転生は欲張りに
妖怪の世界に転生する事になった私は早速転生する種族に悩んでいた。
『どうせなら綺麗で美しい方が良いと思うのよね。でも、一族とか柵は嫌だなぁ。政略結婚とかさせられそうだもの。』
「そうですね、鬼や龍、狐、あらゆる種族は一族とか柵は強いです。まあ、住めば都だと思いますが。」
『でも、戦えない奴を愛してくれるほど情のある種族じゃないでしょう?』
「まあ…あそこは実力社会ですからね。でも、男はか弱い女性に惹かれるようですよ?自分より強い女性に飽きてきているようですから。」
べ、別に男にモテたいとか思ってる訳じゃない。ただ、この転生に攻撃を持ち込むつもりがないから転生後の生活に不安があるだけなのだ。出来損ないとして迫害されるのも真っ平御免なのだ。
『雪山に行って死んだなら雪女とかにしようかな。雪女は綺麗だし、男を凍らせるだけの妖怪だし。まあ、雪女の事を全部知ってる訳じゃないけどさ。』
「雪女ですね。いいでしょう。では細かい設定も早く決めましょう。」
『そうね、髪は薄い水色がいいかな。雪の結晶みたいに銀に輝くの。長さは足首までのサラサラストレートにして。』
ゆるふわも捨てがたいけど綺麗なストレートロングも憧れだったから。こうなれば欲張ってやるわ。
『目の色は…地球の青色にして。私が地球を忘れないように。それと、肌は白くしてね。身長は…170cmにしてほしいわ。着物はね、無地の白で振り袖タイプにしようかな?雪の結晶の袿も欲しいわ。』
「はいはい。家族はいりますか?」
『…雪女って家族できるの?』
「まあ、山に住む妖怪とか氷を司る妖怪から誕生させればね。」
『家族はいいや。私には地球の両親が親だし。』
「では自然から生まれる純血種の雪女になります。因みに、異種族と交わると混血の妖怪が生まれます。もし、貴女が純血に拘るなら純血の雪男をお勧めしますよ。」
『雪男はちょっと…』
それに結婚とか考えられないし、先の事だ。
「では、能力の設定に進めましょう。」
『さっきも言ったように争い事は嫌なの。だから治癒能力と結界能力、妖力だけを最大値にしてほしいの。』
「本当に戦える手段を放棄するのですね。そうなると、貴女は人間並みの攻撃力しか持てませんよ。」
『なら、雪女としての能力だけ程々にお願いします。雪とか氷を操る事に不足のない程度に。』
「わかりました。」
どうやらこれで手続きは終わったようだ。これから転生に入るのだろう。少し緊張してきた。
「朝陽さん。貴女の真名を【雪白】と。真名を決して明かさないことです。もし、真名を知られると傀儡にされる場合があります。例え伴侶でも信頼できる者でないと危ないです。」
『は、はい。』
でも、記憶は消されるんだから注意されても覚えてないだろうし…
「あ、記憶は消さないで差し上げます。勇気ある貴女の決断に神様からの褒美だそうです。良かったですね。」
ま、マジですか!?
「神様からもう1つ贈り物があります。真名の他に名前を付けてくださいましたよ。名を【ユキ】と。雪の姫という意味を込めているそうです。」
『雪の姫でユキ。いい名前ですね。神様にお礼を言っていたと伝えてください。』
姫なんて柄じゃないけど、神様が名付けてくれたならありがたく名乗らせてもらう。
「それでは、ユキ。新たな生を楽しんできて下さい。今度こそ幸せに。」
天使に見送られて私は新たな世界に転生を果たした。




