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1-6 俺は青に名前を付けた

 ~~~ SIDE 雅人 ~~~


 食事が済んだら火の後始末をして歩き始める。


 もちろん青は逃がさない。


 あれから数日が経ち、何度も躾をしたおかげで、青は枝を差し出したら火をつけるという事を覚えた。

 パブロフの犬のようだ。愛くるしい姿の犬に失礼か。

 昔に野良犬を躾けたことがあるが、言葉もジェスチャーも伝わらない相手に物事を教えるのは、なんとも言えない達成感が湧く。

 もちろん褒美として、火が付いたら焼いた肉や魚を与える事を忘れない。

 信賞必罰は躾の鉄則だ。



 朝から歩き出してそろそろ夕暮れに差し掛かる。

 早朝と同じように川で魚を2匹取って焼く。下処理も忘れない。

 俺は魚を食って一息ついた頃、ふと閃いた。



 こいつに名前を付けてやろう。



 躾けた犬には全身黒の毛並みだったので「くろんぼ」と名付けた。褒めるときも叱るときも名前を呼んだ方が効果が高かった気がする。

 これ以上青に求めることは何もないがどうせ暇だ。


 ネーミングセンスは兄弟たち全員から馬鹿にされるほどたぶんない。所詮俺が呼びやすければそれでいい。

 青。あお。ブルー。プルー、は変な悪寒がするから駄目だ。プル。ブル。うん、「ブル」という名前にしよう。

 ちょうどブルドックの発展版みたいな顔しているしな。

 青にビシッと人差し指を指さして告げた。



「決めた。お前の名前は今日から『ブル』だ。」






 名前を付けた瞬間強烈な頭痛がし始めた。


 脳が心臓のようにバクバクと鼓動する。。


 全身に鳥肌が立ち、体が勝手にブルブルと震えだす。


 何かが俺の肉や神経を無理やり引きちぎって中に入ってくるように感じる。


 涙、鼻血、涎、汗、小便とあらゆる場所から体液が体から流れ出る。


 薬なんて目じゃないほどの異常。


 一瞬でも気を抜くと意識を失ってしまう。

 

 失神、それは俺にとって死と同価値の悪行だ。


 手に持つ焼き魚用に研いだ枝の先端を太ももに突き刺して意識を無理やり覚醒させる。


 意識を失いそうになるたび足の肉を無理やり抉って意識を保つ




 痛い。


 寒い。


 苦しい。


 気持ち悪い。




 今まで経験したことのない体の異常に必死に耐える。


 耐えることには自信があったが、これはキツイ。





 ダレカタスケ・・・





 ダメだ。


 言ってしまえば俺が俺じゃなくなる。


 これは俺の試練。


 俺の恐怖だ。


 この先にはきっと


 ・


 ・・

 

 ・・・



 どれほど時がたったのかわからないほどの長い間苦しみに堪えた結果、徐々に異常は収まっていった。

 まだ体の中にしこりのような違和感が残っている。

 地面に四つん這いになって、息を整えながら考える。



 何が原因だ?



 攻撃された?

 どうやって?

 殴られた衝撃も刺された後もないし、そもそも物理的な攻撃で起こるようなものに思えない。


 では先ほど食った魚による食中りもしくは食中毒の類か?

 なったことは昔に何度もあるが、こんなにひどかった記憶はない。

 これだけの状況に陥ったことがあるなら絶対に覚えているはずだ。


 残った可能性は名付けしかない。

 青、もといブルの種族に名前を付けるとこんな呪いのようなものが起きる。

 自分でもありえないと思うが、それ以外の可能性が見当たらない。


 疲れ切った頭をフルに使ってありとあらゆる可能性を探っていく。






「ダイジョウブカ?」






 驚いて声の主を探す。

 そこには中途半端に食われた魚串を持ったまま、こちらを心配そうに見つめるブルがいた。


 ってか・・・・お前・・・・・でかくなってね?


 なぜかブルは身長が伸び、腕の太さが倍になり、そして、喋った?

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