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死神はドン引きますか?

11件からなかなかブクマは増えないが、読んでる人はもうちょいいるっぽいね。

逃げた人は多分あれ。あれだよあれ。

……主人公の扱いの雑さに逃げたんだよ。

読んでくれてるみんなありがとう。

「…………あ?」


こじ開けたまぶたの隙間から、強烈な光が差し込んでくる。

全く、何も思い出せない。

まるで一瞬気を失って、目を覚ましたようだ。


「……ニギ!目ぇ覚めたの!?」

「耳元で、騒がないで、ください」

喉がひりつくように痛い。奇妙な酩酊感に包まれたまま、俺は体を起こそうとするが無理やり寝かされる。

「よかった……俺超心配したんだからな!?寝てろよ!!」

「今日は、何月……何日です?」

「……もう、あれから三日経ってる。カグさんがついててくれて、仁義が大変で、こう、うわーってなって……うぅ、俺、」


俺は高田のさせたいようにさせておくと、イザナミ様に視線を向けた。

「それで、俺はあれからどうなったんですか?」

「ニギ……お前、何も覚えておらなんだか?」

「はい?」

とても真剣な顔をして、深刻そうに顔を歪める。俺は血の気が引いた。


まさか理性のないままにあちこち怪我をさせたとか……そういう話じゃないだろうな?

怖い。


「では、我をばあばと呼んだことも忘れたか……?」

「………………はい?」

「あのいとけなき声で、『ばあば、あそぼ?』と言ってくれたのに……もう一度だけでいいのだ、ばあばと!ばあばと呼んでおくれ!!」

「何言ってんだあんた」


彼女はショックを受けた顔をすると、そのまま床に座り込んでのの字を書き始めた。

こう言うところ死神さんとそっくりだよ本当に。


「で、俺は一体どうなったんですか?」

「ああ、それなんだけどな。俺から見たものを話すよ」


高田が鼻をすんすんとすすりながら、色々と教えてくれた。

まず、彼女はかなり離れた場所から見ていたらしい。そして、俺が貫き殺された瞬間、そこから光が帯のように幾つも伸びて、イザナミを包み込み、繭のようになったようだ。そこからは透けて見えるも全く干渉することができなかったと言う。


「で、なんか……その、ちっちゃいニギが見えた」

「……え?」

「子供のニギ。全然強そうには見えなかったし、えっとー……イザナミさんにめっちゃ甘えてた」

「ああ、ええ、それでさっきの言動ですか」

「うん」


「ばあば……うぅ……」

美人が拗ねているという面白い光景が繰り広げられる中で、俺は色々と考察を重ねる。

「あの、イザナミ様。俺の能力というか、何かわかりましたか?」

「む?……まあよかろう。鍵だけは教えておこう」


彼女が耳元に唇を寄せて、囁く。

「ぬしを泣かさぬように、遊び疲れて眠るまで遊んでやることだ」


俺の目が点になった。

泣かさない?そしたらどうなるんだ?

「まず我と遊んだ時はひたすら上機嫌じゃったから何も起きなんだ。我も……色々と満足したのう」

その言い方で語弊が生まれそうだからやめてくれ。


ふと、体がふらつくのを高田が支えてくれて、目の前に突き出された何かにびっくりして正面を見ると、カグが俺におかゆを差し出していた。


「……」

「ありがとうございます」

こくこくと頷いて、彼はレンゲを差し出した。ありがたくいただいて、俺はそれを一口食べる。

ホタテの出汁がとられているが、塩辛い訳ではなくむしろ薄味だ。生姜の汁が入っているせいか、汗がじんわりと出てくる。

「美味しいですね」

「ふふん、そうであろ?この店の主人は少々難ありだが、料理はうまいのだ」

「難あり?」

一度椀を置いて、白湯を飲もうと首をかしげる。


「ああ。……玉藻前の心の臓だ」

俺がギョッとして変な飲み込み方をしてむせていると、彼女はへにゃっとその眉尻を下げた。

「やはり良いのう。養子に来ぬか?」

「俺の母親は世界で一人だけですから」

「そうかえ。ああ、玉藻前とはいえ、あやつはほとんど弱いものだ、そう警戒しなさんな。人も食わぬしただただ長命なだけの気難しい狐だ」


気難しいか。


「こんな料理を作る人ですし、こだわりが強いのもうなずけますよ。お代わりってもらえます?」

「おお、良いぞ?お代わりを、……ん?ああ、どうやら気に入られたようだの」

手の上の椀にはすでに粥が注がれていた。


「それにしても、大して神気が減ったような感覚はないんですが?」

「ああ、そう難しいことではないぞ?単に我を閉じ込めただけではそう神気は消費せぬよ。そうでなく、中で現象を起こせばかなり消費はするがな」


要するに、閉じ込めた段階で力はそこには注がれなくなっている。そして、そのほかに現象を中で起こせば、それ相応の代償が支払われると。

「鬼ごっことか始めたら大変そうですね」

「我は子供と遊ぶのは好きであるからそう苦としなかったが、そうでないのにはかなりの手ごわい相手となりそうじゃの」


色々と複雑な気持ちだ。

子供になったってことは、きっと少なくとも俺が誰かに甘えたいとか、そういう子供に戻りたいなんて願望を持っているってことだろう。

残酷で、無知で、無邪気で、わがままで、世界の全てが自分の思い通りになると信じ込んでいる。


だから、外界と全てを隔絶した。

だから、無邪気に大人である彼女に甘えを見せた。

きっと戯れに死神を殺すのかもしれない。


恐ろしい。しかし、使いようによっては、思いもよらない作用を引き出してくれそうだ。

読み合いで一番力が及ばなくなるのは、不測の事態が起こった時だ。結局そうなれば状況のコントロールなんてことは考えずにすむ。


「……使い所は、はっきり考えて決めます」

「ああ、そうしておけ」


それから一日は筋力の回復に努めた。神気を流せばほとんどやりたい放題だ。

死神さんのおかげで傷の回復が上手くなった気がする。あいつ手加減が手加減じゃねーんだもん。


それからようやく、俺は普通に運動ができるように復活した。

残るは十日、そう長い時間ではない。


今、裏歌舞伎町の闘技場には、陸塞と坂町も来ていたようで、一人が手を振って笑い、もう一人が嫌なものを見たという風に舌打ちをした。


「……なんでこいつが来たのかしら」

「まあまあ、仕方ないだろう。ね?」

さすがに俺を毛嫌いしていると公言するだけある。

「少し、見せてもらって良いですか?」

「構わないよ」

坂町は、早九字の切り方と、それから刀身が二尺、すなわち六十センチほどの呪刀を借り受けていた。この短期間でそう身につくわけではないからと、複雑なことは教えられないからということらしい。


「君みたいに予備知識がある程度ないからね」

「そうですか」

陸塞と同じく、その輪郭は少しだけぼやける。すでにもうかなりの術をやった後だよな、アレだけずれているということは。

俺が少しだけ陸塞を睨むと、「彼女はわかっていて、やったんだ」と首を左右に振った。


「……僕たちの魂は、ぶっ倒れるほど術を使うたびに、この世界からはずれていくんだ。人の理から外れた術だからね。問題なのは、実際その術が、妖が見えるおおよその人に使えてしまうということ」

「……だから、身内に限定してたんですね」

「ああ。初めは妖を感知するだけでも、術を使っていればいずれ死神すら見れるようになる」

「俺はあんたの葬式に出るつもりはないです。これで死なれるとかしたら、死体叩いてあんたを生き返らせてからぶっ飛ばしてやりますよ」

「ああ、まあそうだね。僕が死ぬときは、坂町さんを道連れにするから、君が来なくても構わないよ」


てめえこのやろう。

ただ、まあ、こいつに他人を死なせるとかはできないとわかっているから、嫌味を続ける気持ちがしゅるしゅるしぼんで行く。

「だから、頑張ってくれよ?」

「あんたらが死なないように、ですか?冗談きついですねえ。寿命になるまでニヤついていきられるようにしてあげますよ……」


そんなことを言いつつ二人で睨み合ってニヤリとしていると、坂町がこちらを見てヤバいものを見たように顔を引きつらせた。


「何その悪いこと考えてそうな顔」

「悪いこと考えてないよ。ボクタチイイコ」

「考えてるわよ」

「やだな坂町さん。僕が今までに嘘をついたことがあったかい?」

「あんたのは!言わないって!だけでしょうが!!」

「あはは、まあそうとも言うね!」

彼女は随分と陸塞と打ち解けたようだ。俺はそっとその場を離れてくると、肩をポンと叩かれて、俺は振り返る。


「……」

「カグさん」

無言でサムズアップをされて、困惑する。これは今からの訓練がきついということなのか?そんな不安要素あんの今からの訓練。

肩で風を切りながら、彼は陸塞と坂町のところへと歩いていって、その手甲に炎を纏わせ始める。


イザナミ様も現れて、俺を正眼に見据えて、笑った。いつもの優美な笑みは鳴りを潜めて、今は肉食獣のような微笑みだ。

「我々も戦うとするかの」

「は、はい」

俺は鎌を出現させようとして、ストップをかけられる。

「なんですか?」

「鎌は手に出さねばならんという法則もなく、そしてその個数に制限があるわけもなかろう。操りきれぬから、個数を制限しておるだけだ」


その体の周囲に十ほどの鎌が出現する。その手が振られると同時に、俺の方へとそれが飛んできた。そして、刺さる直前で消える。

「……避けなんだか。なぜだ?」

「死神さんの攻撃と違って、当てるという気持ちが見えなかったので」

「そうか?それでは、鎌を複数出してみろ」


俺は一つ出してから、もう一度集中して出した。その瞬間、もともと持っていたものが消える。

「……こっちの鎌から集中を切らした覚えはないですよ?」

「出すときは一気に出してみればうまくいきやすいぞ。やって見せよ」

「一気に?」

「それぞれを一つとして思うから、面倒になるのだ。一式として、全てで一つ。使う時は、一つではなく一部を操る。そうだの……例えば、これをこうして、ほら」


その脇腹から刃がにゅっと出て来た。俺は思わず駆け寄り、その出所を確認して、鎌を弾いてみる。

「懐に潜り込んで来た相手を一撃、なんてことも可能だの」

「……おおう」

近接武器を持つ高田が、ビクッと体をすくませながらそう呟く。


「そちらのは、結界も張れるのであろ?結界を使うんじゃったら、内側に制限をかけることもできるはずだがの」

「内側に制限を?」

「要するに、内側にいる者を拘束するとか、ある程度の状態を課すってことですね。例えば、結界の中に入ったものは笑い転げるとか」

「地味に嫌だの、それは」

「うーん、出入りは自由にしないと無理っぽいな。容量が足りねー」


彼女はうんうん言いながら、あれやこれやとやり始める。


「さて、では我々もやるとしようかの。まずは、いっぱい武器を出すだけだ。簡単であろう?」

その微笑み、さすが死神さんを崖から容赦なく突き落としただけはあると思った。

ぐう畜なイザナミ様。

神話の超解釈たーのしー!

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