝
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第1話 異世界へ


 軽く現在の状況を説明しよう。


 俺の名前は佐藤来風(さとうらいか)、複数のバイトを掛け持ちしながら退屈な毎日を過ごしていた32歳フリーターだ。


 俺は今、異世界にあるターヤルと言う街に転生されてここにいる。

 何故、異世界にいるのかと言うと、今から少し前の事を話さなければならない。


―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――


 30分前。。。


 「貴方は今から異世界に行ってもらいます」 


 「はい?」


 「異世界に行ってもらいます」


 「············」


 突然、意味不明なことを言ってきたのは、天女の様な服を身に纏った女。


 何を言っているのだろうか、異世界? そういえば本屋のバイトでよく見掛けるな。

 随分と不思議な夢だ。

 さっさと起きてバイトに行かなけれならないというのに。


 「もう行かなくても大丈夫ですよ」


 行かなくてもいいなら最高なのだがな。

 生憎、バイトを掛け持ちしなければいけないほど生活がカツカツなんでな、俺は。


 「······ん?」


 今あの女にバイトの話をしただろうか?

 

 「聞こえていますよ心の声、女神なので」

 

 自分に起こっている事態に察して、強く頬をつねる。


 ギュッ······痛い。

 これは、あんまり考えたくはないが夢ではないらしい。


 戸惑いつつも自分の現状を確認するため、女神に質問する。


 「俺は、死んだのか?」


 最初に気になったのは、自分の生死の確認だった。


 「はい。死にました」


 「······そうか」


 自分が死んだことはあまり悲しくない。

 ただ、何もせずバイト漬けの14年間。

 なんの興味もなくやる事もなく、なにもやらずに死んだことによる虚無感。

 それが辛かった、自分の惨めな人生に嫌気が差してくる、涙は出ない、昔から静かな子供で泣いたことがなかったと云う。


 まあ、そんなことを考えていても仕方ないか、とりあえずは状況確認だ。


 「これから俺はどうなるのだ? 説明を頼む」


 女神は俺の心の声を聞いたのか、同情したような表情を浮かべ、説明を始めた。


 「分かりました。それでは貴方の行く異世界の説明をさせてもらいます。まず、その世界は剣と魔法が発展し、貴方の暮らしていた世界の動物とは違う凶暴な魔物の蔓延る世界。そして現在、その異世界では魔王による侵略が着々と進められている非常に危険な状態になっています、その為に召喚されたのが」


 「俺なのか?」


 察しがつき、食い気味に答える。


 「いいえ、違います」


 違ったようだな、クールで通している俺のキャラがあまりの恥ずかしさにぶれそうだ。


 「貴方は転生なので勇者でもなんでもない普通の人ですよ」


 ぐはッ! 普通の人······シンプル故に心に突き刺さる。


 「召喚されたのは神道結月(しんどうゆずき)様の方です」


 「色々な方法で異世界に行けるのだな。それにしても神道と言う名字、いかにも勇者にいそうな感じがする」


 「そうなんです! 神道様は魔王を倒す為に召喚された最後の切り札である勇者その人なのです!」


 何故か知らないが、女神が自慢げに勇者の話をし始めた。


 「本当に苦労しました。世界を救うため、最高の勇者を探すのに一人一人能力を確認するのには手間がかかりましたよ」


 自分で話を遮ったから気が引けるが、このままではいつまで経っても話が進みそうにないな。


 「すまない。勇者のことはよく分かった、そろそろ説明を頼みたいのだが」


 俺は女神に話の続きを求める。

 夢中になっていた女神が俺の言葉に反応し、まだ言い足りなさそうに俺へ目を向け、説明の続きを始める。


 「んんっ 申し訳ありません、本当に大変だったのでつい、簡単に説明すると、すごい勇者が召喚されましたので勇者の仲間になるなり自由に異世界で暮らすなり、お好きに新しい人生を謳歌してください。と、言うことです」


 ふむ、自分のお好きにか。

 勇者の仲間は三十路の俺には荷が重すぎるな。

 どうしたものか······。


 それにしても女神の話を聞く限り勇者は相当強いのだな、女神のお墨付きとは凄いものだ。


 「そうなのですよ! 神道様は歴代勇者の中でもトップクラスに能力の高いお方なのです!」


 完全に忘れていた。

 そういえば女神は、心の声が聞こえるのだったな。

 説明は終わったようだし、早速転生とやらをしてもらおうか。


 「もう転生なされるのですか? 一応地球で生まれ変わって新しい存在にもなれますが、いかがなされますか?」


 「問題ない。転生で大丈夫だ」


 「地球にはもう未練はないのですね? それでは最後に異世界で役立つスキルを選んで下さい、きっと貴方の今後の人生でお役に立つでしょう」


 スキル? そういえば前に、バイトの先輩が異世界系の小説ではチートスキルなる力でやりたい放題なんでもできると話していたな。


 だが、俺の返答は決まっている。


 「いらない、このままで行くことにする」 


 「よろしいのですか? 過去の例では、実用性の少ないスキルを選んだ事で盗賊に殺され、命を落としたお方がいました。それでもよろしいのですか?」


 釘を刺すように女神が問いかける。


 もとよりチートスキルで好き放題するつもりは毛頭ない。

 何故なら、何の努力もせずに生きていても、またあの14年間を繰り返してしまうからな。

 今度こそは無駄のない人生を送るとするか。


 俺の心の声を聞き、手のひらをこちらに向ける。


 「貴方の考えを聞き納得いたしました、それも1つの選択ですね。ですが、流石に会話ができないと不便なので、言語翻訳のスキルだけオマケしておきますね」


 「ありがたく頂いておこう、ご厚意感謝する」


 足元に少しずつ、文字で埋められた円形の陣が浮かび上がっていく。

 しばらくすると陣が辺りを埋め尽くすほどの光を放つ。


 最後、言い忘れたように女神が口を開く。


 「言っていませんでしたが、貴方の肉体年齢を10歳ほど若くしておきます、それでは貴方の新しい人生に華が添えられますよう祈っております」


 光が眩しすぎて女神の声が聞き取れなかったが大丈夫だろうか。

 まあ済んだことは仕方がない。


 とりあえず現在の状況を確認しようか。


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