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「天皇」号誕生秘話〜武則天(聖神皇帝)と持統天皇、二人の女帝の絆〜  作者: 如月妙美


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第七章:倭国滅亡の危機からの光明 天皇の称号誕生秘話

 持統大王が、倭国初代(世界歴代二人目)の「天皇」を名乗る

 武則天との拝謁から約一月後、伊波源城は唐の薬師の身分で、藤原京に二十数年ぶりに帰国した。幼馴染であった持統大王と伊波源城は、久しぶりの再会に思わず微笑み合った。

「源城よ、無事に帰ってきてくれて嬉しい。このように再び顔を合わせる日が来るとは思っていなかった」

「陛下、私もこうしてお目にかかれる日を待ち望んでおりました。私の現状については、先の親書に書いたとおりです。しかし、唐で見聞きしたことを思うと、今の倭国の厳しい状況が心に重くのしかかります」

 持統大王はその言葉に頷き、少し沈んだ表情で語り始めた。

「私も同じだ。倭国は唐の文化や技術を受け入れつつあるが、未だに内外の混乱が続いている。民を安定させ、倭国を一つにまとめるためには、私自身が変わらねばならないのだ」

「陛下、その決意がある限り、倭国は必ず復活し繁栄します。しかし、そのためには新たな道標が必要でしょう。私はその糸口を武則天陛下から直々に託され、密使として帰国した次第です」

 親書のすり替えの経緯と新たな提案

 伊波源城は、慎重に言葉を選びながら、親書が密書へとすり替えられた経緯と、武則天の真意を詳細に説明した。

 持統大王は、驚きつつも大きく安堵した……。

「そうであったか……。武則天陛下には、見える景色も考えも遠く及ばぬな。朕が従軍した少女の頃、武則天陛下は、すでに大唐を導く偉大な指導者であるとともに、強大な敵でもあった。倭国と朕に手を差し伸べてくれるとは、その御心の大きさよ。これもイナンナ天照の導きだろうか」

 伊波源城は慎重に親書を開き、武則天の言葉を朗読した。

「貴国の大王に申し上げます。私は天を敬い、その意志に従う者として、大唐を治めています。貴国の統治者もまた天に通じる名を持つべきではないでしょうか。『天皇』という称号をお考えいただければ、我が唐王朝と倭国の絆はさらに深まることでしょう。また、私は女帝として同じ道を歩む者として、そなたと協力したいと願っています。その他の事は、私と貴殿が信頼する者に言葉として託します。 同志友 武信明二娘照 『聖神皇帝玉璽』」

 持統大王は、源城の労を深く労うとともに、武則天からの親書に対して、深々と拝礼をして受け取った。

 神への祈りと決意

 持統大王はその夜、天照大神の拝礼殿で、一人で深く祈りを捧げ、自身の使命を問いかけた。

「天照大神、私に天の意志を示してください。この『天皇』という名を用いることが、倭国を導く正しい道であるのか」

 その時、持統大王は不思議な平穏に包まれた。その感覚を天意として受け止め、彼女は新たな称号の採用を決意した。

 王族、大臣たちとの議論

 翌朝、持統大王は、王族や藤原不比等をはじめとする重臣たちを集め、伊波源城とともに、経緯を説明するとともに、この問題について意見を求めた。

「唐の武則天陛下の親書の真意は今説明した通りだ。我が国の称号を『天皇』に改めるべきかどうか、意見を聞きたい」

「陛下、それは天の意志と解釈すべきでしょう。この新たな称号は、倭国の独立性と唐への敬意を同時に示すものであります」と不比等が奏上する。

 他の王族や重臣たちもそれに同意した。

 稀代の学者、太安万侶が奏上する。

「『天皇』という名は、ただの称号以上の意味を持ちます。天を敬い、民を導く存在であることを明示するものです。また、武則天陛下が先の高宗皇帝に奏上した称号であり、諸国の『王』よりは格上であることは明らかです。諸国の王はその称号を使いたくとも、大唐の逆鱗に触れることを恐れ使えません」

 持統天皇は満足げに頷き、天意をもって新しい時代を始めることを高らかに宣言した。

「これより、倭国の大王は『天皇』と名乗る。この名は天と地の繋がりを示し、我が国の独自性と天意を表すものである」

 古事記編纂の構想

 天皇の称号を定めた後、持統天皇は重大な決意を固めた。朝廷と天皇、そして女帝である自身の権威をより確固たるものにするため、国史の編纂に着手することを決断したのである。

「不比等、源城、そして太安万侶よ。我が国の歴史を編纂し、天皇の由来と正統性を明らかにする書物を作成せよ」

 藤原不比等が進み出る。「陛下のご意図をお聞かせください」

「倭国の権威を高めるには、我が国の歴史が中華よりも古く、神々に由来することを示さねばならぬ。遣唐使らが持ち帰った『西方皇帝アレクサンドロスと八咫烏の物語』を、我が大和朝廷の先祖の物語に織り込むのだ」

 伊波源城が慎重に口を開く。「陛下、それは巧妙なお考えですが、後世に模倣と指摘される恐れはございませんか」

 持統天皇は微笑んだ。「それゆえ、時代設定を工夫するのだ。約一千年前、中華の周王朝の頃にさかのぼらせる。仮に後代に『西方皇帝アレクサンドロスと八咫烏の物語』を模倣したのではないかと指摘を受けた場合、それより三百年ほども前の『ヤマト』こそがオリジナルだと主張できよう」

 太安万侶が深く頷く。「なるほど、深謀遠慮でございますね」

「そして、女性天皇の権威を高めるべく、最高神として『天照アマテラス大神』を創作するのだ。太陽神であり、女神であり、皇室の祖先神とする」

 不比等が奏上する。「陛下、実際の皇室の出自についてはいかが致しましょう」

 持統天皇は考え深げに答える。「実際の出自は九州の日向国、さらに遡れば大琉球国である可能性が高い。しかし、それでは権威に欠ける。『高千穂』を天孫降臨の地、高天原として、そこから東征を行う物語にするのだ」

「東征でございますか?」源城が問う。

「そうだ。神武大王の実際の進路は『北上』であったが、『東征』に変える。地図の詳細がわかる国民はいないゆえ、問題はなかろう」

 太安万侶が興味深そうに聞く。「初代を『神武』とされる理由は?」

 持統天皇の目が輝く。「『神』の文字に、中華の歴史での名君と言われた『大漢帝国』の武帝、光武帝の『武』を戴いたものだ。同時に、『聖神皇帝』武則天陛下の一字と、その本名の『武』も拝領したものとする。これにより、中華への敬意と、我が国の独自性を同時に示すことができる」

 不比等が実務的な問題を提起する。「陛下、この国史は何語で記すのでしょうか」

 持統天皇は少し苦笑いを浮かべた。「正式な国史を他国の漢字で記すなど、本来ありえないことだ。しかし、一千年前に創始されたはずの倭国には、国語がなかったのだ。やむを得ず漢字を用いるしかあるまい。後世の人々には、古代ゆえに記録手段が限られていたと理解してもらおう」

 こうして、持統天皇、藤原不比等、伊波源城、太安万侶らによる『古事記』編纂の構想が固まった。それは倭国の権威を確立し、天皇制の正統性を永続させるための壮大な事業であった。

 持統「倭国初代天皇」から武則天への返書

 その後、持統天皇は、唐に帰国する「薬師」伊波源城に、武則天への感謝の意を込めた返書を託した。

「大唐の『聖神皇帝』陛下の御心に触れ、私の心は新たな光で満たされました。源城を介してのご神意並びにご真意しかと賜りました。我が国では、天の意志を重んじ、かつて高宗陛下がお使いになられた『天皇』という称号を頂くことといたしました。この決定は、貴陛下との絆をさらに深めるものと信じております。女帝として共に歩むことを楽しみにしております。

 また、我が国の歴史と天皇の正統性を示す国史の編纂にも着手いたしました。これも陛下のご厚意に報いるための努力でございます。 『天皇』持統 御璽」

 新たな称号の未来

 こうして、持統天皇の決断により、倭国は「天皇」の称号を採用する新時代を迎えた。この出来事は、倭国の国際的な地位を向上させるだけでなく、国家としての独自性を明確にする重要な一歩となった。そして、持統天皇と武則天という二人の女帝が、歴史の中で互いに影響を与え合い、未来への礎を築いた物語として語り継がれるのである。

『古事記』の編纂もまた、日本の歴史と文化に永続的な影響を与える偉大な事業として始動した。それは単なる歴史書ではなく、日本という国家のアイデンティティを形成する根幹となる書物となるのであった。


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