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死神は戦いますか?

pv見て焦った。

今日日曜じゃんお前ぇ。

曜日感覚が薄れてやばい。

「………ほんと、規格外よね。私が力をもらった時は、ただただ切り崩そうと足掻いてもミリ単位でしか減らないわよこんな結界」

「君は本当に自分の力の把握が嫌になる程正確だね」

「……なんか、自分でもわかってはいるのよ。わかってはいるけど、人に言われると腹がたつのよね」

「君と夜行くんは、同族嫌悪ってやつかな」

「失礼ね。あれは一方的に私が嫌っているだけよ。……本当は、あいつが悪いわけでもないのに、私の一方的な感情論で嫌われてるだけ」


結界を解除し終わると同時に、別の方向から衝突音が聞こえて来た。おそらくは戦いが始まったのだろうと先を急ぐことにする。

「呪刀はちゃんと持ったね?」

「遠足に行くみたいにいうわね」


隠形を解くと彼女はすらりとそれを抜き放つ。周囲からはそれに気づいた人々から声が上がり、ついで黒装束がわらわらと出て来て、囲まれる。

「腕前は本当の付け焼き刃だけれど、あなたのいう通り、モヤシが多いなら大丈夫、そうねっ!!」


その紫色がかった反射光を放つ刀が黒装束にかすり傷をつけたところ、その男は一瞬にして黒い靄に覆われて、倒れてしまった。

坂町はその光景に口をぽかんと開けて、それからバッと陸塞をにらんだ。

「あんた一体これに何仕込んだのよ」

「軽い呪詛かな」

「……あんたの軽いって信用できないわ」

「はは、僕が君に無茶を強いるような呪詛を仕込むわけないだろう」

「——うぅ、とっとと行くわよ!」


「くっ……朱雀院の恥さらし者めが!」

「捕らえろ!」

さらにこちらに向かってくる人間が増える中、陸塞は坂町の手をとると煙玉を投げた。

「見えんぞ……」

「動くな。包囲してあるのだ、同士討ちしないためにも!」


指示が厳しく飛んだ瞬間、その場から二人は消えていた。ふと指令を出した人間が後ろの何かに振り向いた瞬間、その頰には拳がめり込んでいた。


「悪いね。ちょっと俺の代わりに殴られて来てくれ」

お札をペッタリと貼ると、その姿はなぜか陸塞に変化した。目を白黒させる男が包囲網の内側によろよろと後ずさり、尻餅と同時に周囲の黒装束に目をやった。


「いたぞ!」

「……あんたってやつは」

「ははは、自覚済みさ。もっといやらしい性格をしているニギ君がいるから目立たないだけでね」


ふと、背後の神気が一気に膨れ上がる。

「……あれは」

「かなりのものだよね。敵が出たんだろう。こっちには有象無象をよこすくせに。体力だって無尽蔵じゃない。百人も相手にすれば、そりゃあ人だから倒れもするよ」

「そうなったらあんたを引きずって帰るわ」

「お姫様だっこがいいな」

「変なこと言ってないで、もう少し待つわよ。園原さんが今、上で頑張ってるんだから」


それから幾ばくもなく、上空から何かが光り輝きながら落ちて来た。彗星の如く真っ白な光を放ち、それは建物に衝突して、結界で補強された建物ごと綺麗に貫き、その結界をぶち壊す。

強力な一撃(ジャガーノート)にはかなりの時間がいるだけあって、その威力は凄まじい。


「……これで、威嚇にはなったはずね」

「どの階にいようとあの威力の弾が飛んでくるのは怖いしね。建物の中なら神気が充満して、そう動くには面倒がない。外に出た瞬間、狙い撃ちにされてもおかしくはないと考えるだろうからね」


坂町はそう言って、ふうんと興味なさそうに呟く。

「いずれにせよ、あれは出てこれないわけね。なら簡単だわ、前回ボッコボコにしてくれちゃって……乙女の柔肌になんてことするのかしら……」

実のところあの後の訓練でついた傷の方がひどかったのだが、冷や汗をかきながらも陸塞は黙した。


「じゃ、突入……とはいかなさそうね」

上から二人、人影が落ちてくる。

どうして死神ってこう、上から降ってくるの好きなのかしらと呟くと、彼女は目の前のヤンキーを見て首を傾げた。

「あら。あなた地面に叩きつけられて伸びてた人よね」

「……テメェ……」

ぎりっと奥歯が食いしばられて、その相貌には迫力が滲み出る……が、構えが素人臭い。


「……ねえ、陸塞。あれって弱いふりしてるってわけじゃなさそうよね……?」

「そう、だね」

実際弱いのだが、どうしても警戒心のために邪推してしまう。


「つーか!!てめぇら誰だよ!?」

「名乗りなんて古風なことね。あんた誰だと思ってこっちに来たのよ?」

「……ニギとかいうやつだ」

「あらそう?ごめんなさい。それは別の入り口なのよ。まあ、あなたをむざむざ行かせたところで——」


ちゃきん、と金属音がかすかに立たせながら、構え直す。

「もう、あいつは中に入ってしまって神気だって追えないわ。だからちょっと、お相手願おうかしら」

「じゃ、そっちは君に任せていいかな?僕の方は、後ろから来てる子を落ち着かせるから」


にこやかに言いながらも、その手には紙兵にするための紙が、握られている。

「水でしょ?相性、悪いんじゃないの?」

「まあ、見てなよ」

彼はそう言って、ブツブツと何やら唱え始める。それと同時に、紙兵の紙がピリピリと震えだして水をまとい始めた。


「……おいで、水鬼」

『主人様、お呼びでしょうか?』

シルエットは女性だが、その顔は深く被られた布によって、見えることはない。青色に透けた表面が、始終色を反射して水面のように光り輝く。


「お食べ」

『主人様?これは……』

「とある死神のものだよ、心配することはない。僕の所有を彼が認めて、僕がこれを君に与えた」

それを聞いて、彼女はつるりとそれを布の奥深くに入れ飲み込んだ。満足げな息が、布の奥からこぼれ落ちて、それから正面に向き直った。


「気づいていたの」

「気づいていたさ。申し訳ないね、ニギ君とは違って、僕は舌戦から始めるタイプなのだけど……君はどうやら、そういうわけじゃなさそうだね」

「どうでもいい。ハニーのためなら」

恋人(ハニー)?すまないね。ニギ君ならわかったんだろうが、僕にそれだけではわかるとは思えない」

その袖が、ゆらりと掲げられる。


「いずれでも構わない。あの男、きっと御使がいなかったら、私を鎌で縫い止めていた。むしろ君達で、好都合」

「力が拮抗するから、かな?」

「そういうこと。マガヨが弱れば、こちらもハニーをさらって、逃げ出せる」

「……詳しく聞かせてくれないかなぁ?」

「いただけないことだ。なぜなら、私は君たちを『殺せ』と命じられた。そうしなければ——きっとハニーが殺されてしまう」


陸塞はちらりと水鬼に視線を送る。

「交渉は決裂したね?じゃ、行こうか」

『はい、主人様』


********





「何もないな。恐ろしいほどに静かで、聞こえない」

「水だけ取らね?俺、ちょっと喉乾いて来た」


蒸す空気の中どれだけ持つかは高が知れている。今のうちに飲んでおくのが得策だ。

「飲み過ぎるなよ」

「心得てるよそんくらい」

お互いが飲んでいるうちに、警戒をし合った。その時だった。


「しっ……」

神気が充満している中でも、さらに密度が濃い。神脈を一度ならず幾度かぶっ壊したおかげで、神脈の強化ができているのだ。

それをもって、右目に重点的に神気を注ぎ込む。こうすることで、感覚的に『見えていた』神気を、実際に可視化することができる。

霧の発生源のような場所が、一箇所ある。


「……いた」


高田がこくんと頷いて、転身する。俺も同時に死神に転身すると、方向と戦術を支持する。基本、高田はヒットアンドアウェイで行ってもらい、高田を追おうとした相手に打ち込むのだ。


俺はそこに向かってまっすぐに切り裂くように突っ込んでいく。俺の目に、人影が見えた。

真っ赤な人影が、大鎌を持って佇んでいる。

いや、赤いのはそれじゃない。


血だ。べっとりと全身に血を浴びて、笑っている。


「おや?」

彼女は俺を見て、それからくふっと笑う。

両腕を広げて、一気呵成に俺は。


その腕の中に抱きすくめられていた。


「こーんにーちはー。みんな大好き玉依毘売(たまよりひめ)ことよりちゃんだよ!」

「は、ぁっ!?」

俺が体から刃を突き出すと、「あん冷たい」とにっこりしながら帰って来た。血があちこちにくっついて、剥がれない。

「はい、お兄さんはどうしてここに?」

「……ちょっと大事なものを取り返しに来たんですよ」

「ふーん?まあそっか、そうだよねえ。私はほら、あれだよ。暇してるんだよー」


うぇーい、と言いながら、その体はくるりと一回転ターンして、それからニカッと笑う。

「それでね?暇してるからぁ、その潰しにさ。マガヨちゃんにご協力してるってワ・ケ。どう?わかったー?」

「玉依毘売、ですか。ちなみに、元ご主人のために人に思い入れとかしては?」

「くれないね」

「残念です」


この神気の量なら、高田でギリギリというところだろうか?なんにせよ、時が勿体無い。

どこにいるんだよ、あいつは。


そこへ、どるるがふわりと入って来て、「る!」と叫んだ。

「……そうか、ありがとうどるる!」


俺はすぐさま沈み込むように階をまたごうとした。しかしながら、それに顔色を変えた玉依毘売こと、ヨリ。

「やだ、つまんないじゃん!?なんで帰るの!!」

「あんたの相手は……俺だってことだよ!!」

キンッ、と軽い金属同士がぶつかり合う。俺の背後にいたから、うまく間合いの内側に滑り込めたみたいだ。

「死ぬなよ!」

「とう、ぜんっ!」


高田に最後の指示だけ送って、俺は一気呵成に二階の奥にたどり着いた。

その後ろ姿は、だいぶ黒が増えていた。今の俺では、結構きつい気がする。けれど、やらねばならない。


その手には、鉄の輪がはまったままの死神さんが掴まれていた。

「……目覚めなよ。君のお待ちかねの人が来てくれたよ」

頰をしたたかに打つと、彼は口をもぞもぞと動かして、ゆっくり目を開けた。

ちょっと本丸は早すぎかなとか考えたけども、色々これからぐわーっと行くので勢いが大事だと思った。

このまま続行。

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