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死神は突入しますか?

今更ながらエロマンガ先生見てるよ面白いよおおおおおん。

でもパンツ見せてくれないかなハァハァ…のくだりを親に見られて爆死

今日は天気がいい。持つものは持って、飯も食った。出すもんも出した。

調子は悪くない。昨日の影響は一切ないし、むしろ調子がいい。


あれから全身の神脈を、源であるところ以外は全てシッペでひっぱたかれてぶっ壊された。時間内に治らねば、それ以外の場所も追加される鬼畜ぶりである。

あいつ人間じゃねえよ。

もともとそうではないけども。


「坂町と陸塞は、これを持って行ってください」

「ペットボトルと、……携帯食?」

「少し硬めのヌガーです。アーモンドプラリネを砕いて入れて、それからシリアルも少し入れて腹持ちをよくしてあるので」

「美味しそうだね。ありがとう」

「料理だけは美味しいのよね」

非常に複雑な顔をして言うんじゃねえよ。エンゲル係数やばいんだよ今月。

特にイザナミ様、お酒は俺買えない子です。料理酒で我慢してください。


「俺たちは?」

「一応転身する前に持っておけばいいと思いまして。彼らは、仕込むにも時間がいりますから」

その中身を皮袋へと入れ替えて、ラップの方が音が出にくいとか騒いでいる。ペットボトルの中身も、体につけやすいように革の水筒だ。


「なるほどな。俺たちは荷物ごと転身しちゃえば、それで済むもんな」

「それに、隠形を使える彼らと違って、そんな暇さえあるかどうかもわかりませんから」


基本的に戦いは避けて通ろうと思う。

まず、相手が一番外側に張っている結界を崩す。これをしないと、神気の塊である俺たちは入れない……ということはなく、普通に人間になれば問題ない。

が、懸念が多く問題が起きた時に後々面倒なので、崩さねばならないところではある。この解除は、先に行く陸塞に任せた。


建物を不用意に透過するのも避けたいところだ。階をすり抜ける間に見つかって、降りてきた途端敵にマトにされるというようなことになりかねないから。

これは高田も前回の進入時に気づいたようで、1階だけやったようだ。


しかし、今はすでに建物全体がすり抜けられないようになっている可能性が高い。

「できるよ」

陸塞に聞いたところ、そのこと自体は不可能ではないが、やる意味が感じられないと思っていたらしい。

「破り方は一応あるけれど、術者には必ず感づかれる」


壁をすり抜けて侵入するやり方が通用しないということが、ものすごくいやらしい。だが、元の建物の構造から言って、窓がかなりの数に登る。

そうなってくると、今度は相手との読み合いの方が肝心だ。

前回のように、地下にいるかそれとも……いや、こっちは考えるのもあれだな。相手が感知がわりに結界を張っているとすれば、前回のような醜態は晒さないはずだ。

連絡と同時にその場から死神さんを運び出すことくらい余裕な気がする。


で、考えることとしたら。


「もういっそのこと、建物ごと」

「何を言い出してんのかな!?」

「作戦も何も、建物なんてぶっ壊してしまえばいいんですよ。ね、簡単でしょ?」

「逆に感嘆したよ!!」

上手いこと言いやがって。


「作戦を綿密に立てている者が嫌うのは、相手がうまく踊らずに舞台装置ごとぶっ壊すことだと思います。俺がそうですから」

高田、そこでなるほどとか言って頷くな。自分で言うのはいいけどあいつと似てると言われると、釈然としない気分になるから。


「で?具体的にはどうするんだよ」

「ええとですね。言いにくいのですが、ソノちゃんさん——園原さんにご協力いただきたいと思います」

わーパチパチと心の中で付け加えると、坂町がギョッとした。


「あんた、園原さんにいつそんなこと頼んだの!?っていうか知り合いだったの!?」

「かぼちゃかぶってるとこしか見てないと思います」

「かぼちゃ!?」

「なので結局、俺たちは外から入ろうとする……で、神気があっちこっちでごちゃ混ぜになったところを狙って、ソノちゃんさんがぶっこむ」

作戦と言えないほどのものだが、ひどすぎるわけでもないからこれでよし。


問題は、御使に誰か人間が巻き込まれているってことなんだが。

「マガヨ、あれの御使が誰か、知っていますか?格好とか、性別だけでも分かれば」

「アンズって言ってたんだろ。うちのガッコには少なくともいねーし、類似する名前ってったら結構いそうだぞ。俺の知る限りだと五人はいる」

よく覚えているなと感心しつつ、俺はざらりと藁半紙を広げて、そこに書き込んでいく。


「……杏葉、か?」

いや、感知もしようと思っていなかったが、これはあり得るかもしれない。

俺の血筋的にそういう素養が濃い場合がありそうだ。

「少し警戒しておいてください」

「ええ!?お前の妹が!?あ、でもそっか。お前が見えるんだもん、感じてもおかしくねえよな」

「…………そうですねえ」

俺の顔が自然と歪むのをなんとか直そうとして失敗したようで、陸塞の笑顔が俺を見てひきつる。


「それじゃ、行きましょ」

「そうだね」


俺はイザナミ様に頭を下げた。

「ご指導、感謝いたします。ありがとうございました!」

「ほほほ、婆あの要らぬお節介だ、気にするでない。それより、弥太郎を頼む」

「はい!」

「ぬしも、怪我に気をつけるのだぞ、ニギ」


ぎゅっと抱きしめられてから、彼女はふわりと笑う。入れ違いに、カグさんが進み出て、俺が頭を下げると、あげるように指示して、それから俺に手を差し出したので、おずおずと握る。

「……」

握られた手を上下にブンブン振られて、それから力こぶを作るとペチペチ叩く。そして、サムズアップ。

どうでもいいけどそれ好きだな。


上空約30mの場所。おおよそ十階建ての高さで、俺たちはその廃病院を見下ろしていた。

その場所から一人、誰かが飛び出してくる。

「お待ちくだされ、アンズ様!?」

「もう待ちきれねぇんだよ!!すっこんでろジジイ!!」


美少女がブチ切れて怒鳴り散らしながら、こっちに向かって飛んでくる。そして、俺たちの目の前に下からすいっと上がってきて、鞭をパンッと張った。

「御機嫌よう、お兄様。そちらはオトモダチ?」

「ええ、一人を除いて全員親しい人ですよ?」

「何を……勝手に、友人など作ってらっしゃるの?お兄様は、孤独でくらぁいジメジメしたところに放り込まれていれば、それで十分でしょう?」

俺は人差し指をくいくいと動かした。


「全員ここから離れててください。あとは、俺とこいつでケリをつけますので」

「あらあ?お兄様、私に勝てると思ってるんですか?」

「ええそうですね。そんな痴女のような格好で俺に勝てるなんて思っているバカに勝つなど、造作もないことですから」


その笑顔からじわじわと愛想が抜けていく。

「今、私に勝てるとおっしゃいましたこと?」

「人聞きの悪い。あなただとは言ってませんよ、あなたみたいなバカと言っただけです」

「おんなじよ!!」


その鞭がうねり、そして俺に向かってくる。俺は鎌をとっさに出して、それに巻きつかせる。

「引っかかった」

えへ、という声が聞こえてきそうな顔で、彼女が手元のスイッチを入れる。途端、白いスパークが弾け飛んだ。


——電気か。


俺はあくまで冷静に、自由落下に任せて、落ちていく。そして、それを追いかけてくるのを捉えた瞬間、俺に続いて落ちてきたもう片方の鎌を操り、その体に巻きつける。

「何っ!?」

「ハァッ!!」

力の弱い御使程度なら、その脆さが致命的だ。


俺はそのまま地面に叩きつけて、高田に合図をした。瞬間、ナイフがアンズの周囲へと落ちて、翡翠色の結界が出現した。

「……ぁぐ、…あ?な、何よこれ!?」

「俺はしばらく動けねーから、あとよろしく」

「ええ。にしても、うまくいくものですね」神気を吸い取り、さらに強固になっていく結界。攻撃をすればするほど、その結界が強くなっていく。

破るためには、一度人に戻るか、あるいはそれ以上の神気で外から叩きこわすか、高田が離れるか、集中を切るか。


「いずれにせよ、しばらくは問題ないと思います」

「そうだな」

二人で確認し合うと、そのまま病院内部へと足を進めようとする。


「……そう簡単に行かせるわけが、ないであろう!」

そこにふわりと一人の壮年の男が降り立つ。

きっちりとひっつめた総髪の髷に、薄墨色の具足下を着て、細かく白地に黒の唐草紋様の入った当世具足をつけている。顔立ちは彫りが濃く、そして顎から頰にかけて髭が生えている。

「俺はニギです」

「そうか。(おれ)は、火遠理命(ホオリノミコト)山佐知毘古(ヤマサチビコ)とも呼ばれておる。今は、ただのヒエンと名乗っておる」

火が遠く、でヒエンか。


互いの名乗りを終えて向きあった瞬間、膨れ上がった神気が互いにぶつかり合い、火花が散った。

「あんたに時間を使う暇があると思ってるんですか?」

「言うな、小僧。己は好きでこうしているわけではないが、己には少しばかり譲れぬものがあってな」

「……そうですか?ではその目的のためには——誰かの大事なものを奪っていいと思ってるんですか?」

ぴきりと俺の鉄仮面にヒビが入る。イライラが高まってきて、おさまらない。

唇の端が吊り上がり、濁った微笑みが浮かぶ。


「ふざけるなよ、下種が」

「は、小僧こそ人の身の分際で、己達の領分を侵した思い上がりであろう?己は、己は神に戻りたい……!このような偽物ごときに、惑わされるわけには行かぬのだッ!!」


やっぱり。

やっぱりそれなのかよ、お前達は。


神であることに固執して、受け入れたものはごく少数。神に戻りたがる理由はなんだ。

そこまでしてその場所にいたいのか?

死神さんが言っていたことがわかるような気がする。


確かにこんな奴らの集まりじゃ、胸糞悪ィにもほどがある。


迫る刃。俺はそれを、柄でこするようにそらして、懐に潜り込む。鎌という特性上そのリーチが短いと思われそうだが、こういう使い方ができれば——。


「グフッ……」

腕から刃を出すだけで、かなりのダメージを与えられる。

「な、にを、した……」

呆然とした顔。しかし、多分これだけでは即刻復活するだろう。俺は一旦距離を取ろうとそこから後退しようとした、その瞬間だった。


上から何かを感じて、思わず目を瞑る。瞬間、何もかもが崩れ落ちたようなそんな音が響き渡った。

「……人間に被害はないと思われますが、粉塵で軽く傷はできるかもしれません」

「いえ、俺も頭が冷えて冷静になれましたので」

背後のかぼちゃにそう言えば、彼女は頷いて箒にちょこんと座る。そのまま、魔女のごとく飛んでいく。


「……建物、ど真ん中に、大穴空いてるぞ」

「ありがとうございます。高田は、もしやばくなったら即刻逃げてください」

「おう、問題ねーよ。……お前の妹、もう転身もできなくなって気ィ失ってんぞ」

「なら、もう結界は解いておいて構いませんよ。多分一時間は目を覚ましませんから」

その瞬間、大穴から誰かが飛び出て来た。


「小僧ォオオオオ!!ぶっ殺してやる!!」

「……チッ、頑丈なジジイですね」

俺が構えなおした瞬間、そこに小柄な者が飛び込んで来た。


「……猿田彦ッ!!貴様も奴らに肩入れをするのか!?神の名を末席といえど汚されて恥ずかしくはないのか!?」

「悪いナ。俺お前の言ってること……わかんねーヤ」

そのいやらしい笑いを浮かべた顔をさらにニタニタさせて、耳元に右手を当てて、視線をヒエンに飛ばす。

聞き返すポーズ、それもイラっとする顔つきで、ルタは止めをさした。


「日本語でも一回ヨロシク」

「きっさまあああああ!!」

怒り狂い始めたそれらをよそに、俺たちは上の階へと上がっていった。


「……あれ俺やられたらめっちゃムカつく」

「ほんと、死神って人を煽るのうまいですよね」

今は

親も




いっしょに見てる

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