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346産業革命宣言2(抜けてました!)

こちら抜けてました!すいませんです。

「他にもまだある。祭りの連続となるが、翌月、兼ねてから建築を進めていたスタジアムが完成する。こけら落としとして第一回競技会を開催予定だ。もう一つ。新聖女の教育という名誉を賜ったネラックに大学を作る。連合国の学園都市ダグラスとも連携して進めていく予定だ」


 一息に告げると領民から喝さいがあがる。

 彼らにとっては驚きの連続だっただろうけど、祭りの開催中のこともあってかヒートアップが止まらない。

 それでも酒に酔った勢いで暴れて何てことにはならないはず。

 ネラックの街は世界一の犯罪率の低さを誇る。外部とのヒトモノ交差が激しくなってきたので、当初のネラックのように全くいざこざがないという状況ではなくなったが、それでも治安の良さは群を抜いているのだ。

 「ネラックは大公を慕い、集まった領民によってできた街。だからこそ、大公のためにもルールを守ろう」

 と領民が口々に述べているのだって……。

 広場の某像のことと言い「何だかな」と思わなくもないが、犯罪率が低いことは歓迎すべきこと。

 下手に口を挟まない方がいいだろう。いや、あの像が夜間に七色の光でライトアップされたりなんてしたら止める。

 寛容な俺でもさすがに勘弁頂きたいことだからね。

 

 ◇◇◇

 

「のおのお。サンギョウカクメイとはなんじゃ?」

「どこからそれを聞いたんだ?」

「街の者が騒いでおったぞ」

「そ、そうか。そのリンゴ飴をゲットした時とかだな」

「やらんぞ」

「要らないって……」


 セコイアの涎でベトベトになったリンゴ飴なんて誰が欲しがるんだよ。

 演説が終わり、祭りの様子を見に街を散策したかったけど立場上難しい。

 馬車で移動するのだったら可能だけど、それじゃあ面白くないからさ。

 祭りの輪に入ってどんちゃん騒ぎをしてこそだろ。

 万が一俺に何かあっては……とみんなに心配をかけてしまう。視察なら出来なくはないけど、多くの人が取り囲むことが容易に予想され祭りの邪魔をしてしまう。

 というわけで、屋敷に戻りエリーに外で買って来てもらったものを食べようとしたら、リンゴ飴をゲットして屋敷にやって来たセコイアに絡まれている。

 

 リンゴ飴をさもうまそうに食べながら再度「やらんぞ」と態度で示して来る狐耳に対し、シッシと手を振った。


「甘いぞ」

「分かったから。そこで座って食べた方がいいんじゃないか。リンゴ飴って食べていたらリンゴが棒から落ちるだろ。エリー。皿を」

「悔しがるでない。あ」

「ほら見ろ」


 リンゴ飴をかじると、リンゴ飴がべちゃっと落ちてしまう。

 とても悲しそうな目で落ちたリンゴ飴を見つめるセコイアに皿を持ってきたエリーも困り顔。

 するとここで救世主が登場する。

 リンゴ飴を都合四本も持ったバルトロが顔を出したのだ。

 

「ヨシュア様。そこの露店で売ってたんだ。良かったらみんなで食べてくれよ」

「寄越すのじゃ」

「セコイア。無理に奪おうとしてバルトロが落としたら、そこのと同じになるぞ」

「む……」


 ピタリとセコイアの手が止まる。

 エリーがテーブルに置いた皿の上にバルトロがリンゴ飴を乗せた。

 もう一皿持ってきてもらってセコイア用にリンゴ飴を一つとって彼女に渡す。

 

「うむうむ」

「そんな気にいったのか」

「それほどでもないのじゃ。途中でお預けになると欲しくなるものじゃろ」

「そんなもんか。まあ、それを食べたらまた街にでも繰り出すといいさ」


 俺は俺で何から食べようか迷うな。


「バルトロもせっかくだし食べていく?」

「すまん。ヨシュア様。もう食べ物は。結構飲み食いしてきたんだよ」

「そうだったんだ。もう休むつもりだった?」

「そうでもねえ。酒場に行こうかなと思ってた」

「俺のことは気を遣わず、行ってきてくれ。近く一緒に食事をしような」


 「あいよ」と親指を立てたバルトロは部屋を辞す。

 本当はここで俺たちと喋りたかったのかも、何てことを思ったりしたけど、もしそうならバルトロならそのまま椅子に座るよな。

 

「エリー。アルルも街かな?」

「いえ。アルルは」

「ヨシュア様。アルルを呼んだ?」

「うお」


 ひょっこり窓から現れたアルルに驚く。いつもながら逆さまになっていて、メイド服じゃない逆さま姿も新鮮だなと謎の感想を抱く。


「ご飯がまだなら一緒に食べよう」

「うん!」


 窓を開けてアルルを中に導く。

 エリーとアルルと食事を楽しんでいたら、リンゴ飴を完食したセコイアが突然八重歯を出してバーンと机を叩く。


「そうじゃった。サンギョウカクメイじゃ。サンギョウカクメイってカガクじゃろ?」

「思い出してしまったか」

「忘れておるわけなかろう」

「リンゴ飴で忘れていただろ?」

「ぐ……そのようなことはない。さあ。言うがよい。サンギョウカクメイについて」

「産業革命と言っても概念的なもので、説明するのも難しいな」

「説明が難しいものを目標として掲げたのかの?」

「正直、何かカガクぽい名前でと思って産業革命と掲げた」

「では。どのようなことをするつもりなのじゃ?」

「難しいところはペンギンさんも交えないと、間違ったことを伝えそうだ」

「それでも良い。とにかく言ってみるのじゃ」


 う、うーん。リンゴ飴で忘れてくれるかなと期待したが、しっかりと覚えていたらしい。

 産業革命という言葉を使っているが、本人が産業革命の意味合いをちゃんと理解しているわけじゃないんだ。

 なら使うなよ、ってツッコミもごもっとも。でもさ。産業革命ってキーワードは何だか凄そうでテンションがあがらないか?

 そういった気持ちを大切にしたいと思ってね。

 俺とペンギンだけが分かる言葉だし、誤用があろうが誰も損しないので許して欲しい。

 俺の記憶している限りであるが、産業革命とはその名の通り産業の変革が起こった一連の流れのことを指す。

 石炭……蒸気機関の開発による動力源の刷新。

 蒸気機関を交通機関へ応用することにより、鉄道が発達し交通手段が変革される。

 更に機械工場が夜明けを迎え、GDPが増加を始めた。

 産業革命前のGDPは手作業による商品生産だったためか、ずっと変わることが無かったんだ。それが、産業革命が起こり、機械化されることによって一人当たりの生産量が劇的に変化する。

 

 俺なりに頭の中で産業革命を振り返っていたのだけど、待ちきれなくなったセコイアが俺の肩を揺する。


「まだどの製品や工程に応用できるかはペンギンさんと計画を練っているのだけど、生産方式を刷新しようと思っている」

「ほほお?」

「これまでは全て職人や農家の人が手作業でやっていたことを、魔道具によって自動化できないかとね。電気によって水晶を魔石にできるようになっただろ」

「水晶の魔石は希少じゃったが、そうじゃの。水晶製の魔石は通常の魔石に比べ魔力量が100倍程度ある」

「え。マジで。電気で生成した水晶魔石は30倍程度だよ。当初は10倍くらいだったんだけど、改良を重ねた結果、30倍まで増やすことが出来た」

「して、水晶魔石でどうするのじゃ?」

「水晶魔石を使えば、魔道具の出力を上げることができるんだよ。パワーがあるからね。それで、ええと。水車を回して粉ひきをするだろ。水車を回すのは水だけど、それを水晶魔石と魔道具で補おうって考えだ」


 例の挙げ方が良くなかったかもしれない。

 でも、セコイアならきっと俺の意図を汲み取ってくれるはず。その証拠に彼女の狐耳がピコピコしている。

 

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