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色のない世界

作者: 夏乃イロ

筆慣らし的短編小説

カチリカチリと世界は動く。それらは全て機械が定めた法則にしたがって。

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ふわり、と銀色の椅子から少女が舞うように降りる。それも全て機械によって定められた動作。白銀の少女は美しくも、何処か、何か足りない様子で踊る。まるでゼンマイを巻いた、踊るためだけに生まれた機械人形。

カチリカチリと一定の感覚で狂いなく、毎日変わらず同じ動き。これは芸術作品だ。この世界が芸術作品なのだろう。美しさだけを追い求めた完成系。色を変えることなく、動きを乱すことなく、世界は美しいまま。



カチリカチリと歯車がいつものように動く世界。そこに1点の"異物"が紛れ込んだ。そいつはこの白銀の世界を見て、無駄の無い、美しい動きを見て「奇妙だ」と零した。

それはまるで絵の具を水に垂らすように。

白銀の世界を色付けるように。次第に変化させて言ったのだ。


美しい白銀の城の扉に手をかける。あっという間に世界は色付く。外からの異変に白銀の少女も動きを止める。驚いたようにその見つめる瞳は何処か輝いているようにも見えた。

1つの異物が、全てを、白銀だった世界を色付ける。


元々美しかったそれは色を付けて更に美しくなる。まるで魔法のように、しかしとても簡単に。元々の白銀は無くなり、世界は虹色に染まっていく。それも、1つの異物によって。

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「初めまして」

俯いて白銀の少女は戸惑う。今まで掛けられたことのなかった”言葉”だ。所詮自分は食事をとり、踊る。それだけしかしてこなかった。いや、この世界の人間ほとんどがそうだろう。少女は声を出そうとするが、声の出し方なんて、とっくの昔に忘れているのだ。

「ア"ッ......ウ"ウッ」

なんて醜いのだろう、喉から出るそれはまるで嗚咽だ。美しさの欠片もなく、醜態を見せつけるだけの代物。こんなことなら声を出さなければよかった、とひとりでに顔が熱くなる。

こんなのは初めてなのだ。声なんて今まで出さなくても完璧なまま生きてこられたのに。目の前の異物を憎く感じるのだ。こんなの初めてなのに。

「とても綺麗だね」

違う違う違う!!!そんなはずがない、あってはならない。完璧ではなくなった自分が人に賞賛される筋合いはないのだ。

「ここから僕と出よう」

すっ、と手を差し伸べられる。気づけば自分を境界線に美しい色が染められている。その先に行きたい、と思ってしまった。何か違うものが見られるような気がして。ふと気づけば自分にも色がついているではないか。キラキラと輝くそれはまるで宝石のようで。顔を少しあげてみればそれは男の人だった。緩やかな笑みを浮かべる少年。背丈は自分よりも少しだけ高く、まさに純粋だった。

相手の手に少しだけ触れてみる。ぱっとキラキラとした笑顔を見せるとこちらの手をぎゅっと握りしめ、「行こう」と口にしたのだ。気づくと周りは虹色に彩られ、白銀だった世界は更に美しくなった。


ぽたりとインクが垂れる。それは最後には人を包み込み、世界を色付けたのだ。



白銀の機械人形は大層美しい色鮮やかな少女に変わった。

今後色々書いていけたらなと思ってます、異世界転移系、書きたい。

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