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東方労働記 〜 Beautiful Labor Days  作者: すのう
労働記 【妖】
20/28

第五話 後編

毎度、久し振りの投稿です…

話すことは…特にありません


では、本文をどうぞ

「いきなりグーパンは酷いっすよ…」


「貴方が(まぎ)らわしいポージングしてるからでしょ。 勤務中にサボるとどうなるかは一番初めに教えたはずよ。 あと、文に関わると(ろく)なことにならないから今後は気をつけなさい」


「………」


「何よ…その『あんたと関わるのが一番碌でもないわ』的な目は?」


「いえいえいえ! してません、してません!」


読心術か⁉︎


「はぁ…まぁ、いいわ…。 サボった分の代償は今きっちり払ってもらうから」


別に仕事を放棄しようと思ってサボっていたわけではないのだが…これ以上は何も反論しないことにした。


「今から、貴方のスキルアップのために、私が直接指導するから。 しっかりと励むように」


「はい、お願いします」


今、この調理場でメイド長直々の料理指導が行われようとしている。


先日大量に買い込んだ食料を使い、様々な料理の作り方を教えて下さるそうだ。


目の前のテーブルには、妖精メイド達の協力のもと、食品庫から大量に運び出された食材が鎮座している。


「じゃあ、早速始めるわよ」


咲夜は世界の時を止めてから包丁を握り、調理を開始した。


「メイド長、何で時間止めてるんですか? てか、何で止めれるんですか?」


「時間短縮。 天才だから」


咲夜は真顔で俺の問いに答えた。


「………そすか…」


俺も真顔でそう答えた。


「あの…メイド長、自分は何をすれば?」


何も言わず、淡々と調理を進めていく咲夜に俺は指示を求めた。


「別に貴方は何もする必要はないでしょ?」


「えっ…? 料理の基本とかそういうのを指導してもらえるんじゃないんですか?」


「そんな面倒なことを一々始めから教えるわけないじゃない。 貴方はそこで私の作業を見ていればいいのよ」


「………」


物事の一番大事な基盤となる過程を面倒って言ったよ…この人……


「でも自分、料理の知識はド素人レベルですから…一から料理を覚えるとしたら、まずは基本から始めた方が…⁉︎」


言い終える前に咲夜が俺の方へと振り向いて手に持っていた包丁を突き立てた。


「誰がド素人ですって〜…? あそこまでしておいてよくそんなことが言えるわね? そこまでして私をバカにしたいの? 私の料理はド素人にも作れるとでも言いたいのかしらぁ〜?」


「いっ…いえ、そんなつもりは……」


咲夜はまだ以前料理のテストを受けた時のことを根に持っていたようだ。


「貴方の特技はよく見せてもらったし、それが役に立つということも、あの時よ〜く理解させてもらったわ。 だから、私は貴方のその特技をそのまま生かす方法を思いついたわけ」


「……と、いいますと?」


「貴方には私が手を離せない時、または留守の時に限り、文字通り私の代役として料理をしてもらうことにしたのよ」


咲夜は包丁を徐々に近づけながら話し続ける。


「あのゴミのような料理では、一から教え込むのも馬鹿馬鹿しいわ。 元から調理の心得を持たなくても、料理が出来るのなら、この方が効率がいいものね」


「ゴミって……」


ゴミというのは恐らく、俺が自力で作ったパスタのことを指しているのだろう。


まぁ…食物の神様に言っちゃあ悪いが…あれは確かにゴミだな……


「それに……」


咲夜は包丁を引っ込めると調理台へと向き直し小声で呟いた。


「もし…私より上手くなったりしたら……お嬢様に……」


「え? あの…すみません…よく聞き取れなかったんですけど…?」


その時、俺の言葉を遮って顔の横ギリギリを包丁が掠めるように飛んできた。


「うっさい! ほら、早く始めるわよ! 私の作ったものと同じのを作って覚える‼︎ はい、始め!」


「は…はひっ!」


顔が引きつって上手く返事をすることができなかった…



時を止めた世界で数時間後。


そして時は動き出す。



「流石に作り過ぎなのでは…?」


「後で、美鈴+妖精メイド達が美味しくいただくからいいのよ。 食べさせたらその分働かせるし」


『働かざるもの食うべからず』ではなく…『食ったら働け』の理念には賛同する他ない。


「うん、いい香り…渋味もないし、これなら問題なさそうね」


美味しいとは言ってくれないんだな…


一通りの料理を作り終え、二人はブレイクタイムに入っていた。


しかし、休憩の合間でも指導は続く。


咲夜は俺の淹れた紅茶を飲んで悪くない評価をしていた。


勿論、咲夜の淹れた後で真似して淹れた物だ。


茶菓子のクッキーも焼き終え、キッチンには甘く香ばしい香りが漂っている。


「それにしても、ここまでとはね…正直、少し見直したわ」


「ははは…なに、他愛のない取り柄ですよ」


「あまり調子に乗るんじゃないわよ。 クッキーだって少し焦がしてるし、オーブンを使った調理は上手くできないみたいね」


咲夜は、なぜか少しだけ満足げに微笑んだ。


「まぁ…機械とか、そう言った(たぐい)の真似は流石にできませんからね…あんなの横から見ててもよくわかりませんし…。 でも、ちゃんと教えてもらえればできると思いますよ」


「そんなの当たり前でしょ。 教えさえすれば、子供だってできるわよ」


そんな会話をしながら二人は休憩を終えた。


「じゃあ、今日の指導はこれで終わり。 残った材料は妖精メイド達に言って運ばせるから、貴方は汚れた器具を片付けておきなさい」


「了解です」


「私はこのまま他の業務に戻るから、何かあったらまた言いなさい」


「はい」


「サボるんじゃないわよ」


「はい…」


返事をすると、咲夜はキッチンを後にした。


その後、しばらくすると咲夜に呼ばれてきた妖精メイドや匂いに釣られた妖精メイド達ががワラワラと集まりだしてきた。


しかし、余った食材を食品庫へと返しに行ったのはそのうちの二人だけで、残りのメイド達は、テーブルに並んだ料理を(たい)らげ、何食わぬ笑顔でキッチンから出て行った。


キッチンには大量の汚れた食器が残り、俺はそれを渋々片付け始めた…


数分後。


「ふぅ〜これで終わりっと…」


食器を全て洗い終え、手を拭いてから何時ものように手袋を装着。


段々この作業にも慣れてきてしまった。


「さてと…お仕事、お仕事……」


そんな風に呟きながら、俺は清掃に戻ろうとキッチンを出ようとした。


「ん?」


しかし、テーブルの上にナスやピーマン、セロリなど、いかにも子供が嫌がりそうな野菜が勢ぞろいで残されていることに気がついた。


「これは…完全にわざと置いてったな……」


妖精メイド達が食べた料理の食器の中にも実に上手くこれらの野菜が残されていたのを思い出す。


勿体無いので、それらはちゃんと俺が処理しておいたが…好き嫌いはあまり感心しない。


「……はぁ…しゃあないか…」


俺は少し悩んでから、それらの野菜を食品庫へと返しに行くことにした。


野菜は鮮度が命。


こんな所にほかっておくわけにはいかない。


誤解のないように言っておくが、これは別に清掃の仕事をサボろうというわけでも、皿洗いに疲れて休憩がてら館を歩いて回ろうというわけでもなく、単に咲夜にこれを見られて怒られるかもしれない妖精メイド達のために返しに行くだけなのだ。


誰に説明しているのかと、自分でも呆れつつ俺は野菜を抱えた。


「えっと〜…確か食品庫は……地下にあるんだっけ…?」


道中で咲夜に遭遇しないことを願いつつ、俺はキッチンを出て食品庫へと向かった。



「で、どうなのパチェ。 可能だと思う?」


「現段階では何とも言えないわね。 これまでのデータをまとめてみても、詳細はよく分からないし…。 できればもう少し情報が欲しいわ」


紅魔館の大図書館で密かに開かれた第一回目の定例会。


埃舞い、薄暗く、空気の悪い図書館で飲む御茶は少々味気ないと感じつつも、レミリアは我慢してパチュリーの話を聞き続けた。


テラスに来て欲しいと願い出たはずなのに、返答は『嫌だ、お前が来い』……


流石『動かない大図書館』日陰の少女は伊達じゃない。


今はもう動かない、のっぽの古時計並なのかもしれない。


いつ止まってしまわないか冷や冷やさせられる。


もう少し外に出た方が良いのではないかと親友を心配しつつ、レミリアはカップの御茶を飲み干した。


「そこの小悪魔。 御茶」


「はい、ただいま」


小悪魔がティーポットでレミリアのカップに紅茶を注ぐ。


「ただの人間じゃないことは確かなのよねぇ…。 私のスペルが防がれたのは確かだし、咲夜の能力も(ことごと)く効果がないみたいだし…」


レミリアは椅子にダラ〜と行儀悪く腰掛けて溜息をついた。


「効果がないどころか空間操る能力も何度も解かれてるんでしょ? もうちょっとしっかり管理しなさいよね。 あれが起こる度に、大規模な魔法使って図書館守ってるんだから」


「そんなこと言われてもね〜…。 あっ、手袋は効果あるみたいよ。 直に触れなければ何の問題もなし」


「………レミィ。 何かあった?」


「は? 何が?」


パチュリーはレミリアの口調や態度、そして体勢が数日前に比べて砕け切っていることを不審に感じた。


「体調でも悪い?」


「パチェに体調を気遣われたくないわね…。 別に、ちょっと調子出ないだけ。 体調は普通よ」


パチュリーは明らかにやる気のなさそうな態度で話し続けるレミリアに対し、本当に話し合う気があるのだろうかとすら思った。


今のレミリアは、まるで会議を嫌う見た目相応の子供のようだった。


「……ああ」


「何?」


「いや、何でもないわ」


子供という単語がパチュリーにあることを気づかせた。


「そう言えば、もうすぐ新月か……」


「パチェ、聞いてるの?」


「ああ、うん。 ごめんねレミィ」


パチュリーは優しい笑みを浮かべてレミリアに謝った。


「……? まぁ、いいけど」


レミリアは首を(かし)げながら言った。


「兎に角、奏には私のスペルや能力だけでなく、吸血鬼としての力そのものさえ抑え込むことができるかもしれないという可能性がある。 それを上手く利用すれば、あの憎き日差しも……」


レミリアは窓から零れる光を、憎しみや恨みの念を込めて睨みつけた。


「そう言えば、前回の白玉楼での検証結果をパチェはどう思う?」


「ああ、レミィが勝手に向かわせたあれね」


「そうそう、私としては結構いい(せん)いってたと思うんだけど」


レミリアはドヤ顔でテーブルに置かれているクッキーを手に取り、口へと運んだ。


「あれは完全に無意味だったと思うわよ」


「……⁉︎ なっ…なんれ⁉︎」


パチュリーの発言に驚き、レミリアはクッキーを口に咥えたまま机に手をついて勢い良く立ち上がる。


「行儀悪いわよレミィ。 確かにあの一件で奏の力は手だけでなく全身に及んでいるということは分かったけど。 分かった理由が単なる咲夜のミスからだし、実質、西行寺幽々子に触れさせて分かったことといえば、亡霊を昇天させるくらいの強力な力ではないということくらいじゃない? 実際に目で見たくらいだと、しっかりとした確証は持てないし、わざわざ白玉楼まで出向かせて、館であんな騒ぎまで起こした割には得られたデータが少な過ぎ」


「でも、幽々子に触れさせて奏は何ともなく帰ってきたし。 これだって一つのデータと言えなくも…」


「亡霊に触れたところで直ぐに死にはしないわよ。 もしかしたら身体に何か違和感を感じるかもしれないけど、本人に直接訊いたわけでもないし、咲夜の見解だけで、ことを片付けるには無理があるわ」


「うー……」


自分が独断で下した判断があまり意味のなかったものだと指摘され、悔しさのあまりレミリアは唸った。


「そ…そんなに言うなら、今から私が直接奏に訊いてくるわよ! ちょっと待ってろぉ!」


図書館中に響く位にレミリアはそう叫ぶと、左右の翼をはためかせて、一目散に図書館の出口へと飛んで行った。


「ちょっ…⁉︎ 待ちなさい、レミィ!」


パチュリーの引き止めの声も虚しく、図書館の扉はバタンと大きな音をたてて閉められた。


「……はぁ…。 全く…子供なんだから……」


「ははは…無理もありませんよ…。 一生懸命考えた案をあそこまで露骨に否定されれば、ああもなります…」


一人で本の整理をしていた小悪魔は乾いた笑みを浮かべながら言った。


「私は本当のことを述べたまでよ」


パチュリーはすました顔でカップの紅茶を飲み干すと、空のカップを小悪魔に差し出してお茶のお代わりを要求した。


「はいは〜い。 あら…?」


「どうかした?」


「すみません…茶葉が切れちゃったみたいで…。 新しいものを持ってきますから、少し待っててください」


「……はいはい。 早く行ってきなさい」


「では、行ってきます」


小悪魔は抱えていた本テーブルに置くと、静かに図書館を後にし、食品庫へと向かった。

奏•美鈴:「次回予告コーナー!」


美鈴:「そんなことより奏さん! 私の分の料理は…⁉︎」


奏:「あー…それが…ですね……。 メイドさん達がすごい勢いで食べ続けて…止める間もなく完食されました…」


美鈴:「そっ…そんな〜……」


奏:「そんなあからさまに気を落とさないでください…言ってくださればいつでも作りますから」


美鈴:「本当ですか⁉︎」


奏:「はい! あっ、勿論メイド長には内緒にしてくださいね」


美鈴:「ええ、分かっていますとも!」


奏:「ははは…では、気を取り直して進めましょう」


美鈴:「はーい!」


奏:「次回はなんと、この作品には似つかわしくないドキドキ展開だそうです…!」


美鈴:「へぇ〜そんな回がこれに存在していたんですね」


奏:「そうですね、主な路線がコメディですから、ラブの要素なんてこれまで皆無でしたからね。 それに関しては自分もすごく驚いています」


美鈴:「……奏さんは…その…そわそわしたりしないんですか?」


奏:「…? 何でそんなことを?」


美鈴:「いや、奏さんは恋愛とかに興味がないのかな〜? という単純な疑問なんですけどね」


奏:「ああ、なるほど。 ん〜…あまりそういうことは考えたことがありませんでしたね。 でも、別に興味がないわけではありませんよ」


美鈴:「そうなんですか? でも、ドキドキ展開だというのに、あんまり乗り気ではないように見えましたけど?」


奏:「ああ、それはあれですよ……。 期待するだけ無駄って分かってますから」


美鈴:「………」


奏:「では、次回自分はどんな目にあってしまうのか? できれば穏便に済んでもらいたいなと願いつつ、次回予告を終了したいと思います」


美鈴:「奏さん…私でよければ、どんなことでも相談に乗りますから。 いつでも言ってください」


奏:「美鈴さん…ありがとうございます」


美鈴:「いえいえ、困った時はお互い様ですよ。 それでは!」


奏:「次回『心拍•発熱上昇中‼︎ ライブラリアンエージェント?』」


奏•美鈴:「次回もお楽しみにー」

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