話を聞きましょう
『グレンさん、これからどうするんですか?早く帰らないと皆さんが心配しますよね?』
「そうだな…仮にも隊長だから捜索されているだろう。」
『地図も見つかりましたし、近くまでなら送りますよ?』
雪の力で轌でも造れば問題ないし、あの荷車を利用したっていい。
「ユキはどうするんだ?」
『え?ど、どうするって…その…えっと?』
「まさかここに一人で暮らすのか?」
『そのつもりですが…。』
だって私には親もいないし、自然から生まれた純血種の雪女だ。グレンさんとは違って戸籍もない。頼れる人もいない。なら、ここで暮らしていくしかない。
『いつかは鬼の国にも行ってみたいですけど、ここから出ていく気はありません。それに、余所者なんて許してくれないでしょう?』
そう言うとグレンさんは何故かムッとした表情を浮かべた。
「余所者などと、自分を卑下するのはよせ。それに、我が鬼の国は幼子に対して度量は狭くないぞ。俺の命の恩人をこの山に放っておけるか。」
な、何だかとんでもない展開になりそうです。
「ユキ、俺と共に鬼の国へ来い。なに、遠慮など必要ない。お前一人養うくらい平気だ。」
『い、いえ!そんなとんでもないですよ!?私はそんなつもりでグレンさんを助けた訳じゃないです。これは…私の自己満足の為ですから…。』
言えないけど、力の実験になってもらってたし、グレンさんが思うような純粋な気持ちで助けた訳じゃない。だから、ありがたいけど心苦しかった。
うつむいていた顔に暖かな手が触れる。
(わ…爪が鋭い)
鬼らしく鋭い爪は鋭利で、簡単に引き裂かれそう。だけど、私の頬に触れているその手は優しかった。
顔を上げると、決行近くにグレンさんの男らしい美貌の顔があって驚いた。
「…短い時間だったが、ユキといるととても楽しかった。それに離れると思うとどうしようもなく不安になる。」
『なっ/ / /』
子供相手に口説いてどうするんだあんたはっ!!?
「保護なんてそんな偽善めいた事で言っているんじゃない。俺の側にいてほしい。頼む…。」
その金色の目をウルウルさせないでっ!なんだか私が悪いみたいじゃない。
美青年に両手を大きな手に優しく包まれ、ウルウル攻撃で懇願される幼女ってどう思われるのかな?それにグレンさん、あなた大国の隊長でしょ?威厳も何もないわ……
どうしよう?