第4話 Girls fight
「あれ絶対わざとですよ、友梨佳さま。」
「本当、あんな事までして人気を得たいなんて、恥ずかしくないのかしら。」
更衣室の奥では、着替えを終えた数人の生徒が立ち、騒ぎを冷ややかな目で見ている。
「私、言ってきます。そんなところで騒いでいたら邪魔だって。」
「お待ちなさい。」
「友梨佳さま」と呼ばれた、ひと際目立つ生徒がそれを制する。
「私が参りましょう。」
そう言うと彼女は、つかつかと美野里に近付いていく。
「鷹飼さん。」
美野里が振り向くと、そこには腕を組んで仁王立ちしている友梨佳の姿があった。
友梨佳の存在に気が付いたクラスメイト達は、クモの子を散らすように離れていく。
友梨佳は美野里のペイントブラを一瞥すると、彼女に言い放つ。
「良く出来てます事・・・でもあなたの胸なら、そもそもブラジャーなんて要らないんじゃなくて?」
いつの間にか友梨佳の近くに来た取り巻きの少女たちが、意地の悪い笑い声を上げながら同意する。
美野里は何かを言おうとするが、その前にいち早く反応したのは早紀だった。
「ちょっとアンタたち、ケンカを売るつもり?」
「部外者は黙っててもらえる?」
「私は美野里の親友だ!部外者じゃない!」
『このままでは早紀を巻き込んでしまう。』
そう考えた美野里は迷わず撤退を決断する。
「早紀、行こう!」
素早く体操着を着た美野里は、早紀の手を取って更衣室の外に出ようとする。
「逃げるつもり!?」
「話があるなら、後で聞きます。」
「何ですって!? 編入組が偉そうに!」
友梨佳の取り巻き連中が騒ぎ立てる中、不敵な笑みを浮かべた友梨佳は更に美野里を挑発する。
「ああ、そう言えば何て名前でしたっけ?あなたの変態兄貴。」
今まで友梨佳たちの挑発を全く相手にしなかった美野里の顔色がサッと変わる。
女子更衣室を出て行こうとしていた美野里はクルリと友梨佳に向き直ると、低い声で警告する。
「私の兄さんは変態じゃありません。侮辱は許しませんよ。」
「あら面白い。一体どう許さないと言うのかしら?」
不穏な空気がピークに達しようとした時、始業のチャイムが鳴り、両者の対決は水入りとなった。