表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/100

死神は恐れますか?

八十五話目。

ブクマが増えて総計50ptもついたよ!

……夢じゃないよね?

「死神……さん……」


頭がうまく働かない。

どうやっていきをしてたっけ。


ああ。


嘘だろ。


呆然とした気持ちの中に、じわじわと怒りがこみ上げてくる。

身勝手な怒りだ。

俺がハッキリしないから、死神さんが飛び込んでいった。

それでも、何かに当たらざるを得なかった。


カッコつけるって、死んでちゃ何もならねぇだろ。

ふざけてんじゃねぇ。


「ふ……ふざっけんじゃねーぞこのアホ死神!!出てこい、いつもいつも変なことばっかり言いやがって、今回ばかりは許さねぇぞ、勝手なことばかり言って……っざけんな、カッコつけ星人!!」

「お前こそ人がいない間に勝手なことばっかり言ってんじゃねーし」

「…………え?」


後ろに。


「……幽霊?」

「いやちげーから。お前って根本的に俺をなんだと思ってるわけ」

「死神」

「そうだけど!!ってそういうことじゃねぇ!!」


ああ良かった。生きてる。

いや死んでたけど。


死神さんは、まだここにいる。


小脇に抱えられたその人が、身じろぎをして俺を見上げた。

「ぁ……あ?ど、うなって……」

「おう、ようやくお目覚めかよ。寝てっと落とすぞ」

ぷらぷらと振りながら、本気っぽく言ってみせる。

「それはちょっと痛いからやめろ」

オロチはそう言って、その腕から逃れると手足をちょっと動かして、じっと手のひらを見つめる。


「色、消えちまったな」

「ああ。まあ、問題ねぇさ」

「いや問題は大アリでしょう。あの下のやつ、一時的に崩れただけでまた回復して来てますからね?」

「あ、ほんとだ」

未だ土埃の立ったままのあの場所からは、肉会がぶよぶよと膨らんで来てはみ出し始める。


「……俺の心臓にいつの間に」

「隙なんて、いくらでもあるでしょう。埋めこむことが目的じゃなくても、何かに混ぜるとか、肌から侵入できるように調整するとか」

「でも、体内の神気の流れには全く違和感を感じなかった」


俺は肩をすくめる。

「おそらく、俺か死神さんかあたりが傷を負わせた場合、急成長するようになってたんでしょうね。それより、あれは斬ってどうにかなるものなんです?」

「知らんわそんなん」

「さっきのあれは斬った風圧で吹き飛ばしたって感じだったからなー。あ、再現は無理だし風圧だから一時的なもんだぞ?」


うーん……。


「にっぎいいいいい!!」

上から落ちて来た高田を避ける。

「どうも」

「伊吹たち呼んできた!」

「そうですか。じゃあ、ミズハさんとハニーさん、ちょっと」

「ってお前なんで俺まで呼んでんだよ!?」


「杏葉ちゃんは?」

死神さんの最もな問いに、高田はあっさり答える。

「瘴気で倒れた瑠璃ちゃんたちの介抱に回っているって言ってたし、邪魔はできないかなって……」

「俺たちはいいのかよ!!」


茨木童子が喚く。高田が暇そうにしてたし、とモニョモニョ言っている。

暇そうってお前な。


「お前割とざっぱだな」

「いえ、人手が増えるぶんには。食われないだけの実力があるみたいですしね、一人を除けば」

「一人……」

全員が一瞬だけ、伊吹を見た。


「って自覚済みだよ!!で、俺はなんかやることあんの」

「ないですね」

「ないのかよ」


殴って殺すというのは、案外大変なのだ。

某漫画ではワンパンで始末しているが、ああいう風に体に風穴を開けるパンチを繰り出せる人なんて、ほとんど皆無じゃないか?

パンチというのは、刃物と違って表面積が大きく、力が分散される。

殴られたからと言って、そうそう風穴はあきやしない。


「ああ、でもそうですね……」

核を破壊するとなれば、一つだけ試しておきたい。

「伊吹くんは、広範囲に一度に打撃をすることは出来ますか?」

「あ?ああ、ちょっとタメはいるけどな。なんでだ?」


俺は肉塊がじわじわと回復をしていくのを見ながら、ニコッと笑う。


「いえ。少し、思いつきですけどね」





俺は、右目に神気を注ぎ込んで、神脈をギリギリまで強化する。

「目標とするのは、あのあたりを全てです」

体の中心部分に、その核が鎮座している。安心して眠っていられると思ったら、大間違いだ。


「まずは、前方少し下から、伊吹が全力で叩き込んでください」

「了解」

そのまま伊吹と高田が突っ込んでいく。高田は結界を張り、溜めが終わるのを待つ。

伊吹の右拳が光をじわじわと帯び始める。


「ひゃああくれつけええええんっ!!」


いや百裂拳ってネーミングセンスダサいだろ。


しかしその光は、その体に拳が食い込むと同時に分裂してその体を打ち付ける。眼に映る核が、その方向を逃れて後部の上方へと移動した。


「ミズハさん、よろしく」

「任せて」


その鎌はありえないほどに巨大化し、そして、その巨体を前方と後方に切り分けた。

「ハニーさん!!」

「らじゃー」

その戻ろうとした隙間を全て土で覆い固めて、それをさらに高田が結界で覆う。

前よりも断然、長時間もつはずだ。


さて、ここからは三分の一のそれに核が入っているが、じゃあどうやって殺すかという算段なんだが。

「茨木童子!」

「さんをつけろよさんを!?」

「今までこだわらなかったくせに」

右目が弾けた。すぐに再構築されていく。

見逃すわけがない。

じっと視線を注ぎながら、俺は方向を指示する。


「そのまま縦に真ん中から!!」

「指図すんなよ!!」


その言っていることとは裏腹に、その手には大きな鋏が握られている。

「『大断(おおだち)』!!!」

ざくん、とその肉が切り裂かれ、そしてそのまま右半分をさらにハニーが覆っていく。


「オロチ……!!」

「荒ぶる八衢(やちまた)の大蛇」

「怨みはあれど其の身体は我が肉なり」

「穿つ大牙は毒を孕み」

「やがて肉は腐りゆく」

「我が諱をもって命ずる——喰らい尽くせぇえええっ!!」


その身体は何もかもが真っ白に変じているが、それは死神の冷酷さを孕んだ白ではない。暖かさをもった、優しい白。


その袖からは大蛇が何匹も這い出ていき、その肉塊を食らう。

あっという間にその肉塊は食いちぎられていき、徐々にその動きは無くなっていく。

「ハァッ……ハァッ……くっそ、もう無理だ!!」


蛇が、雲散霧消していく。残っているのは、わずかな肉片のみ。


そこめがけて、死神さんが大鎌を振るう。それを察して、その肉塊から、一つの光が飛び出していく。

肉塊が生まれる気配はない。


「こんにちは」

その体の前に飛び出て、俺はそれを手から突き出した刃によって、砕き去った。


「終わった……」


その瞬間だった。


その場所から、ジリジリと侵食が始まっていく。天に向けて一条の光が立ち上り、その場に幾らかの地面を飲み込みながら、俺は逃げる間も無く飲まれる。


視界の端に、高田が「ニギ!!」と叫んで飛び出てきたのが見えたが、俺の手は届くことなく光の壁に閉ざされた。


ふと見ると、そこには死神さんが立っていた。


「死神さん……」

「仁義……」

あの瞬間、あれは反応をして、消えてしまった。

おそらくは、門をつなぐ先を指定するマーカーの役割だったんだろう。


「すっかりやられましたね」

「ああ。けど、このままだと俺ら帰れねぇな」

「それは……いただけませんね」


そうだ。


それだけは、絶対に嫌だ。


『……哀れな子』

「誰だ!?」

死神さんの怒鳴り声に、ただ虚ろな笑い声だけが響いてくる。


「笑ってても相手には細かい意図は伝わりません。ご用件とお名前をどうぞ」

『これは失礼。先日は兄が、大変失礼いたしました』

「……あの無理くりな連行をしようとしたやつでしょうか?」

『ええ。まあ、それはさておき……ここはすでに高天原ですから、あなたは神になれますよね』


その女性は、光の中からするりと躍り出た。


イザナミ様に似ている。

黒髪でありながら、純粋無垢な表情に見えるその顔。

一切目は、笑っていない。


「それは、断ったはずです」

『今ここであなたの命を断てば、問題ありません』


俺は死神さんの手を突く。そして、手でいくつかサインを飛ばす。

「……お前、」

「たとえ動けなくなろうと、無条件にあなたの要求は、飲めませんね」

俺は鎌を取り出すと、悠然と構えた。


抑えているが、その神気は俺よりもはるかにひどく、そして肌に痛い。


「あなたとの、一対一を、所望します」


死神さんが、俺の後ろへと下がっていった。

一対一では明らかにかなわない相手に戦いを挑んだ真意とは……?


うーん、法事とかあるので色々遅れるかもです。

もし明日無理なら載せません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ