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 ふたりで出かけないかと言ってきたのはもちろんフミヤだった。


「それって、デートってこと?」

「いや、付き合ってないからデートじゃない。」

「そうかなぁ。」


 変なところ真面目で、でも、その発言はまだ返事のできない私を気遣ってくれているからだと分かって、こういうところは普通に好きだなぁと思った。

 ちなみに、行ったのは猫カフェだった。なんで私の友達は私の個人情報を勝手に流出するんだろう。でも、フミヤが私の行きたいところをこっそりリサーチしてくれたところは、素直にうれしかった。そして当日もとても楽しかった。猫かわいかった。会計はもちろん割り勘した。フミヤは払いたそうだった。ごめんねフミヤ。


 相変わらずフミヤからは、なんでもないメールが来た。学内で見かけた猫の写真とか、サークルの飲み会でヨッチがやった一発芸の動画とかが添付してあることもあった。

 ぽつぽつと返すと必ず反応してくれて、フミヤが私のことすごく好きなんだなってことは、よく分かった。


「付き合ったらいいじゃない。」

「……なんでユウコはそういうこと言うの。」

「付き合ってるうちにもっと好きになるかもよ。」

「そういうもんかなぁ。」

「ユリちゃんもフミヤも真面目だからね。誰かが背中押さないと。」

「それでみんなお節介なのかぁ。」


 学食でラーメンをすすりながら納得した。昨日の夜送られてきたラーメンの写真につられた結果だ。


 ちなみに、デートでラーメンはダメらしい。おいしいのに。

 あと、ハンバーガーもダメらしい。ユウコおしい、もう猫カフェの前にハンバーガー食べに行っちゃった。せっかく教えてくれたのにごめんね。それでフミヤがちょっと困ってたのか。フミヤ、割り勘と重ねてごめんね。


「……まぁ、もうこわいもんないって意味ではいいんじゃない。」

「なるほどポジティブ。」

「そもそもネガティブに取ってないよね、ユリちゃん。」

「バレたかぁ。」


 何せ、今更別に女の子らしいところ見せようとは思ってない。フミヤと初めて会ったときの飲み会でべろんべろんに酔っぱらった私は、駅前から一本入った小さな通りを流れる用水路に思いっきり吐いたわけだし。汚い話で申し訳ないけど。

 考えてみれば、あれは先輩に失恋したやけ酒だった。だって、吐くまで飲んだのも飲んで吐いたのもあのときだけだったし。どっちかっていうと強いタイプなんだよ、お酒。ほんとに。


 そんなわけで、パンケーキ食べたいとかタピオカジュース飲みたいとか、アユミみたいなトレンドっぽいおねだりは私に向いてない。てか、パンケーキとホットケーキって何が違うの? ホットケーキじゃダメなの? とか思う時点でダメなんだろうな。タピオカのおいしさは分かんないし。でんぷんじゃん。あれ? でんぷんだっけ?


 だいたい私の考えてることを察したユウコは、ものすごくあわれなものを見る視線を向けてきた。そしてたぶん、その視線は私に注がれてるというよりは、私を飛び越えてフミヤを見ているんだと思った。


「……もうちょっと好きになれない?」

「……けっこう私の中では好きになってる方だと思うんだけど。」

「淡白ねぇ。」

「淡白なのかなぁ。」

「——熱入れるのがこわいんでしょ。」

「……ユウコって人の心読めんの? すごすぎる。」

「読めるわけないでしょ。」


 ずばりだった。

 あんまり好きになりすぎて、私の好きの方が大きくなったらどうしようと思うのだ。


 そうなってから、フミヤが私のことを好きでなくなったら?

 先輩みたいに「ありがとう」と言って去って行かれたら?


 想像しただけでも、とても耐えられそうになかった。それくらいには、フミヤのことが好きになってる自覚はある。……だけど、飛び込むまでにはいかない。


「臆病だね、ユリちゃんは。」


 はっきり言ってくれるユウコは心底優しい。先輩の偽物の優しさとは違う。全然違う。

 でも、フミヤのいい意味でぬるま湯みたいな、そういう優しさはまたユウコの優しさとはまた違って、ぷかぷか浮いていられて、心地いいのだった。


 利用している、と言われたら、何も反論しようがない。


「フミヤはさ、たぶん、いつまでも利用され続けちゃうよ。」

「……うん。」

「分かってるならいいけど。」

「……なんかね、そういう、私の言うことなんでも聞いて、なんでもしてくれそうな、そういうところもこわいんだよね。」


 我慢してくれそうで。振り回されてくれそうで。


 逆に、私が今度は先輩みたいに「ありがとう」って言って、フミヤを利用するだけ利用して、ポイ捨てしまいそうで。フミヤを傷つけてしまいそうで、こわい。


 ああ、そうだ。

 そうだ、それが、私はすごくこわかった。


 でも、結局、利用したまま放置しているなら同じだけど。


「こわい、って思ってるなら大丈夫じゃない?」

「そうかなぁ。」

「フミヤにそのまま伝えてみたら? それくらいは好きになってるって。」


 夜初めて私から電話したら、なんかまだ電話に出ただけなのにうれしそうなフミヤの声がして、ちょっとだけきゅんってした。


ちょっと恋愛っぽくなってきたかなぁ。

いや、デートしようってところからデートの実況一切してないからダメじゃん。

タグつけても石飛んでこないでしょうか。タグは少し試行錯誤中です。ちょくちょく変わってます。


タピオカが、うまく吸えなくて喉に詰まらせそうでこわいのは私だけでしょうか。


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