1-3 男は青に出会った
書き始めた頃は5話くらいに異世界転生に気づく予定でしたが倍くらいかかりそうです。
10話までには何とかしたい。
衣類を乾かし始めて3時間後、湿り気が残るが気にならないくらいにはなったので着替えて散策を再開する。
川の上流を目指すというだけで今までより多少は気分がよくなった。
歩き始めて2時間程だろうか、辺りが夕暮れに染まり始めてきた。
さすがにめんどくさい。
歩く事がではない。
緑の駆除だ。
見即殺の信念でも抱いているのではないかと思うほど好戦的で短絡的だ。
戦い方も手に持つ武器が多少異なるだけでほぼ同じ。
武器を高く上げて直線的に一定の速度で向かってきて、リーチが届く距離になった瞬間振り下ろす。それだけだ。
当然俺の対処も毎回同じになる。
武器のリーチ内まで来た瞬間一歩下がって攻撃を躱し、よろめいた頭をつかんで地面に叩きつけて頭蓋骨を粉砕する。
効率よく且つ血で服が汚れないように対処していた結果、この一連の動作に落ち着いた。
もう30個以上潰したが、進めば進むほど数は増えているように感じる。
まだまだ先の見えない川に辟易しながら近くの木の上で体を休めることにした。
「グギャ」
「グア˝ー」「ギャギャ」「ギギャー」
今何時くらいだろうか。
半月より少し満月寄りな月明りが辺りを照らす中不快な叫び声に無理やり意識を戻された。
一応人型生物なんだから夜は眠っててほしい。
この不快感をスッキリさせることを決意し、発声源に目を向けると1匹と3匹の先住民たちが川を挟む恰好で睨み合いをしていた。
「ん?」
50メートルくらい先な為はっきりとは判別できないが、1の方は何やら青っぽい。
ほかにも緑に比べて背丈は15cmほど小さく腕も華奢だ。
頭はやはりでっかく、そしてハゲていた。
黒人と白人の諍いが絶えないようにこいつらも緑と青の色の違いだけで差別だなんだと争ったりしているのだろうか。
こうやってなぜか人っぽいところを発見してしまうため、俺は未だに人と数えるか匹と数えるかで迷っている。
先に仕掛けたのは緑だ。
川の深さは20cmと浅く水の勢いもそれほどない。
いつも通りに武器を振り上げ一直線に川を渡っていく。
しかし直後の青の行動に驚いた。
3秒ほど小声で何かをしゃべった後、両腕を迫りくる一人の緑に向かって掲げて叫んだ。
直後、青の手のひらからマジックのように火の玉が発射された。
火の玉は自由落下することなく一直線に飛んでいき、緑の頭にぶつかった後ボワッと一瞬燃え盛って消えた。
緑の頭はプスプスと音を立てて黒焦げになり、頭から川に倒れた後動かなくなった。
焼死か?
どんな手品かわからないが同じことを後2回やれば青の圧勝だだろう。
しかし炎に照らされた表情からは強者の余裕ではなく、弱者の苦悶が伺え知れた。
俺は静かに素早く移動を開始する。
青は必死に川の下流へ逃げていく。
しかし川を渡りきった緑達の方が身体能力は明らかに高かった。
逃げ始めてすぐに青の背中を緑の一人が持つ木の棒がとらえた。
青は殴られた反動で腹から地面に倒れこみ、後ろを振り返る。
大きな頭に比例するようなでっかい両目で見たものは自分を殺さんと上段に掲げられた2本の太い棒だった。
青は必死に生を祈りながら頭を抱えて蹲る。
しかし、掲げられた棒が振り下ろされる前に一人の緑頭が吹っ飛んだ。
「スットラァァィク!」
俺は片手にすっぽり収まる大きさの石を左手に持ちながら、テレビで見たプロ野球の審判のように恰好をつけて叫んだ。
初めて見たときはよくそんなジェスチャーを恥ずかしげもなくやるなと思っていたが、存外気分は悪くなかった。
俺今かっこいいぜ感を感じてちょっと虜になりそうだった。
何が起こったのか理解できてずに棒を掲げたまま辺りを見回す緑の頭めがけて第2球を投げた。
先ほどはちょっと威力が強すぎたと反省して投げたコントロール重視の1球はゴツッと鈍い音を立てて緑の頭にぶつかった。
頭蓋が揺さぶられて失神したか、それとも骨まで砕けたか。
30m離れた今の位置からは確認できないが掲げられた棒は握力のなくなった手から転げ落ち、後を追うように緑の体が崩れ落ちた。
俺は頭を抱えて蹲る青にてくてく歩いて近づく。
気づいているのかいないのか、すぐそばまで来ても青はブルブル小刻みに震えながら同じ態勢を維持していた。
そしてわざわざ助けてやった理由を告げる。
「火かしてくんない?」
全て生食は意外と辛かった。