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死神は抗いますか?

ボッコボコ。


あとは、少しばかり短めだけど今日は二話更新だよ!

「んな、わけに、いくかぁっ!!」

自分で自分の腕をぶっ叩いて神脈を破壊し、そのまま目を覚ます。

「なにっ!?」

「……毒による幻。そして、とんでもない俺へのアンラッキーの引き寄せ。この場合、建物の中から俺たちが二人で出ることで、上からの狙撃を防いだ。……こんなところですか」

まだ身体中が痺れている。痛みがあって、目眩を引き起こしており、頭を内側からドンドコ叩かれている気分だ。


「まだ、終わるわけにはいかない。終わるわけには……」

じわじわと何か得体のしれないものが俺を侵食してくる気がするが、構わない。

俺が俺でありさえすればそれでいい。


痺れる手を動かして、鎌を握る。

まだ、動く。

感覚が半減している足を動かして、大地を踏みしめる。

まだ、歩ける。


まだ、戦える。


俺が一歩ずつ近づいていくたびにその姿はなんとなく小さく思えてくる。体のあちこちから神気が漏れ出して、渦を巻く。

「そ、それが君の神威か……強そうだね」

「……あ?」

俺は親指をギミックにかける。カチリと音がして、刃が切り替わった。

姿勢を低くして滑り込んでいって、その姿が間近に迫る。つばぜり合いのまま、両腕に神気を注ぐ。鎌が重くなる。

両腕ごと支えていた柄で、その突っ込んだ刃が逸らされ、俺の手からすっぽ抜けてかしゃん……と儚く砕け散る。


構わない。次がある。

もう一度作り出せば問題ない。


そのまま無手で振り抜きながら、同時にその手に鎌を出現させて、その首すれすれまで鎌が迫る。しかし、当たらない。

認識がずれている。

右の眼球に指を当てる。


ぱちん、と弾け飛んだ音とともに、右側の視界が暗くなる。べとべとして気持ち悪いが、これで見えるようにはなるだろう。

神気を流し込み、その場所を再度構築して、俺は奴を睨む。

「……なるほど、化け物だねえ」

「化け物?違いますよ。人間だ」

「人間はそう、確かに欲深い。君を見ていれば、頷けるよ。けれど、だからこそ超人的な存在として、神は必要だ」


はっきりした視界で、俺はその体を狙う。

砕ければもう一度。腹に鎌が刺さりそうになれば胸から鎌を出して防ぐ。


お互いにボロボロになりながら、まだそれは終わらない。


「くそ……くそっ、なんで!なんでこんなに!?」

「……修正」

右手が今度は痛みをもたらす。意識がはっきりして、そしてもう一度神気が元に戻る。

神脈が張り巡らされていく気持ち悪さに、身体中を埋め尽くす気持ち悪さに耐えながら、俺はその体を切り裂くことに専念する。


「……僕は、今、何と戦っているんだ……?」

「人間です」

「人間が、この僕の災いに屈しないなんて、ありえない!!」

「そうですか」

無感動に、冷徹なままに、俺はただ戦うだけだ。奴を倒すだけでいい。それだけであれば——。


その時だった。

地面に寝ていたその人物が動き出した。

「え……なにが、おこって、……私は!」

異母妹が、目覚めた。神気が回復して、目を覚ました。

その瞬間、俺の意識がはっきりと戻る。そして、マガヨも。

「そうか……はは、運が向いてきた!!お前を食えばっ!!」

笑顔のままに飛びかかってくるマガヨに、彼女は怯えながらも転身して鞭を握る。そのまま、俺はその場所に突っ込んで、マガヨに鎌を振るった。


しかし、俺の刃は届かない。


代わりに、右の胸をガリッと削られて、思わず血を吐き出した。

「っゲホ、ゴホッ……」

やばい。

この状態で神気のこもった傷を受けたら……。


治りが遅い。

動きが鈍る。


神脈を壊して再構築するだけの余裕が、もうない。

傷口から毒のように染み込んでいく神気。体が壊れそうだ。

「あ、ガッ……グ、ァッ……」

土が血を吸い込んで、黒々としていく。手が引き抜かれたと同時に、俺は地面にぐったりと崩れ落ちる。


「う、嘘ッ、」

「ハハッ……このバカ女をかばうなんてさ。僕に入れ知恵したのもこの女だし、君の過去だってこ・の・女に!ぜうぇええんぶ……聞いたんだよ。それなのに、バカな奴だねえ」

ケタケタとひとしきり笑う声が、耳障りだ。


頰の下の土の感触が、気持ち悪いくらい湿った俺の頰にくっついてくる。


誰かが俺を揺さぶっている。異母妹か。


マガヨの、その手が伸びていき、異母妹に届きそうになる。俺はそれを掴む。

相手が何か言っているが、聞こえない。


聞こえない。


視界も霞んできている。耳は、音が反響するだけで何も聞こえない。

何を言っているんだろう。


「そいつへの、復讐は、とっくに終わってる。今はただ、嫌いな奴ってだけだ」

ぜえぜえと、荒い息が止まらない。もう一発、脚を貫かれたが、叫ぶ気力もない。

したたかに蹴り飛ばされても、俺はそいつを止めようとしていた。


けれど、俺はその足首を掴み続ける。

怒鳴り声。体が蹴られて、痛む。

血を吐き出す音と、骨が軋む音。そして、濡れた袋を蹴るような、湿った音。

それしか、聞こえない。




いや、違う。


泣き声が、聞こえる。

俺を覗き込むその顔だけが、はっきりと見えて、そして吹っ飛ばされていった。

——意識が、浮上する。


『泣かすなよ』


ああそうだ。泣かせるのは、ダメだよな。俺は儘ならぬ体を叱咤して、息を吸った。

今からこの後の俺のことは、考えっこなしだ。

この段階でなら、安心して他の奴らに他の敵を任せられる。

なら俺は、マガヨを倒すためだけに神威を振るっても問題がないということだ。


俺が俺自身で無くなるのは怖い。しかし、他の奴が傷つくのはもっと怖い。

マガヨの手が、異母妹に伸びる。


痛みがひどい。耳鳴りもする。それでも、言葉は確かに紡がれた。

「敵は、ゴホッ……我が手中にあり」

「誘いは、耳を塞ごうとも忍び寄る」

「断てぬ呪いに酔え」

「我が(いみな)を以って命ず」

「顕現せよ」


その瞬間、俺の目の前から全ての景色がブラックアウトした。




……と思いきや、ただ暗い空間に取り残されていた。ここは、どこだ。


『おーにさーんこーちらー……あれ?お兄さんもあそぼ?』

「君は……」

いったい、という言葉は続かなかった。

これは。

これは俺だ。

子供の頃、おそらく5歳くらいの。

真っ赤に染まった着物を着て、彼はくるりと振り返る。


『ここはね。ちょっとだけしか人がいないの』

「そうか」

『だからね。ここをお友達でいっぱい、いーーーっぱいにするんだ!』

「そうだな。友達、いっぱい欲しいよな……」

俺はその手をキュッと握る。


「ごめんな。俺、戻ったら友達いっぱい、いっぱい作るからさ。お前に寂しい思いなんてさせないくらい、いっぱい」

目の前に罪を並べられて責められているように、俺はうなだれる。気分は処刑台の罪人だ。


『約束だよ』

「……ああ」

差し出された小指に、俺はそっと自分の指を絡めた。

いい話で終わると思った?

残念!

続きは三人称視点進行の恐怖の空間のお話。

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