1-7 俺はブルと会話した
「ダイジョウブカ?」
ブルは再度俺を心配する言葉を喋った。
「お前、俺の言葉が分かるのか?」
「イママデ、ワカラナイ。イマ、ワカル」
日本語を覚えたての外人のような喋り方だが、これで意思疎通が楽になった。
体調の異常といい、ブルの体躯の変化といい、言葉を喋るようになった事といい、この短い時間の中でいろいろとありすぎだ。
理由については現時点において憶測の域を出ないものばかり。
もっとこの場所、ブルの種族についてどこかで知る必要があるだろう。
「ブル、ナマエ、アリガトウ」
「俺が気まぐれにしただけだ。深い意味はない。気にするな。」
「ナマエ、アル、ツヨイ。ナマエ、ナイ、ヨワイ。アリガトウ」
こいつらの中では名前の有無で強弱が分かれるようだ。
しかし、実際に強くなったのかを見るまでは判断できない。
次に緑が襲って来た時にでもその実力を拝見させてもらおう。
「聞きたいことがいくつかある。まず、ここはどこだ?」
「バショ、ナマエ、シラナイ」
「では、お前たちは何者だ?」
「オラタチ、オラタチ。タダ、ニンゲン、チガウ」
場所の名前も分からずに、自分の種族名も分からないのか。
こいつ、なんも知らんな。
わからんことは後回しだ。今まで通り「青」と「緑」ということにしておこう。
「この森の出口に出たい。もしくは人間が住む場所に行きたい。道はわかるか?」
「デルバショ、ワカラナイ。ニンゲン、スム、ワカラナイ。デモ、ニンゲン、イル、ワカル。」
「どこかに人がいるのか?そこまで案内しろ」
「ワカッタ。ツイテクル」
喋り終わると同時にブルは立ち上がって歩き出そうとする。
「まぁ、待て。もう夜だ。お前らがどうなのか知らんが、人間は寝る時間だ。出発は朝にしよう。」
「ワカッタ。イク、ヨベ」
ブルは近くの大木に寄り掛かって目を閉じた。
俺も疲れた。体力的には問題ないが、精神的にいろいろありすぎだ。
適当な木によじ登って、朝になるまでいろいろと考えながら休んだ。
日の出とともにブルの案内で歩き出す。
人に会えれば街にもいけるだろう。
とにかく今は昨日おこった異常の原因を知ることが先決だ。
例えばもし戦闘中にでも同じ異常が起こった場合、俺が死ぬ可能性だって存在する。
そんな事を考えながらブルの後を追う。
ここに来れてよかった。