第3話 A disturbance in the changing room
私の名前は鷹飼美野里。私立の女子校に通っている高校生だ。
体育の授業のため、女子更衣室で着替え始めた私を見た親友の早紀が、私の異変を目ざとく発見する。
「ねえ美野里、それ本物のブラじゃないよね。」
「えっ?本物じゃないって・・・」
私は最初、早紀が言った言葉の意味が分からなかった。
そして改めて自分の胸を凝視する事により、ようやく事態を把握する。
「ギャーッ!何これ!」
私の悲鳴を聞いた早紀は爆笑した後、感心したように感想を述べる。
「・・・いやでも凄いよねぇ、アンタの兄さん。こんなものが描けるなんて。」
そう、彼女の言う通りだ。
私が知る限り、こんな事が出来る人間は一人しかいない。
騒ぎを聞きつけたクラスメイトが、私の周りに次々と集まって来る。
「何?どうしたの?また美野里の兄貴?」
「すごーい。本物みたい。」
「ほら!後ろ見て。ホックまで描かれてる。」
「何で背中にハンコが押してあるの?」
クラスメイト達は、口々に勝手な感想を述べ合う。
「それは篆刻印。美野里の兄貴は芸術家なんだから。そこ、押さない!ちゃんと並んで!」
早紀は何故かマネージャーのように現場を仕切り始めた。
このままでは完全に見世物にされてしまう。
私は強引に事態の収拾を図ろうとした。
「もういいでしょ。ハイ!解散、解散」
興味津々のクラスメイト達は、それでも中々私の近くから離れようとしない。
それどころか、新たな見物人が増える有様だ。
一向に騒ぎが収まる気配を見せないため、私は困り果てていた。