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死神と修学旅行ですか? ①

いでよ!Gマップ!

「新宿から京都まで、新幹線ですね。到着はお昼少し前くらいでしょう」

「うわあああああ新幹線初めてナマで見たああああ!!」

「落ち着けっ」

「あうっ」

高田にチョップを軽めに落として、列に引き戻す。


「何すんだよぉ」

「はしゃぐのはいいですけど、そのまま迷子になったら……わかりますよね?この迷宮とも言える新宿駅でフラフラ初心者が歩き出そうなどと……」

「すいません!!ついて行きやす!!」


わかればよろしい。


さて、ここまで来てなんだが、俺たちの班員を紹介すると。

夜行 仁義。

高田 紅。

山田 一総。

竹下 学。

坂町 みずな。

朱雀院 陸塞。

羽々木 杏葉。


「フルメンバーですよね、実際」

「多分これじゃないと仁義が誘蛾灯のように女子に囲まれるからだと思う。あと杏葉ちゃんの目くらまし?」

「人をアリの巣の前の飴みたいに言わないでくださいよ」

「お前がブサイクだったらよかったんだけどな……」

「俺は高田がその顔でよかったと思いますけどね」

「仁義の本質は顔じゃないんだけど……わかってねーよな、本当に」


「はいそこ二人惚気始めない!!」

みずなからビシッと言われたが、別にいちゃついてはいない。むしろ自然に手をつないでいるお前と陸塞の方がアレだと思う。


「あ、あの、お兄様。死神さんは……」

「へーロー、こないだは悪かったな嬢ちゃん」

「いいえっ!!滅相もございません、ええと、『あずは』と呼んでくださいまし」

頰を少しだけ染めて、死神さんを上目遣いで見る。

「仁義……どうしようこれ」

「ストーカー気質な家系と浮気っぽい家系が混じってるハイブリッドですよ。逃れられるとか思ったら……」

「ひいいいい!?」


まあ、それはそれとして。

「俺ら、次の全国高校生漫才に出場しようと思ってるんだけど、ちょっちすざくんネタ見てくんない?」

「え、すざくん……?」

「やだなカズ、こう言う場合はりっくんだろ?」

「え?……ええ?りっくん?」

「お前がわかってねーんだよ!すざくんの方がいいに決まってんだろ?」

「そっちは俺がつい最近視聴したアニメでムカつく奴の名前に似てるからやだ」

「それは仕方がない」

「じゃああだ名どうする?」

「さいちゃんで」

「異議なし」


その決定に陸塞が異を唱えた。

「異議ありだよ!?君たち流れるようにボケとツッコミを組み立てたよね!?本当に仁義が二人いるかと思ったよ!?」

「どういうことですか」


陸塞のツッコミがキレッキレなので、俺も参戦。

陸塞はツッコミを聞いていないと思ったらしく、迂闊に発言していたと冷や汗をかいているが、そんなことで怒りはしない。

ちょっと遊ぶだけだ。


「いやー、だから、ほら、二人とも……夜行くんにそっくりだよね……ボケが」

「やだな、俺が二人なんて。今から俺も参戦するので三人ですよ」

「もうやだ!?」


新幹線が動き出すと、高田の興奮が結構治まってきた。座席にちんまりと座り、うつむいている。

「仁義……」

その声に何か逼迫したものを感じ取り、俺はその背に手を当てる。

「どうしました?」

「き、もちわるい……」

「大丈夫ですよ。酔い止め飲んで、窓の方の席に移動しましょう。吐くほどではないですか?」

「ん。……えうー」


後ろの生徒に断りを入れて、座席を倒させてもらうと、少しだけしおりで風を送る。

「気持ちいー」


その様子を見て、周囲の人が何人かワイワイ騒いでいた。

高田はしばらくしたら酔い止めが効いたようで活動的になり、そのまま坂町たちのところに混ざりに行った。

懲りないと言うか、アホの子というか。


眉間を揉みほぐしていると、肩をポンと叩かれる。死神さんと陸塞が、並んで立っていた。

「……陸塞?」

「少しだけ、話そうじゃないか。とりあえず、山田くんたちの方へ」


俺はそちらの窓際に座らせてもらうと、陸塞と向き合った。死神さんは俺の腹から顔を出して遊んでいる。


「で、こちらの家でも色々と調べて見たよ。夜行は結構有名なお家でね、東の朱雀院、西の夜行……。裏のお話だから、そうおおっぴらに言えたことじゃないけど、政府やらのお抱えではなくって、後ろ暗い仕事担当だけどね」

史上に残してはいけないから、細心の注意を払ってか。


「なるほど。そう言えば、あなたのとこのあれはどうなったんです?」

「はは、マガヨが死んだからね。話をまとめるものもいなくなって空中分解したよ。まあ、不穏分子はプチッと、あるいは懐柔してあるんだろうけど……そう言えば、妹も今京都で中学の修学旅行なんだよ」


へえ、と俺はその答えに椅子に深く座り直す。

「じゃ、あなたのとこは問題なさそうなので、いいですね。夜行は、どんな家ですか?」

「今も、裏の仕事と言ってるように呪殺を生業としている。うちは主に結界を張ることで人を守る立場だから、技法として知っていてもそれは使わないかな。現代の法律だと、呪いじゃ彼らは訴えられない。まあ、頭髪を盗むなりなんなりと色々は必要だから叩けば不法侵入くらいはあるかもしれないけど」


爽やかな笑顔で言い切られて、俺は少しばかり考え込む。

「まあ、そう気にするほどでもないと思うよ。僕の近く範囲内に紙兵があれば気づくし、術をかけられてもいない。それに君ほどの神気があれば、大体の対人用呪い系は突破できるはずだけどね」

「まずいのは対妖用とかってことですか」

「そうだね。それも仕掛けられてたら、さすがに僕が気づく」

「流石ですねセンs……陸塞は」

「今センサーって言わなかったかい?」

「言ってませんよそんなこと」


俺は席から立ち上がった。

「毎度毎度見返りもなしに、申し訳ありません」

「いいよ、なんてったって、君は僕に見せてくれただろう?あの光景を……僕は、死ぬために生きていたけれど、今は別に目的にために生きようと思ってないからね。生きるという行為は、人が何かをなすためには本当に基礎的なことだから、当たり前だったんだよ」

「はは、上手いこと言いますね。……いざとなったら、俺が全力であんただけ逃がしてやりますよ」

「いやあ、恩に着るよ」

陸塞は爽やかに言って、山田たちの毒牙に囚われた。


合掌。


俺が高田の隣に戻ってみると、高田は席でスヤスヤと寝息を立てていた。あっち行ってこっち行って、とても忙しい奴である。ふと思いついて、その体にブレザーをかける。

十月だから冷房もあまり効いていない。そんなに寒くはないはずだが、心配になってしまう。


「なーんかさ。あんたって、お母さんみたいよね」

後ろからひょいと顔をのぞかせたみずなが、俺に変な笑いを浮かべた顔で言ってくる。

「おか……」


「時にあんたらどれくらいいってるわけ?チューは?おっぱい揉んだ?」

下世話な質問だが、これに顔を赤らめるのは相手を図に乗らせるだけだ。冷静に対応したように見せかけて、天然砲をぶちかますのがこういう時の対処法。


「一緒に下着は選びに行きましたけど」

ふぶっ、げほげほっ、ごほ……とおよそ一般の女子から聞こえてはいけない音が聞こえた。

「……え?マジで?冗談で聞いたのだけど……?」

「そういうそっちこそ、何もないんですか?ヘタレ陸塞とツンデレのあなたの間に」


そうからかえば、その頰が大福のようにぷくっと膨れる。

「頑張っても……気づかれないか、そのふりをされるのよね……どうしたら……いいのかしら」

「簡単ですよ。手を繋ぎたいとか、キスしたいとか言えばいいじゃないですか」

「それができたら苦労しないっつってんでしょ!?校内5位の頭は飾りかっ!」

背後で高田が身じろぎをした。


「もがっ!?」

うるさい叫び声に蓋をするように手を口に当てると、怒りの

「高田が起きます。やめてください」

「ふもが……っ、苦しいってんでしょうが……」

ぎらぎらとこちらを恨めしげに睨みつけてくるが、ちゃんと声が潜められている。俺は素知らぬふりを貫いて、高田へと向き直る。


よく寝ている。


『間も無く京都駅、京都駅に到着いたします。お荷物のお忘れのないよう……』

アナウンスがかなり静か目に流れると、高田の肩をポンと叩く。

「なにっ!?」

「うわ!?……びっくりさせないでくださいよ。全く……もうすぐ着きますよ。ほら、あの五重の塔、あれがあるのは東寺です」


未だ眠たげに目をこすっている手を顔から剥がすと、あくびが漏れる。目はこすらないほうがいい。

「んー?……ああ、あれかー……ふわわわ……ん?あれ?もう着いたの?」

「だからさっきから言ってるじゃないですか……相変わらず、」

寝起きが弱いと言いかけた言葉を飲み込み、俺は網棚から荷物を取り出していく。


「ほら、そろそろブレザーを返してください」

「あ、ああ、かけてくれてたんだな。サンキュー」


宿まではバスで行くそう……なんだがな。

視界がやばい。

どれくらいかと言えば、キラキラドロドロが学校の近くと比べて3倍くらいある。

「だから行きたくなかったんだっつーの」

まぶしー、とか言いながら死神さんが唸る。


「ぐあああ、目が……目が……」

「二人とも大丈夫かい?」

「俺の方はいいです。多分ある程度は慣れておかねばいけないと思うので」

「わかったよ。…………これでどうだい?」

「あ、楽になった。あんがと」

「いえいえ。あ、呼ばれてる……」


俺と同じく両目を抑えた杏葉とみずながわあわあ言っている。

「使い勝手がいいのも、困り者ですよね」

「うん?ああ、そうだな」


高田が神妙に頷いた。


宿に到着すると、そこのおかみさんが背後霊をくっつけたままニッコリと笑った。

「おこしやす」

おお、京都弁だ……と全員から感嘆の声が漏れると、彼女はクスッと笑った。


「それじゃ、一班二班の女子、三班四班の女子、五班六班の女子はこっちな。男子もおんなじように並べよー」

伊藤先生が声を張った。

俺たちの部屋は、二班のメンバーと一緒である。大部屋雑魚寝。

「そろそろ夕飯だろ?楽しみだよな」

「そうだなあ。豆腐……美味しい豆腐食べたいな……マヨとラー油かけて」

その組み合わせを豆腐にかよ。味わえよ普通に豆腐を。


陸塞は手持ちの札を確認していたのか顔をカバンに埋めていたが、それからすっと顔を上げる。

「……よし」

「さいちゃんこっちこっち」

「そのあだ名を了承した覚えはないんだけどなあ!?」

「……さいちゃん」

俺のつぶやきに山田と竹下が同時に吹いた。

お前らほんとシンクロするな。双子か。


高田がいる方の部屋には坂町が何やら施しているようなので、信用してどるるを送り込んでおく。

ある意味信用している。

この間結界を貼ろうとして、うっかり自爆しかけたって話は陸塞から聞いていたからな。


「そろそろ夕飯か。みんな行こうか、鍵は僕が閉めるよ」

そう言えば、陸塞はいつ教室に行ってるんだ……?なんか妙に馴染んでないか?

気になって聞いてみると、納得できる答えが返ってきた。


「授業は紙兵に受けさせてるよ」

「なんですって」


……まあ、世の中真相なんてそんなものである。

長くなりそうなんで、数字にして振ってあります。

細かく書くぜ……。

あ、陰陽師云々の裏のお仕事とかの話は完璧にフィクションです。


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