鼻くそ英雄カイトの伝説
ままま、まさに英雄。
常軌を逸したヤツがそこにいた。
その名も、カイト、とある人間の鼻くそだ。
鋭く賢く偉大なカイト、彼は鼻毛に引っかかってティッシュからの猛攻をものともしない。
粘り気、硬さ、大きさ、全て彼がそこにいるという事に協力していた。
カイトの、今この場所に在り続けるという強い意志がソレらを呼び寄せていた。
ティッシュはカイトを引っぺがそうと、暴れる。
「耳クソ!うぜぇんだ!」
カイト、鼻毛にしがみつく。
自分の持てる力の全てをただそれだけに向けて。
「諦めてッ……!たまるかぁぁああああ‼‼」
周りの鼻くそが引きちぎられていく、ついでに鼻毛も。
カイトの体だって、削れていく。
「オレは!オレは―――――――――――――――‼‼」
気合を入れるための、悲鳴に似た叫びがこだまする。
そうして、ティッシュの猛攻が止んだときカイトは唯の鼻クソだった。
強い意志も、体も、限界を超えて耐えていたのだ。
燃え尽きた。
死ぬ。
しかし、ティッシュアタックフォーメーション“紙吹雪の舞”によってカイトを取る事を諦めた人間は病院でカイトを取ってもらった。
こうしてカイトは英雄となった。
鼻くそでありながら、人間を病院へ行かせた事に。
そしてその結果、甚大な鼻の病気が見つかったのだ。
自分の生みの親である人間を救う。それこそカイトの目的であった。
人間はカイトの死によって命を救われたことが偶然でないと、知らない。
だがしかし、それを偶然と思いつつも時折懐かしむのだ。
変な鼻くそがあったおかげで助かった運が良かったのだろう、と。
自分が気づかぬうち誰かに助けられて生きてると思う事など無く。




